PR

【徹底解説】映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の結末と考察!異類婚姻譚が描く愛の形とアカデミー賞作品賞の理由

ファンタジー
この記事は約7分で読めます。

概要

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』(原題:The Shape of Water)は、2017年に公開されたアメリカ合衆国のファンタジー・ドラマ映画です。
監督は、『パンズ・ラビリンス』や『パシフィック・リム』など、独自のダークファンタジー世界で熱狂的なファンを持つギレルモ・デル・トロが務めました。
物語の舞台は、冷戦下のアメリカ、1962年のボルティモアです。
政府の極秘研究所で清掃員として働く声を出せない女性イライザと、アマゾンから連れてこられた半魚人のような不思議な生き物との、種族を超えた究極の愛を描いています。
本作は、第90回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞の最多4部門を受賞するという輝かしい快挙を達成しました。
1960年代のクラシックなSF映画やモンスター映画への深い愛情とオマージュをちりばめつつ、現代社会が抱える差別やマイノリティへの偏見という重厚なテーマを、美しくも残酷なおとぎ話として見事に昇華させています。
言葉を持たない二人が心を通わせていく純粋なロマンスと、冷酷な国家権力との息を呑むような対立構造は、観る者の心を激しく揺さぶります。
ダークファンタジーの巨匠が自身の集大成として世に送り出した、映像美と深い感動に包まれる傑作です。

予告編

詳細(徹底解説)

あらすじと世界観

物語の背景には、アメリカとソ連が宇宙開発競争や軍拡競争で激しく対立していた1962年という時代設定が色濃く反映されています。
この時代は、豊かなアメリカンドリームの裏側で、人種差別や同性愛への偏見、女性の社会的地位の低さなどが露骨に存在していた時代でもあります。
主人公のイライザは、幼い頃のトラウマで声が出せず、手話でコミュニケーションをとる清掃員です。
彼女は、航空宇宙研究センターという巨大な政府の極秘施設で、言葉の通じない孤独な日々を送っていました。
ある日、施設にアマゾンの奥地で神として崇められていたという「彼(不思議な生き物)」が運び込まれてきます。
苛烈な拷問を受ける「彼」に同情したイライザは、手話や音楽、そしてゆで卵を通して徐々に距離を縮め、やがて言葉を必要としない深い愛情で結ばれていきます。
しかし、軍人であるストリックランドは「彼」を宇宙開発のための生体解剖実験の材料としか見ておらず、イライザは「彼」を救い出すために、親友たちと共に危険な脱出計画を企てます。

特筆すべき見どころ

本作の最大の見どころは、画面全体を覆うような深みのある「水色(シアン)」や「緑色」を基調とした圧倒的な映像美です。
水の中を漂うような浮遊感と、ヴィンテージ映画のようなレトロな色彩感覚が、現実とファンタジーの境界線を曖昧にしています。
また、1950年代から1960年代のSF特撮ドラマやクラシックなモンスター映画の要素が随所に散りばめられており、古き良きSF映像作品やアナログな機器を愛好するファンにとってもたまらない魅力が詰まっています。
さらに、アレクサンドル・デスプラが手掛けた、アコーディオンやフルートを用いた郷愁を誘う美しい音楽も、二人の言葉のないロマンスを雄弁に語りかけています。
クライマックスにおける水で満たされた部屋のシーンは、映画史に残るロマンチックで幻想的な名シーンとして高く評価されています。

制作秘話・トリビア

ギレルモ・デル・トロ監督は、幼少期に観た1954年の名作怪奇映画『大アマゾンの半魚人』に強い衝撃を受け、「半魚人とヒロインが結ばれる物語を作りたい」という長年の夢を本作で結実させました。
不思議な生き物のスーツ(着ぐるみ)とメイクアップのデザインには、監督自身が数年間の歳月と数万ドルの私財を投じて開発を進めたという執念のエピソードがあります。
スーツの中に入り、見事な表現力で「彼」を演じたのは、デル・トロ作品の常連であり、クリーチャー俳優の第一人者であるダグ・ジョーンズです。
彼は毎日何時間もかけて特殊メイクを施し、視界や呼吸が制限される過酷な状況の中で、あの美しくも野性的な動きを体現しました。

