【神回】若き日のクリント・イーストウッドが本人役で登場!『ミスター・エド』伝説のコラボ回を徹底解説
『ミスター・エド』伝説のゲスト回「クリント・イーストウッド登場」の概要
1960年代、アメリカのみならず日本でもお茶の間を爆笑させたテレビドラマ『ミスター・エド(Mister Ed)』。
その全6シーズン・143話の中でも、ファンの間で「伝説の神回」として語り継がれているのが、シーズン2第25話「クリント・イーストウッド登場(原題:Clint Eastwood Meets Mister Ed)」です。
このエピソードの最大の衝撃は、当時テレビドラマ『ローハイド』のロディ・イェーツ役で全米のアイドル的存在だった若き日のクリント・イーストウッドが、「クリント・イーストウッド本人役」としてゲスト出演している点にあります。
「喋る馬」というコメディ全開の世界観に、クールで男らしい西部劇のスターが迷い込むという異色のクロスオーバーは、当時の視聴者を驚愕させました。
後のハリウッド映画界の巨匠が、馬と真剣に共演しているシュールかつ貴重な映像は、映像史的な価値も極めて高いものです。
本記事では、この奇跡のエピソードのあらすじ、イーストウッド出演の経緯、そして馬のエドとスターが見せた抱腹絶倒の掛け合いについて徹底解説します。
「クリント・イーストウッド登場」の詳細あらすじ
エピソードの背景:西部劇スターへの憧れ
1962年4月22日に放送されたこの回は、当時のテレビ界の状況を反映しています。
当時、同じCBSネットワークで放送されていた西部劇『ローハイド』は大ヒット中で、若きクリント・イーストウッドは飛ぶ鳥を落とす勢いのスターでした。
物語は、ミスター・エドがテレビで『ローハイド』を見て、イーストウッドの大ファンになるところから始まります。
エドは飼い主のウィルバー(アラン・ヤング)に対し、「近所にクリント・イーストウッドが引っ越してきたらしい」という情報を聞きつけ、興奮気味に語ります。
「彼に会いたい」「俺の書いた脚本を見せたい」と無茶を言うエドに対し、ウィルバーは「そんな大スターが相手にしてくれるわけがない」と相手にしません。
エドの暴走:電話魔となる馬
ウィルバーが協力してくれないと知ったエドは、自ら行動に出ます。
なんと、馬小屋に引かれている電話線を使い、受話器を器用に外してイーストウッドの家に電話をかけ始めるのです。
「もしもし、クリント? 俺だ、エドだ」
当然、イーストウッド側は無言電話やいたずら電話だと思って困惑します。
さらにエドは、近所の子供たちや郵便配達員などのネットワークを駆使し、イーストウッドの家の情報を収集。
ウィルバーは知らない間に、自分の家の電話料金が跳ね上がり、さらにイーストウッドに対して失礼な電話がかけられていることを知り、青ざめます。
この「スターに近づきたい一般ファン(馬)」の暴走ぶりは、現代のSNS社会にも通じる風刺的な面白さがあります。
奇跡の対面:リビングに現れたカウボーイ
度重なる騒動の末、ついにクリント・イーストウッド本人がウィルバーの家(ポスト家)を訪ねてきます。
玄関を開けると、そこには長身で甘いマスクのイーストウッドが立っていました。
彼はウィルバーに対し、電話の件や近所の噂について穏やかに話しますが、ウィルバーは「犯人は自分の馬なんです」とは口が裂けても言えず、しどろもどろになります。
そして、ついにエドとの対面シーンが訪れます。
ウィルバーは、エドに「クリントの前では絶対に喋るなよ」と釘を刺していましたが、エドは大スターを前に黙っていられません。
イーストウッドが馬の扱いには慣れている(西部劇スターなので)ことを見せるため、エドを撫でたり話しかけたりすると、エドは嬉しさのあまり、いつもの皮肉交じりの態度ではなく、デレデレとしたファンの顔を見せます。
イーストウッドがエドと一緒に写真を撮るシーンでは、エドがカメラ目線でキメ顔を作るなど、動物タレントとしてのエド(バンブー・ハーベスター)の演技力が光ります。
シュールすぎる結末
物語のクライマックスでは、エドの猛アピール(?)が功を奏し、イーストウッドはウィルバーたちと親しくなります。
イーストウッドは、エドのことを「素晴らしい馬だ、何か特別なものを感じる」と評しますが、最後まで「馬が喋っている」という事実には気づきません(あるいは、気づかないふりをする大人の対応を見せます)。
後の「ダーティハリー」や数々の重厚な映画監督作品からは想像もつかない、若々しく爽やかなイーストウッドが、馬に振り回されながらも笑顔を見せるこのエピソードは、彼の長いキャリアの中でも「最も平和で奇妙な仕事」の一つと言えるでしょう。
「クリント・イーストウッド登場」参考動画
「クリント・イーストウッド登場」のまとめ
『ミスター・エド』の「クリント・イーストウッド登場」回は、単なるゲスト出演の枠を超えた、テレビ史に残るクロスオーバー作品です。
コメディ番組のナンセンスな世界観の中に、リアリズムの象徴である西部劇スターを配置することで生まれる「ズレ」の笑いは、脚本の妙と言えます。
また、当時31歳前後だったイーストウッドの初々しい姿と、それを食う勢いで演技する馬のエドの対比は必見です。
「あのイーストウッドが、喋る馬のドラマに出ていた」というトリビアは有名ですが、実際にその映像を見ると、彼がいかに柔軟で、ユーモアを解する俳優であったかがよく分かります。
映画ファンにとっても、コメディファンにとっても、必修科目と言える珠玉のエピソードです。
関連トピック
ローハイド(Rawhide):1959年から1965年まで放送された西部劇ドラマ。イーストウッドの出世作であり、日本でも大ヒットしました。
バンブー・ハーベスター:エドを演じた馬。イーストウッドのようなスターを前にしても動じず、完璧な演技を披露した名優馬。
クロスオーバー:異なる番組のキャラクターが登場する演出。本作は同一局(CBS)の人気番組同士のコラボレーションの成功例です。
アラン・ヤング:ウィルバー役。大スターを前に恐縮する一般市民の演技が絶妙で、エピソードの面白さを引き立てました。
関連資料
DVD『Mister Ed: Season 2』:本エピソードを収録。
書籍『Clint Eastwood: A Biography』:イーストウッドの伝記の中で、テレビ時代のエピソードとして触れられることがあります。

