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【徹底解説】映画『バトルフィールド・アース』はなぜ「映画史に残る大失敗作」なのか?あらすじから狂気の演出、ラジー賞の伝説まで総まとめ

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【徹底解説】映画『バトルフィールド・アース』はなぜ「映画史に残る大失敗作」なのか?あらすじから狂気の演出、ラジー賞の伝説まで総まとめ

概要:ハリウッドの歴史に深く刻まれた、愛すべき「史上最低のSF超大作」

映画『バトルフィールド・アース』(原題:Battlefield Earth)は、2000年に公開されたアメリカのSFアクション映画です。
主演および共同プロデュースを務めたのは、『サタデー・ナイト・フィーバー』や『パルプ・フィクション』などの大ヒット作で知られるハリウッドのトップスター、ジョン・トラボルタです。
原作は、新興宗教サイエントロジーの創設者として知られるL・ロン・ハバードが1982年に発表した同名の長編SF小説であり、本作はトラボルタが長年温め続けてきた「夢の企画」でした。
監督を務めたのは、『スター・ウォーズ』の美術監督としてアカデミー賞を受賞した経験を持つロジャー・クリスチャンです。
トラボルタに加え、バリー・ペッパーやフォレスト・ウィテカーといった実力派キャストが集結し、約7,300万ドル(一説にはそれ以上)という莫大な製作費が投じられた鳴り物入りの超大作でした。
しかし、いざ公開されると、観客や批評家を待ち受けていたのは「想像を絶する悪夢」でした。
画面が常に傾いている不自然なカメラワーク、ツッコミどころしかない破綻したストーリー、そしてトラボルタによる度を越したオーバーアクトなどがあらゆるメディアから猛烈なバッシングを浴びることになります。
興行収入は製作費の半分にも満たない大惨敗を喫し、映画を製作した独立系スタジオ「フランチャイズ・ピクチャーズ」は後に倒産へと追い込まれました。
さらに、第21回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)においては、「最低作品賞」「最低主演男優賞」など計7部門を総なめにするという快挙(?)を成し遂げます。
それだけにとどまらず、2005年には「歴代最低ドラマ部門賞」、2010年にはなんと「2000年代最低作品賞(この10年で最もひどい映画)」という特別賞まで受賞し、名実ともに「ラジー賞の殿堂入り」を果たしました。
それでも現在では、「あまりにもひどすぎて逆に最後まで笑って見られる」「ツッコミの練習教材として最高」といった奇妙な再評価を受けており、Z級映画を愛するファンたちからはカルト的な人気を博し続けている伝説の作品です。
本記事では、そんなハリウッドの闇と情熱が生み出した怪作『バトルフィールド・アース』のあらすじや、常軌を逸した見どころ、そして映画史に残るラジー賞伝説の裏側までを徹底的に深掘りして解説していきます。