キャストとキャラクター紹介

  • イライザ・エスポジート:サリー・ホーキンス/吹替:園崎未恵
    政府の極秘施設で働く、声を出せない孤独な清掃員です。
    言葉を持たない代わりに豊かな感情と強い意志を秘めており、「彼」のありのままの姿を愛し、命がけで守り抜こうとします。
    サリー・ホーキンスの全身を使った繊細な演技は、多くを語らずとも観客の涙を誘います。
  • 不思議な生き物(彼):ダグ・ジョーンズ
    アマゾンで神と崇められていた、半魚人のような美しい水棲生物です。
    人間から残虐な扱いを受ける中で、自分に優しく接してくれるイライザに心を開いていきます。
    言葉を持たず、表情とわずかな鳴き声、そして優雅な身のこなしだけで喜怒哀楽を表現するダグ・ジョーンズの演技は圧巻です。
  • リチャード・ストリックランド:マイケル・シャノン/吹替:大塚明夫
    「彼」をアマゾンから捕獲してきた冷酷な軍人であり、本作の最大の悪役です。
    1960年代のアメリカにおける家父長制や白人至上主義、マッチョイズムを体現したような人物であり、権力と暴力で他者を支配しようとします。
    マイケル・シャノンが放つ、狂気を孕んだ威圧感はスクリーンを支配しています。
  • ジャイルズ:リチャード・ジェンキンス/吹替:安原義人
    イライザの隣室に住む、売れない初老のイラストレーターです。
    同性愛者であるがゆえに社会から疎外され、孤独を抱えていますが、イライザにとっては良き理解者であり家族のような存在です。
    物語の語り部も務め、彼自身の悲哀と優しさが物語に深みを与えています。
  • ゼルダ・フラー:オクタヴィア・スペンサー/吹替:田村聖子
    イライザの同僚の清掃員であり、職場で彼女を助けるおしゃべりで頼もしい黒人女性です。
    人種差別や夫への不満に耐えながらも、たくましく生きる姿が印象的です。
    いざという時にはイライザのために身の危険を顧みない、真の友情を見せてくれます。
  • ロバート・ホフステトラー博士(ディミトリ・モーセンコフ):マイケル・スタールバーグ/吹替:上田燿司
    施設の科学者として働いていますが、その正体はソ連のKGBから潜入しているスパイです。
    しかし、彼は根っからの科学者であり、「彼」の高い知性に感銘を受け、国家の思惑を超えてイライザの救出計画に手を貸すことになります。

キャストの代表作品と経歴

サリー・ホーキンスは、『ハッピー・ゴー・ラッキー』や『パディントン』シリーズなどで見せるチャーミングな演技から、本作のようなシリアスな役柄まで幅広くこなすイギリスの演技派女優です。
本作での言葉を発しない熱演はキャリア史上最高と絶賛され、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。
ダグ・ジョーンズは、『パンズ・ラビリンス』のパンやペイルマン、『ヘルボーイ』のエイブ・サピエンなど、特殊メイクを施したクリーチャー演技において右に出る者はいません。
マイケル・シャノンは、『テイク・シェルター』やドラマ『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』などで見せる、神経質で威圧的な演技が評価されており、本作でもその持ち味を存分に発揮しています。

まとめ(社会的評価と影響)

『シェイプ・オブ・ウォーター』は、怪獣映画やダークファンタジーといった、これまでアカデミー賞の主要部門では敬遠されがちだったジャンル映画でありながら、作品賞を獲得した歴史的な意義を持つ作品です。
Rotten Tomatoesでは92%という極めて高い支持率を獲得しており、世界中の批評家から「大人のためのおとぎ話」として絶賛されました。
社会から周縁化されたマイノリティ(声の出せない女性、同性愛者の老人、黒人女性、そして異形の怪物)が連帯し、白人男性中心の抑圧的な体制に立ち向かうという構図は、現代社会が抱える分断への強烈なアンチテーゼとなっています。
デル・トロ監督が「モンスターは私たちの不完全さを受け入れてくれる存在だ」と語るように、他者との違いを愛し、受容することの尊さを教えてくれる、時代を超えて語り継がれるべき愛の傑作です。

作品関連商品

  • 『シェイプ・オブ・ウォーター』Blu-ray/DVD
    デル・トロ監督の美意識が隅々まで行き渡った映像美を、高画質で堪能できるファン必携のアイテムです。
    特典映像では、数万ドルを投じたクリーチャーの造形プロセスや、1960年代のセットデザインの裏側が詳細に語られています。
  • 『シェイプ・オブ・ウォーター』オリジナル・サウンドトラック(CD)
    アレクサンドル・デスプラが作曲し、アカデミー作曲賞を受賞した名盤です。
    水の中を漂うようなロマンチックでメランコリックな旋律は、映画の余韻に浸るための最高のBGMとなります。
  • メイキングブック『ギレルモ・デル・トロのシェイプ・オブ・ウォーター 混沌の時代に贈るおとぎ話』(DU BOOKS)
    監督の構想ノートや美しいコンセプトアート、キャストのインタビューが収録された豪華なアートブックです。
    映画の世界観をより深く理解したいクリエイターやファンにとって、たまらない一冊となっています。
タイトルとURLをコピーしました