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【徹底解説】『ミクロの決死圏』体内へのSF旅行!あらすじからラスト、特撮技術まで完全網羅【1966年名作】

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【徹底解説】『ミクロの決死圏』体内へのSF旅行!あらすじからラスト、特撮技術まで完全網羅【1966年名作】

人間や物体をミクロサイズに縮小し、人体の内部へ潜入するという驚愕のアイデアを映像化したSF映画の金字塔『ミクロの決死圏』(原題:Fantastic Voyage)。
1966年に公開された本作は、宇宙を目指す「アウター・スペース」への冒険が主流だった時代に、人体の小宇宙「インナー・スペース」という新たなフロンティアを提示し、世界中の度肝を抜きました。

CGがまだ存在しなかった時代、巨大なセットと独創的な照明技術で描かれた「肺」や「脳」の描写は、今見ても幻想的で圧倒的な美しさを誇ります。
アイザック・アシモフによるノベライズ版でも有名なこの傑作について、あらすじから撮影秘話、現代の映画に与えた多大な影響までを徹底解説します。

概要

ミクロの決死圏』は、1966年のアメリカ映画で、監督はリチャード・フライシャーが務めました。
東西冷戦の緊張感が漂う時代背景をベースに、脳内出血を起こした重要人物を救うため、潜水艇ごと縮小された医療チームが患者の体内に侵入し、内部から治療を行うというストーリーです。

第39回アカデミー賞では、その革新的な映像表現が評価され、美術賞と視覚効果賞を受賞。
後の『インナースペース』や多くのアニメ作品、さらには医療ドキュメンタリーの演出にまで決定的な影響を与えた、SF映画史における教科書的な一作です。
主演は『ベン・ハー』のスティーヴン・ボイド、ヒロインには本作で不動のセックスシンボルとなったラクエル・ウェルチが名を連ねています。

予告編

詳細(徹底解説)

あらすじと世界観:制限時間は60分!脳内への決死行

物語は、物質縮小技術(ミニチュア化)を開発した科学者ヤン・ベネス博士が、アメリカへの亡命直後に襲撃され、脳内出血で意識不明の重体になるところから始まります。
血腫は脳の深部にあり、通常の外科手術では除去できません。
そこで軍部は、特殊潜水艇「プロテウス号」に外科医やパイロットを乗せ、細菌レベルのサイズまで縮小して血管から注入し、患部まで移動してレーザーで治療するという前代未聞の作戦を立案します。

しかし、この縮小技術には致命的な制約がありました。
縮小効果が持続するのはわずか60分
1時間経過すると、彼らは元の大きさに戻り始め、患者の体を内部から食い破ってしまうのです。

チームのメンバーは、司令官のグラント(スティーヴン・ボイド)、脳外科医のデュヴァル博士、助手のコーラ(ラクエル・ウェルチ)、パイロットのオーウェンズ、そして循環器系の専門家マイケルズ博士。
彼らは秒刻みのスケジュールの中で、心臓の嵐、肺の暴風、抗体の攻撃といった人体の驚異に立ち向かいながら脳を目指します。

特筆すべき見どころ:アナログ特撮が描く「幻想的な人体」

本作の最大の魅力は、CGなしで作り上げられた「体内」の描写です。
美術スタッフは、医学書を参考にしながらも、人体を一つの「エイリアンの惑星」のようにデザインしました。

例えば、肺胞のシーン
巨大なピンク色の風船状のセットが無数に並び、呼吸に合わせて膨らんだり縮んだりする中、酸素を補給するためにクルーが外に出る場面は、まるで異星に降り立ったような緊張感があります。
また、水晶のような輝きを放つ脳細胞や、海草のように揺らめく毛細血管の壁など、色彩豊かなライティングはサイケデリックで美しく、観客を幻想的な世界へと誘います。
白血球が「恐ろしいモンスター」として描かれ、潜水艇を襲うシーンは、当時の子供たちにトラウマと興奮を与えました。

サスペンス要素:裏切り者は誰だ?

単なる冒険活劇に留まらず、本作には「スパイ・サスペンス」の要素も巧みに組み込まれています。
出発前、上層部は「チームの中に敵側の工作員がいるかもしれない」とグラントに警告します。

手術用レーザーが故障していたり、不自然なトラブルが続発したりする中、誰が裏切り者なのかという疑心暗鬼がチーム内に広がります。
「手術を成功させたい」という医師としての使命と、「敵に技術を渡したくない」というスパイの思惑。
極限状態の中で繰り広げられる心理戦が、タイムリミットの焦燥感をさらに高めています。