予告編

詳細(徹底解説):西暦3000年の地球を舞台にした、人類と巨人のトンデモ決戦

あらすじと世界観:サイクロ星人の支配と、原始に返った人類

物語の舞台は、西暦3000年の荒廃した地球です。
今から1000年前の西暦2000年、「サイクロ星人」と呼ばれる身長約3メートルの巨大な異星人が突如として地球に襲来しました。
人類が誇る軍隊はわずか9分間で壊滅させられ、地球はサイクロ星人の植民地となってしまいました。
生き残ったわずかな人類は、文字や言葉、文明のすべてを失い、原始人のような悲惨な生活を強いられるか、サイクロ星人の奴隷として過酷な労働に従事させられていました。
一方、サイクロ星人たちは地球の豊富な鉱物資源、特に「金(ゴールド)」を採掘するためだけに地球に駐留しています。
地球の保安主任であるサイクロ星人のテル(ジョン・トラボルタ)は、上司に嫌われているため、自分の星に帰ることもできず、辺境の星である地球への赴任をひどく憎んでいました。
テルは、放射能に汚染された危険なウラン鉱山に豊富な金脈があることを発見しますが、サイクロ星人の呼吸する特殊なガスは放射能に触れると大爆発を起こすため、自分たちで採掘することができません。
そこでテルは、放射能に耐性のある「人間の動物(マン・アニマル)」を捕獲し、彼らに金を掘らせて自分の私腹を肥やそうという狡猾な計画を企てます。
テルの部下に捕らえられた若き人間の戦士、ジョニー・グッドボーイ・タイラー(バリー・ペッパー)は、テルの実験台として選ばれます。
テルはジョニーを効率の良い労働力にするため、なんとサイクロ星の学習マシンを使って彼に「言語」と「高度な知識」を強制的に叩き込んでしまいます。
しかし、この浅はかな行動がサイクロ星人にとって最大の命取りとなります。
人類の歴史やテクノロジー、さらにはサイクロ星人の弱点までを学習してしまったジョニーは、他の人間たちをまとめ上げ、テルに対する壮大な反乱を企て始めます。
ジョニーたちは、1000年間も放置されていた軍事基地から、なぜか新品同様に動く戦闘機(ハリアー)や武器を発見し、わずか数日間の訓練でそれらを完璧に操縦できるようになります。
そしてついに、原始人のような服装のまま最新鋭の戦闘機に乗り込んだ人類の反乱軍と、圧倒的な科学力を持つはずのサイクロ星人たちとの、ツッコミどころ満載の最終決戦が幕を開けるのでした。

シーズン/章ごとの展開:後編が作られることは永遠になかった

L・ロン・ハバードの原作小説は、1000ページを超える非常に長大なSF叙事詩です。
そのため、トラボルタ率いる製作陣は、本作を「前編・後編」の2部作からなる壮大なフランチャイズ映画として企画していました。
映画『バトルフィールド・アース』の物語は、原作小説のちょうど半分までの展開(サイクロ星人への反乱が成功するまで)を描いています。
映画のラストシーンでは、続編への期待を煽るような意味深なカットが挿入されており、製作陣は本作が大ヒットし、すぐに続編の撮影に取り掛かれると本気で信じていました。
しかし、現実の興行成績は先述の通り悲惨なものであり、批評家からの容赦ない大合唱によって続編の製作は即座に白紙撤回されました。
後に、製作会社であるフランチャイズ・ピクチャーズが投資家を騙すために製作費を水増し報告していたという詐欺事件が発覚し、会社自体が倒産するという映画以上のドラマチックな結末を迎えてしまいます。
これにより、後半のストーリーが映像化される可能性は永遠に失われることとなりました。

特筆すべき見どころ:酔いそうな「ダッチアングル」と、ご都合主義の極致

本作を語る上で絶対に避けて通れない最大の「見どころ(あるいは突っ込みどころ)」は、全編にわたって狂ったように多用される「ダッチアングル(画面を斜めに傾けて撮影する手法)」です。
通常、ダッチアングルは登場人物の不安や状況の異常さを強調するために「ここぞ」という場面で使われる演出技法ですが、本作を手掛けたロジャー・クリスチャン監督は、なんと映画の約90%以上のカットを斜めに傾けて撮影してしまいました。
平和な会話シーンから激しい戦闘シーンまで、右へ左へと常に画面が傾いているため、多くの観客が「船酔いのような不快感に襲われた」と苦情を申し立てたほどです。
さらに、不自然なカラーフィルター(サイクロ星人のシーンは青緑、人間のシーンは黄土色)が多様され、映像的な安っぽさを際立たせています。
そして、ストーリー上のご都合主義も伝説レベルです。
「1000年間も放置されていた戦闘機(ハリアー)が、燃料も劣化せずに一発でエンジンがかかる」「原始人同然の人間たちが、フライトシミュレーターで遊んだだけで空を飛び、エイリアンの戦闘機を次々と撃墜する」という、あまりにも乱暴なシナリオ展開は、観客の脳の理解を完全に超えていきます。
サイクロ星人のデザインも独特で、巨大な体躯にドレッドヘア、鼻には奇妙な呼吸器を装着し、常に大股でノシノシと歩き回る姿は、恐怖よりもコメディにしか見えません。

