【ドールハウス】エコー(キャロライン)の多重人格と覚醒!記憶を消されたヒロインが辿る数奇な運命
「ドールハウス」におけるエコーの概要
『アベンジャーズ』や『バフィ ~恋する十字架~』で知られる鬼才ジョス・ウェドンが製作したSFサスペンスドラマ『ドールハウス(Dollhouse)』。
この物語の主人公であり、あらゆる人格をインストール可能な「ドール(アクティブ)」として生きる女性が、エコー(演:エリザ・ドゥシュク)です。
彼女は、巨大企業ロッサム社が運営する地下施設「ドールハウス」に所属し、クライアントの要望に合わせて、完璧な恋人、敏腕交渉人、あるいは暗殺者など、様々な人格を脳に刷り込まれ(インプリント)、任務を遂行します。
任務が終われば記憶を消去され、無垢な状態に戻るはずの彼女でしたが、消えるはずのない記憶の残滓が蓄積され、やがて「自我」を持った全く新しい存在へと進化していく……その複雑で哲学的なキャラクターの魅力を解説します。
詳細:あらゆる人格を受け入れ、進化した魂
エコー(およびオリジナル人格のキャロライン・ファレル)は、単なる「着せ替え人形」ではありません。彼女の物語は、人間のアイデンティティとは何か、魂はどこに宿るのかを問いかける壮大な旅路です。
1. アクティブ「エコー」としての能力と役割
ドールハウスに所属する「アクティブ」たちは、本来の人格と記憶を抜かれた「器」の状態です。
エコーはその中でも最も優秀な個体の一人であり、天才プログラマーのトファーによって、あらゆるスキルや性格をインストールされます。
ある時はFBI捜査官として事件を解決し、ある時はバックコーラスとして歌い、またある時は大富豪の妻として振る舞います。
エリザ・ドゥシュクは、毎回異なる役柄を演じるという難易度の高い演技を要求されましたが、それを器用にこなし、エコーというキャラクターの多面性を表現しました。特に、刷り込みの不具合(グリッチ)により、任務中に本来の人格がフラッシュバックする瞬間の恐怖や混乱の演技は圧巻です。
2. オリジナル人格「キャロライン・ファレル」の正体
彼女がドールハウスに入る前の名前は、キャロライン・ファレルでした。
キャロラインは、動物愛護や反企業活動を行う情熱的な活動家であり、ロッサム社の不正を暴こうとして捕まりました。
彼女は、恋人の命を救うことや、自身の罪を帳消しにすることを条件に、5年間自分の身体をロッサム社に提供する契約を結びます。
キャロラインは正義感が強く、行動力のある女性でしたが、その無鉄砲さが彼女自身の運命を狂わせてしまったとも言えます。物語後半では、エコーがこの「キャロライン」という人格とどう向き合うかが大きなテーマとなります。
3. 「タブラ・ラサ(白紙)」からの覚醒
本作の最大の見どころは、記憶を消去され続けてもなお、エコーの中に独自の「自我」が芽生えていく過程です。
通常、ドールは任務が終われば「タブラ・ラサ(白紙)」の状態に戻り、子供のように無邪気で従順な性格になります。
しかし、エコーは数々の人格を経験する中で、それらの断片を無意識下で統合し始めます。彼女は、キャロラインでもなく、インストールされた誰かでもない、「エコー自身」としての意識を獲得し、ドールハウスのシステムに抗うようになります。この「誰にも支配されない魂」の誕生こそが、彼女を特別な存在にしました。
4. 黙示録的な未来(エピタフ)での救世主
シリーズを通して断片的に描かれる(そして打ち切り決定後に製作されたエピソード「Epitaph One/Two」で詳細が語られる)未来の世界では、ドールハウスの技術が暴走し、人類の脳がハッキングされるという崩壊した世界が広がっています。
その世界において、あらゆる人格を受け入れ、統合することに成功したエコーは、人類を救うための唯一の希望、あるいは救世主のような存在として描かれます。
多くの人格を背負い、苦しみながらも、愛するポール・バラードや仲間たちのために戦う彼女の姿は、SFヒロインの極致と言えるでしょう。
「エコー / キャロライン」参考動画
まとめ
エコーは、「私は誰?」という問いに対し、「私はすべてであり、誰でもない」という答えを出した稀有なキャラクターです。
彼女は技術によって操られる被害者でしたが、最終的にはその技術を超越し、人間以上の人間性(Compassion)を獲得しました。
主演のエリザ・ドゥシュクがジョス・ウェドンとランチをしている際に「様々な役を演じてみたい」と語ったことから生まれたというこのドラマ。
エコーが見せる百面相と、その奥にある揺るぎない「生きる意志」を、ぜひ目撃してください。
関連トピック
ポール・バラード(FBI捜査官。エコー(キャロライン)の失踪に疑問を持ち、ドールハウスを執拗に追う。後にエコーの監視役となり、深く愛し合う)
アデル・デウィット(ドールハウスの冷徹な管理者。エコーを商品として扱いながらも、奇妙な執着と保護欲を見せる)
トファー・ブリンク(人格インストールを行う天才プログラマー。エコーに様々な人格を与えた「創造主」の一人)
アルファ(ドールハウスを脱走した元アクティブ。複数の人格が統合されず混在する狂気の殺人鬼となり、エコーに執着する)
関連資料
DVD『ドールハウス シーズン1 & 2』(全2シーズン。打ち切りとなったが、物語は完結している)
ドラマ『バフィ ~恋する十字架~』(エリザ・ドゥシュクがフェイス役でブレイクした、ジョス・ウェドンの代表作)

