【徹底解説】映画『電撃フリントGO!GO作戦』007を超えた万能スパイ!あらすじから伝説の着信音、キャストまで総まとめ
概要
『電撃フリントGO!GO作戦』(原題:Our Man Flint)は、1966年に公開されたアメリカのスパイ・アクション・コメディ映画です。
当時はショーン・コネリー主演の『007』シリーズが世界的な旋風を巻き起こしており、雨後の筍のように数多の「スパイ映画(またはそのパロディ)」が作られていました。
しかし、本作はその中でも別格の存在感を放ち、大ヒットを記録。後に続編『電撃フリント・アタック作戦』も製作されました。
主人公のデレク・フリントを演じるのは、独特の歯を見せた笑顔と長い手足が魅力の個性派俳優、ジェームズ・コバーン。
彼が演じるフリントは、単なるスパイではありません。医学、科学、芸術、語学、空手……ありとあらゆる分野を極めた「ルネサンス・マン(万能の天才)」であり、引退して4人の美女とハーレム生活を送っているという、ボンド以上に浮世離れしたキャラクターです。
本作は、007を茶化しつつも、鮮やかな色彩のアートディレクション、奇想天外な秘密兵器、そしてジェリー・ゴールドスミスによるお洒落すぎる音楽によって、単なるパロディを超えた「スパイ・フィクション(Spy-Fi)」の傑作として、現在でもカルト的な人気を誇っています。
あの『オースティン・パワーズ』の元ネタとしても有名な本作の魅力を、あらすじからガジェット、制作秘話まで徹底的に解説します。
オープニング
YouTubeにて、本作の雰囲気とお洒落なテーマ曲が確認できるオリジナル・トレーラーをご覧ください。
詳細(徹底解説)
あらすじと世界観:気象を操る敵 vs 万能の男
物語の発端は、世界中で発生した異常気象。
世界征服を企む秘密結社「ギャラクシー(GALAXY)」が、気象コントロール装置を使って世界各国を脅迫してきたのです。
各国の情報機関(アメリカのZOWIEなど)のトップたちは、コンピューターによる分析の結果、この危機を救える人物はただ一人、元諜報部員デレク・フリントしかいないという結論に達します。
しかし、当のフリントは組織に縛られることを嫌い、引退して優雅な生活を満喫中。
元上司のクラムデンが説得に訪れますが、フリントは興味を示しません。
ところが、ギャラクシーがフリントの命を狙って暗殺者を送り込んできたことで事態は一変。
「売られた喧嘩は買う」主義のフリントは、独自に調査を開始し、ギャラクシーの本拠地がある孤島へと乗り込みます。
そこで彼を待ち受けていたのは、マッドサイエンティストたちの歪んだ理想郷と、洗脳された美女たちでした。
デレク・フリント:007へのアンチテーゼ
ジェームズ・ボンドが「英国紳士」なら、デレク・フリントは「アメリカン・クール」の極致です。
彼は銃を好みません(空手チョップで十分だから)。
彼は組織の命令を聞きません(組織より賢いから)。
そして、彼はボンドのようにガジェットを支給されません(自分で発明するから)。
この「俺が一番すごい」という圧倒的な自信と、それを裏付けるトンデモ能力の数々(例:心臓の鼓動を止めて仮死状態になり敵を欺くなど)が、痛快な笑いを生み出します。
特筆すべき見どころ:83徳ライターと美術セット
- 83徳ライター:本作に登場するガジェットで最も有名なのが、フリントが所持する金のライターです。一見普通のライターですが、ダイヤルを回すと機能が切り替わり、ワイヤー発射、毒ガス検知、爆弾、カッティングレーザーなど、83通り(!)の使い方ができるという代物。「これ一つあれば十分」というフリントの美学を象徴しています。
- 60年代ポップ・アート:敵のアジトの内装や、ヒロインたちの衣装は、60年代特有のサイケデリックで未来的なデザインに溢れています。特に、悪の組織が「世界をより良くするために(科学者による独裁のために)」活動しているという設定や、清潔感のある白いセットは、当時のSF映画の影響も感じさせます。
制作秘話・トリビア
- 伝説の着信音:劇中、フリントが使う大統領直通のホットライン(腕時計型通信機など)の呼び出し音「ピリリリリ、ピリリリリ……」という独特の電子音。これは非常に有名になり、後に映画『オースティン・パワーズ』で、オースティンの電話の着信音としてそのまま引用されました。
- ブルース・リーの指導:主演のジェームズ・コバーンは、実際にブルース・リーの親友であり弟子でした。劇中で見せる美しい空手チョップや身のこなしは、リー直伝のトレーニングの賜物と言われています。
- ポスターアート:ボブ・ピークによる、フリントがキメポーズを取り、背景に美女たちが描かれたポスターアートは、映画ポスターの傑作として有名です。
キャストとキャラクター紹介
デレク・フリント (Derek Flint)
演:ジェームズ・コバーン (James Coburn) / 吹替:小林清志 ほか
元ZOWIE(世界諜報機構)のエース諜報員。
医者であり、スポーツ万能、芸術にも造詣が深く、イルカと会話もできる超人。
「殺し」よりも「無力化」を好む、余裕綽々の伊達男。
ロイド・クラムデン (Lloyd Cramden)
演:リー・J・コッブ (Lee J. Cobb) / 吹替:富田耕生 ほか
ZOWIEの長官でフリントの元上司。
言うことを聞かないフリントに常に胃を痛めている苦労人。フリントとは喧嘩ばかりしているが、実は信頼し合っている。
ギラ (Gila)
演:ギラ・ゴラン (Gila Golan)
ギャラクシーの幹部である美女。最初はフリントを敵視するが、彼の魅力に惹かれていく。
キャストの代表作品と経歴
- ジェームズ・コバーン (James Coburn)
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『荒野の七人』のナイフ使い役や『大脱走』などで渋い脇役として活躍していましたが、本作で主演スターの地位を確立しました。
後年、『アフリクション』でアカデミー助演男優賞を受賞。タフガイからコミカルな役までこなす名優です。 - リー・J・コッブ (Lee J. Cobb)
- 『十二人の怒れる男』の頑固な陪審員3番や、『波止場』の悪徳ボス役などで知られる重厚な演技派ですが、本作ではコミカルな演技を披露し、新境地を開きました。
まとめ(社会的評価と影響)
『電撃フリントGO!GO作戦』は、公開当時「007の亜流」と見なされることもありましたが、そのあまりの突き抜け方とスタイリッシュさにより、独自のファン層を獲得しました。
特に「スパイ映画におけるキャンプ(Camp=悪趣味スレスレの誇張された様式美)」の元祖として、後世のクリエイターに多大な影響を与えました。
マイク・マイヤーズは『オースティン・パワーズ』を制作する際、007以上にこの『電撃フリント』を参考にしたと公言しています。
理屈抜きに楽しめる60年代の空気感、ジェリー・ゴールドスミスの素晴らしい音楽、そしてジェームズ・コバーンの「ニカッ」と笑う白い歯。
これらを愛でるだけでも十分に価値のある、エンターテインメントの良心が詰まった一作です。
作品関連商品
- DVD/Blu-ray:『電撃フリントGO!GO作戦』『電撃フリント・アタック作戦』を収録したDVDなどが20世紀フォックス(現:20世紀スタジオ)より発売されています。
- サントラ:ジェリー・ゴールドスミスによるサウンドトラックは、ラウンジ・ミュージックやイージー・リスニングの名盤として人気が高く、CDやレコードで再発されています。