制作秘話・トリビア:情熱が裏目に出た、トラボルタの悲劇

本作は、ジョン・トラボルタの「サイエントロジーへの深い信仰心」と「原作者ハバードへの敬意」から生まれたプロジェクトです。
トラボルタは長年、ハリウッドの各スタジオにこの企画を持ち込んでいましたが、「宗教色が強い」という理由で何度も断られ続けてきました。
最終的にフランチャイズ・ピクチャーズが資金を提供することになりましたが、トラボルタ自身も製作費の一部(数百万ドル)を自腹で出資し、宣伝活動にも並々ならぬ情熱を注ぎました。
彼はインタビューで「本作は『スター・ウォーズ』を超える作品になる」と豪語していましたが、その強すぎる愛情が結果的に冷静な客観性を失わせる原因となってしまいました。
また、トラボルタ演じるテルというキャラクターは、当初は別の俳優に任せ、トラボルタ自身は若き主人公ジョニーを演じる予定でした。
しかし、企画が実現するまでにあまりにも長い年月が経ちすぎてしまい、トラボルタの年齢が主人公に合わなくなってしまったため、やむを得ず悪役であるテルを演じることになったという悲しい裏話があります。
その代償行為かのように、トラボルタはテルというキャラクターを異常なテンションで演じ切り、「アーッハッハッハ!」という不気味な高笑いを連発して映画を完全に自分のオンステージへと変えてしまいました。

キャストとキャラクター紹介:大真面目に演じる実力派俳優たちの悲哀

テル:ジョン・トラボルタ / 吹替:村野武範、安原義人など

地球を支配するサイクロ星人の冷酷な保安主任であり、本作のメインヴィランです。
常に威圧的な態度をとっていますが、実は上層部から嫌われており、辺境の地球から一刻も早く抜け出したいと願っている中間管理職的な悲哀も背負っています。
人間を「犬」や「ネズミ」と見下し、彼らを使って金を採掘させるというセコい悪巧みを巡らせますが、その慢心が結果的に人類の反乱を招くことになります。
トラボルタの分厚い特殊メイクと、舞台演劇のような大げさな身振り手振りは、本作をコメディ映画へと変貌させている最大の要因です。

ジョニー・グッドボーイ・タイラー:バリー・ペッパー / 吹替:森川智之など

過酷な環境から人類を解放するために立ち上がる、若き勇者です。
好奇心旺盛で勇敢な性格ですが、テルに捕まり学習マシンにかけられたことで、一気にスーパーヒーローへと覚醒します。
1000年前の言語や兵器の扱いをあっという間にマスターし、絶望していた人間たちを鼓舞してサイクロ星人への大反撃を指揮します。
名優バリー・ペッパーが、この荒唐無稽な脚本の中で最後まで大真面目にシリアスな演技を貫いている姿は、感動すら覚えるプロフェッショナリズムの結晶です。

カー:フォレスト・ウィテカー / 吹替:木村雅史など

テルの部下であり、行動を共にするサイクロ星人です。
テルの悪だくみに加担しつつも、内心では彼の横暴さに不満を抱いており、どこか抜けているコメディリリーフ的な役割を担っています。
後にオスカー俳優となるフォレスト・ウィテカーが、分厚い特殊メイクの下で顔をしかめながらトラボルタのハイテンションな演技に付き合っている姿は、映画ファンの涙を誘います。

カルロ:キム・コーツ / 吹替:大塚芳忠など

ジョニーと共にサイクロ星人に捕らえられ、共に反乱軍の中核となる人間の戦士です。
ジョニーの良き理解者であり、過酷な状況下でも希望を捨てずに戦い抜くタフな男です。
彼もまた、数日間の訓練だけで1000年前のハリアー戦闘機を完璧に操縦し、空中戦で大活躍するというトンデモ展開の恩恵をフルに受けています。

