抱腹絶倒の神回！『ボナンザ』シーズン5 第12話「ホスと妖精」：巨漢ホスの優しさが起こした奇跡と大騒動

「ホスと妖精」の概要：西部劇史上もっとも心温まるコメディ

ハードな展開も多い西部劇『ボナンザ』において、視聴者が最も笑い、そして最もホッコリしたと語る伝説のコメディエピソードがあります。

それがシーズン5 第12話「ホスと妖精（原題：Hoss and the Leprechauns）」です。

身長193cm、体重130kgを超える巨漢のホス・カートライトが、森の中でアイルランドの妖精「レプラコーン」に出会ったと言い出すところから物語は始まります。

最初は誰も信じませんでしたが、「妖精が金貨を持っていた」という言葉で事態は一変。欲に目がくらんだ町の人々を巻き込んだ大騒動へと発展します。

ホスを演じたダン・ブロッカーの愛すべきキャラクター性と、コメディの中に込められた「偏見への批判」というテーマが見事に融合した、シリーズ屈指の人気回を徹底解説します。

ある日、森へ出かけたホスは、奇妙な緑色の服を着た「小さな男」たちに遭遇します。

彼らはアイルランド伝承に登場する妖精「レプラコーン」だと名乗り、ホスを驚かせます。

興奮して牧場に戻ったホスは、家族に「妖精を見た！」と報告しますが、父ベンも兄弟たちも「ホスの作り話だ」と笑って取り合いません。

純粋なホスは必死に訴えますが、その巨体と「小さな妖精」という対比があまりに滑稽で、誰も真剣に耳を貸そうとしないのです。

しかし、ホスが「妖精たちが金貨の入った箱を持っていた」と口を滑らせた瞬間、バージニアシティの町の雰囲気は一変します。

それまでホスを馬鹿にしていた住人たちが、今度は血眼になって森へとなだれ込みます。

「妖精を捕まえれば金貨が手に入る」という迷信と欲望が混ざり合い、町中が集団ヒステリーのような状態に陥ります。

このあたりの描写は、単なるコメディではなく、人間の強欲さや、噂に流されやすい大衆心理を鋭く風刺しています。

実は、彼らは魔法の妖精ではありませんでした。

その正体は、サーカス団で働いていた小人症のパフォーマーたちだったのです。

彼らは偏見や差別から逃れ、自分たちだけで静かに暮らす場所を探して旅をしており、苦労して貯めた一座の資金（金貨）を守るために「恐ろしい妖精」のフリをして人を遠ざけていたのでした。

真実を知ったホスは、銃を持って彼らを追い回す暴徒と化した町の人々の前に立ちはだかります。

「彼らは怪物じゃない、人間だ！」と身体を張って小さな友人たちを守ろうとするホスの姿は、このエピソードのクライマックスであり、ダン・ブロッカーという俳優の温かい人柄が画面越しに伝わってくる名シーンです。

このエピソードが成功した最大の要因は、ホス役のダン・ブロッカーの演技力にあります。

彼は巨体でありながら、子供のように純粋な表情を見せたり、困り果ててオロオロしたりする演技が抜群に上手く、視聴者に「守ってあげたい」と思わせる愛嬌がありました。

「レプラコーン」たちとのサイズ感の対比も視覚的に面白く、西部劇史に残る名コンビネーションを生み出しました。

「ホスと妖精」は、笑いあり、涙あり、そして社会的なメッセージありの、『ボナンザ』の魅力が凝縮された宝石のようなエピソードです。

異質なものを排除しようとする社会に対し、ホスのような「純粋な心」と「偏見のない優しさ」がいかに大切かを教えてくれます。

見終わった後にとても幸せな気持ちになれるこの回は、西部劇ファンならずとも必見。

ダン・ブロッカーがなぜアメリカの国民的アイドルとなり得たのか、その理由がこの30分に詰まっています。