制作秘話・トリビア

  • アイザック・アシモフの貢献
    本作のノベライズ(小説版)は、SF巨匠アイザック・アシモフが執筆しました。
    しかし、アシモフは映画の脚本を読んだ際、「科学的な矛盾が多すぎる」と激怒。
    (例:縮小された潜水艇を体外に出さずに放置するとどうなるか、など)
    彼はプロデューサーとかけ合い、小説版では独自に科学的な整合性を修正しました。
    そのため、映画版と小説版では細部の設定やラストの処理が異なっており、SFファンにとっては読み比べが必須となっています。
  • ラクエル・ウェルチの苦労
    ヒロインのコーラが着用する体にフィットしたダイビングスーツは、当時の流行最先端であり、彼女をセックスシンボルへと押し上げました。
    しかし、撮影現場ではこのスーツが非常に動きにくく、さらに「抗体に襲われるシーン」では実際に何人ものスタッフに掴みかかられるなど、過酷な撮影だったと語られています。

キャストとキャラクター紹介

グラント:スティーヴン・ボイド

通信連絡員としてチームに加わった事実上のリーダー。
医学の知識はありませんが、潜水工作のエキスパートであり、冷静な判断力と行動力で危機を乗り越えます。
当初はコーラを「女にこの任務は無理だ」と軽視していましたが、彼女の勇気を見て認識を改めていきます。
演じるスティーヴン・ボイドは、『ベン・ハー』の敵役メッサラでも知られる名優です。

コーラ・ピーターソン:ラクエル・ウェルチ

デュヴァル博士の有能な技術助手。
当時の映画における「添え物的な女性キャラ」かと思いきや、レーザーの修理や予期せぬトラブルへの対処など、彼女がいなければミッションは失敗していたであろう活躍を見せます。
その知性と美貌、そして象徴的なホワイトのボディスーツ姿は、映画史に残るヒロイン像となりました。

マイケルズ博士:ドナルド・プレザンス

循環器系の専門家であり、体内の地図を知り尽くしている人物。
しかし、当初から作戦に否定的で、事あるごとに「もう無理だ、引き返すべきだ」と主張します。
その言動は単なる臆病さからくるものなのか、それとも…?
演じるドナルド・プレザンスは、後に『007は二度死ぬ』のブロフェルド役や『ハロウィン』のルーミス医師役で怪優としての地位を確立します。

デュヴァル博士:アーサー・ケネディ

世界最高の腕を持つ脳外科医。
冷徹で職人気質な性格のため、周囲からは誤解されやすく、スパイではないかと疑われることも。
しかし、患者を救いたいという医師としての情熱は本物であり、極限状態での手術に挑みます。

キャストの代表作品と経歴

スティーヴン・ボイド(Stephen Boyd)

北アイルランド出身の俳優。
代表作は何と言っても1959年の超大作『ベン・ハー』。
チャールトン・ヘストン演じる主人公の旧友であり宿敵となるメッサラ役を熱演し、ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しました。
その力強い眼光と存在感は、本作の頼れるリーダー役にも遺憾なく発揮されています。

ラクエル・ウェルチ(Raquel Welch)

本作と同じ1966年に公開された『恐竜100万年』での鹿皮のビキニ姿で、世界的なセックスシンボルとしての地位を不動のものにしました。
その後も『三銃士』(1973年)でゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞するなど、アクションからコメディまで幅広く活躍。
「20世紀最高のグラマー女優」として、今なお語り継がれる伝説的存在です。

まとめ(社会的評価と影響)

『ミクロの決死圏』は、公開から半世紀以上が経過した現在でも、Rotten Tomatoesで高評価を維持しています。
本作が提示した「縮小して体内に入る」というプロットは、その後数え切れないほどの作品でパロディやオマージュの対象となりました。

スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮の『インナースペース』(1987年)は本作をコミカルにリメイクした精神的続編であり、日本のアニメ『ドラえもん』や『はたらく細胞』などにも、本作のDNAが色濃く受け継がれています。
また、本作の映像は医学界にもインスピレーションを与え、後の内視鏡技術の発展や、医療用ナノマシンの研究といった科学分野のビジョンにも影響を及ぼしたと言われています。

スリル満点の冒険物語でありながら、生命の神秘と尊さを教えてくれる『ミクロの決死圏』。
レトロフューチャーな魅力と、普遍的な興奮が詰まったこの傑作を、ぜひ体験してみてください。

作品関連商品

  • Blu-ray / DVD:『ミクロの決死圏』(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント)
    鮮明なリマスター版で、当時の美術スタッフがこだわり抜いた色彩美を堪能できます。音声解説も必聴。
  • 原作小説:『ミクロの決死圏』(アイザック・アシモフ著 / ハヤカワ文庫SF)
    映画の矛盾点を解消し、ハードSFとして再構築された名著。映画を観た後に読むと、その構成の巧みさに驚かされます。
  • 関連映画:『インナースペース』(1987年)
    本作のコンセプトを現代風かつコメディタッチにアレンジした作品。あわせて観ることで「体内冒険モノ」の進化を楽しめます。


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