【徹底解説】ドラマ『ロングストリート』ブルース・リー伝説の原点!「水になれ」の哲学と出演回あらすじ総まとめ
概要
『ロングストリート』(原題:Longstreet)は、1971年から1972年にかけてアメリカABCネットワークで放送された、盲目の保険調査員が主人公のミステリードラマです。
日本では『復讐の鬼探偵ロングストリート』という邦題で放送されたこともあります。
主演は『続・猿の惑星』などで知られるジェームズ・フランシスカス。
ニューオーリンズを舞台に、視力を失った主人公マイク・ロングストリートが、聴覚などの鋭敏化した感覚と知恵、そして「武術」を武器に難事件を解決していく物語です。
このドラマが現在でも伝説として語り継がれる最大の理由は、ブルース・リー(李小龍)がゲスト出演しているという点に尽きます。
リーが出演したのは全23話中のわずか4話ですが、特に第1話「The Way of the Intercepting Fist(波止場の対決)」でのインパクトは絶大でした。
彼は主人公に護身術「ジークンドー(截拳道)」を教える古美術商リー・ツン(Li Tsung)役として登場し、現代格闘技の礎ともなる哲学を語ります。
あの有名な「Be Water, My Friend(友よ、水になれ)」というセリフは、インタビュー映像ではなく、実はこのドラマの脚本として書かれた(リー自身も脚本監修に関わった)ものなのです。
『燃えよドラゴン』で世界的スターになる直前、アメリカで爪痕を残そうとしていた若き日のブルース・リーの姿と、彼が遺した哲学の真髄を徹底解説します。
オープニング
YouTubeにて、ドラマの中でブルース・リーが「Be Water」の哲学を語る伝説のシーンを確認できます。
詳細(徹底解説)
あらすじと世界観:闇の中で見つけた光
主人公のマイク・ロングストリートは、ニューオーリンズで活躍する有能な保険調査員でした。
しかし、自宅を狙った爆弾テロにより、最愛の妻イングリッドを失い、自身も視力を完全に失ってしまいます。
絶望の淵に立たされた彼は、リハビリを経て職場復帰を決意。盲導犬のパックス(ホワイト・シェパード)と共に、爆弾犯への復讐、そして数々の難事件へと挑んでいきます。
視覚以外の感覚を極限まで研ぎ澄ますことで「見えない真実」を暴くという設定は、後の『デアデビル』などにも通じるものがあります。
しかし、マイクは超人ではありません。最初は杖をついて歩くのもやっとの、傷ついた一人の男です。
そんな彼が、自身の弱さを受け入れ、強さへと変えていく過程において、ブルース・リー演じるリー・ツンとの出会いが決定的な役割を果たします。
ブルース・リー出演回の徹底解説
リーが出演したのは以下の4エピソードです。
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第1話「The Way of the Intercepting Fist(邦題:波止場の対決)」
記念すべきシリーズ第1話。マイクは街でチンピラに襲われ、無力さを痛感します。そんな彼を助けたのが、古美術商のリー・ツンでした。
マイクは彼に弟子入りを志願しますが、リーは「型(カタ)」を教えることは拒否し、「戦うとはどういうことか」という概念を教え始めます。
見どころ:ブルース・リーが実際にマイク(ジェームズ・フランシスカス)にジークンドーの指導を行うトレーニングシーン。「心を空(カラ)にせよ、水のように」という名言はこの回で登場します。 - 第6話「Spell Legacy Like Death(邦題:爆破四分前)」
- 第9話「Wednesday’s Child(邦題:美女誘拐!)」
- 第10話「I See, Said the Blind Man(邦題:殺人者の足おと)」
これらの回でも、リー・ツンはマイクの良き友人、そして師として登場し、事件解決に協力します。特にアクションシーンにおいては、リー自身の動きのキレが凄まじく、主役を完全に食ってしまっていると話題になりました。
「Be Water, My Friend」の真意
第1話でリー・ツンがマイクに語るセリフは、そのままブルース・リー本人の哲学です。
「心を空(カラ)にしろ。形を捨てろ。水のように。
水をカップに注げば、水はカップの形になる。ボトルに注げばボトルの形に、ティーポットに注げばティーポットの形になる。
水は静かに流れることもできるし、激しく砕くこともできる。
友よ、水になるんだ。(Be water, my friend.)」
これは、固定観念や伝統的な「型」に囚われず、状況に合わせて柔軟に変化することの重要性を説いています。
盲目であるマイクに対し、「目が見えないことを嘆くのではなく、その状況に適応し、音や気配を全身で感じる水になれ」という教えは、ドラマのテーマとも深くリンクしていました。
このセリフは脚本家のスターリング・シリファント(リーの弟子でもあった)によって書かれましたが、リー自身の思想が色濃く反映されています。
制作秘話・トリビア
- 赤いトラックスーツ:このドラマでリーが着用している赤いトラックスーツ(上下赤のジャージ)は、後に『死亡遊戯』での黄色いトラックスーツのプロトタイプになったとも言われています。
- 出演料:当時、まだ無名に近かったリーですが、この番組での演技が高く評価され、ファンレターが殺到しました。これがきっかけで、香港のゴールデン・ハーベスト社から声がかかり、『ドラゴン危機一発』での映画主演へと繋がっていきます。いわば、彼のスター街道への「滑走路」となった作品です。
キャストとキャラクター紹介
マイク・ロングストリート (Mike Longstreet)
演:ジェームズ・フランシスカス (James Franciscus)
ニューオーリンズの保険調査員。爆発事故で失明するが、不屈の闘志で現場に復帰する。
演じるジェームズ・フランシスカスは、『続・猿の惑星』の主人公ブレント役でも有名。端正なマスクと誠実な演技で人気を博しました。
リー・ツン (Li Tsung)
演:ブルース・リー (Bruce Lee) / 吹替:石丸博也(DVD版)
古美術商であり、ジークンドーの達人。
マイクに護身術を教える師匠。冷静沈着で哲学的だが、悪に対しては容赦ない強さを見せる。
演じるブルース・リーは、この役を通してアメリカの視聴者に「カンフー(功夫)」という言葉と概念を初めて本格的に紹介しました。
ニッキー・ベル (Nikki Bell)
演:マリル・ヘナー (Marlyn Mason)
マイクの助手兼秘書。彼の目となり手足となって支えるパートナー。マイクに点字を教えたり、電子機器のサポートを行ったりする。
パックス (Pax)
マイクの相棒である盲導犬(ホワイト・シェパード)。非常に賢く、時にマイクの命を救う名優犬。
まとめ(社会的評価と影響)
ドラマ『ロングストリート』は、1シーズン(全23話)のみで終了しましたが、ブルース・リーが出演したエピソードに関しては、カルト的な人気を誇っています。
特に、「盲目の白人が、アジア人の師匠から武術を学ぶ」という構図は、後の『ベスト・キッド』や『デアデビル』などの作品に多大な影響を与えました。
何より、ブルース・リーが単なる「アクションスター」ではなく、「思想家・哲学者」であることを映像として記録した資料的価値は計り知れません。
「水になれ」――その言葉の真の意味を知りたい方は、ぜひ第1話だけでも視聴することをおすすめします。
作品関連商品
- DVD:『復讐の鬼探偵ロングストリート』DVD-BOXなどが発売されています。ブルース・リー出演回のみを抜粋した編集版ソフトが存在する場合もあります。
- 書籍:『ブルース・リー 語録』などの関連書籍では、本作でのセリフが数多く引用・解説されています。