キャストの代表作品と経歴:キャリアの危機を乗り越えた強者たち

主演のジョン・トラボルタは、1970年代の『サタデー・ナイト・フィーバー』や『グリース』で世界的スターとなりました。
その後長い低迷期に入りましたが、1994年のクエンティン・タランティーノ監督作『パルプ・フィクション』で奇跡の大復活を遂げ、『フェイス/オフ』などで再びハリウッドの頂点を極めました。
本作の歴史的失敗により再びキャリアに大きなダメージを負いましたが、その後も『ヘアスプレー』などで見事な怪演を披露し、しぶとく第一線で活躍し続けるハリウッドの不死鳥です。
主人公を演じたバリー・ペッパーは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』での凄腕の狙撃手ジャクソン役や、『グリーンマイル』での若き看守役などで、確かな演技力を持つ若手俳優として大ブレイクを果たしていました。
本作でのラジー賞受賞という不幸な事故に見舞われましたが、その後もクリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』などで素晴らしい演技を披露し、名バイプレイヤーとしての地位を確立しています。
カー役のフォレスト・ウィテカーは、ジム・ジャームッシュ監督の『ゴースト・ドッグ』などで独自の世界観を築いていた名優です。
本作での苦い経験を完全に払拭し、2006年の『ラストキング・オブ・スコットランド』においてウガンダの独裁者アミン大統領を熱演し、見事アカデミー賞主演男優賞を受賞するという最高の栄誉を手にしました。

まとめ(社会的評価と影響):最低映画という名の勲章を手にした金字塔

映画『バトルフィールド・アース』は、映画製作において「絶対にしてはいけないこと」のすべてが詰まっている、ある意味で奇跡のような作品です。
Rotten Tomatoesでの批評家支持率はわずか3%という絶望的な数字を叩き出し、「ストーリー、演技、演出、美術、すべてにおいて弁護の余地がない」と徹底的に切り捨てられました。
ラジー賞において、「その年の最低作品賞」だけでなく「2000年代(10年間)の最低作品賞」という不名誉極まりない特別賞を受賞した事実は、本作が映画史にいかに深い傷跡を残したかを物語っています。
しかし、この映画の真の面白さは、「これだけ巨額の予算と一流の才能を注ぎ込みながら、どうしてここまで間違えた方向に全力疾走してしまったのか」という、映画製作の狂気と不思議さを体感できる点にあります。
全編にわたるダッチアングルの酔いそうな映像美(?)や、トラボルタの突き抜けた怪演、そして1000年前のハリアーで無双する爽快感(?)は、友人と集まってツッコミを入れながら観るパーティームービーとしては最高級のエンターテインメントを提供してくれます。
「映画の教科書に載せるべき最悪の反面教師」でありながら、同時に「絶対に忘れられない愛すべき駄作」として、本作はZ級映画の歴史において永遠に語り継がれる偉大な金字塔です。

作品関連商品:伝説の狂気をご自宅にコレクション

  • 『バトルフィールド・アース』Blu-ray / DVD:常に傾き続ける狂気のカメラワークと、不気味なカラーフィルターを高画質で再確認できる恐るべきアイテムです。トラボルタの高笑いを高音質で楽しむことができます。映画好きなら話のネタとして一度は手元に置いておきたい一本です。
  • 原作小説『バトルフィールド・アース』(L・ロン・ハバード著):映画では描ききれなかった(というか途中で終わってしまった)、サイクロ星人との戦いの真の結末や、より複雑なSF設定が描かれています。映画の破綻ぶりと原作のスケール感を比較することで、深い学びが得られます。
  • 映画『パルプ・フィクション』Blu-ray:ジョン・トラボルタの真のカッコよさと、圧倒的なカリスマ性を再確認するためのリハビリ用映画として強く推奨します。本作で傷ついたトラボルタ・ファンへの最高の処方箋です。
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