【伝説の第1話】『電撃スパイ作戦』「第三の能力 (The Beginning)」徹底解説!ヒマラヤで生まれた超人スパイの原点と衝撃
エピソード「The Beginning」の概要
1968年に英国で製作され、日本でもカルト的な人気を誇るSFスパイアクション『電撃スパイ作戦(原題:The Champions)』。
その記念すべき第1話「The Beginning(邦題:第三の能力/発端)」は、単なるスパイドラマの枠を超え、主人公たちが「超人」へと生まれ変わるプロセスを描いた極めて重要なエピソードです。
中国奥地での決死の任務、ヒマラヤ山脈への墜落、そして未知の文明との遭遇。なぜ彼らは選ばれ、どのような力を手に入れたのか?
本記事では、シリーズの根幹をなすこのパイロット版エピソードのあらすじ、見どころ、そして当時の視聴者に与えた衝撃について、ネタバレを含みつつ徹底的に解説します。
第1話「The Beginning」の詳細と見どころ
エピソードのあらすじ:任務、そして崩壊
物語は、国際諜報機関「ネメシス」のエージェントであるクレイグ、シャロン、リチャードの3人が、中国奥地の軍事基地に潜入するところから始まります。彼らの任務は、世界を脅かす致死性の細菌兵器のサンプルを奪取すること。
見事にサンプルを盗み出し、飛行機で脱出に成功した彼らですが、中国軍の激しい追撃を受けます。国境を越えようとしたその時、機体は銃撃を受け、制御不能となりヒマラヤ山脈の険しい雪原へと墜落してしまいます。
通常の人間であれば即死、あるいは凍死する絶望的な状況。しかし、彼らは奇跡的に「何者か」によって救出されます。
未知の文明「シャングリラ」との遭遇
意識を取り戻した3人が目にしたのは、雪山の中に隠された高度な文明を持つ謎の都市でした。そこには、数千年にわたり俗世から離れ、精神と肉体を極限まで進化させた人々が暮らしていました。
瀕死の重傷を負っていた3人は、この都市の長老(ラマ僧のような姿をした賢者)による高度な治療を受け、一命を取り留めます。しかし、それは単なる治療ではありませんでした。彼らの肉体、感覚、脳の機能は、常人を遥かに凌駕するレベルへと「改造・進化」させられていたのです。
能力の覚醒と戸惑い
回復し、都市を去って元の世界へ戻る道中、彼らは自分たちの「異変」に気づき始めます。
- 超聴覚: 数キロ先の雪崩の音や、遠く離れた敵兵の話し声がクリアに聞こえる。
- 超怪力: 巨大な岩を軽々と持ち上げ、高い崖を一足飛びで越える跳躍力。
- テレパシー(ESP): 口に出さなくても、3人の間でお互いの思考が手に取るように分かる。
最初は「高地順応のせいか?」と戸惑う彼らでしたが、迫りくる中国軍の捜索隊との戦闘を通じて、自分たちが手に入れた力が本物であることを自覚します。
第1話のクライマックスでは、圧倒的な数で攻めてくる兵士たちを相手に、覚醒したばかりの能力を駆使して戦うカタルシスあふれるアクションが展開されます。
「力」を持つことの苦悩と責任
このエピソードの深みは、単に「強くなって良かった」で終わらない点にあります。
長老は彼らを送り出す際、「君たちに授けた力は、使い方を誤れば世界を破滅させる。平和のために役立てなさい」と諭します。彼らは任務を完了しネメシス本部へ帰還しますが、上司のトレメイン部長にさえ、この能力の秘密を隠し通すことを決意します。
「自分たちはもはや普通の人間ではない」という孤独と、秘密を共有する3人の強い絆(チームワーク)が、この第1話で強固に形成されるのです。
ITC作品としての完成度
『サンダーバード』でおなじみのITCらしく、ミニチュアワークこそ少ないものの、セットの豪華さやロケーションのスケール感は映画並みです。特に、真っ白な雪原でのサバイバルと、古代文明の神秘的なセットの対比は美しく、アレクサンドラ・バステドウ(シャロン役)の美貌が際立つエピソードとしても知られています。
また、日本語吹き替え版では、後のコメディタッチなアドリブ(広川太一郎節など)はまだ控えめで、シリアスで緊迫感のある正統派スパイアクションとして楽しめるのも特徴です。
参考動画

まとめ
第1話「The Beginning」は、スパイアクションに「SF(超能力)」と「東洋神秘主義(シャングリラ伝説)」を融合させた、当時としては画期的な導入部でした。
007のようなガジェットに頼らず、「人間そのものの可能性」を武器にするというコンセプトは、このエピソードで鮮烈に提示されています。
彼らがなぜ強いのか、なぜ3人の結束がこれほど固いのか。そのすべての理由が詰まったこの「原点」を知ることで、以降のエピソードが何倍も面白くなることは間違いありません。
現在視聴可能なメディアで、ぜひこの伝説の始まりを目撃してください。
関連トピック
シャングリラ(理想郷): ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』に登場するチベットの理想郷。本作の未知の文明のモデルとなった概念。
ITCエンターテインメント: 60〜70年代に世界中でヒット作を連発した英国の制作会社。本作のほか『プリズナーNo.6』『謎の円盤UFO』などが有名。
スチュアート・デイモン: 主人公クレイグを演じた俳優。甘いマスクとアクションで人気を博した。
テレパシー: 本作を象徴する能力。言葉を交わさずに連携する演出は、後のチームヒーローものに多大な影響を与えた。
関連資料
DVD『電撃スパイ作戦 コレクターズBOX』: 第1話を含む全話を収録した完全版。
書籍『英国テレビドラマの黄金時代』: ITC作品の制作背景や脚本の秘密を解き明かす研究書。
サントラ『The Champions Theme』: トニー・ハッチ作曲のオープニングテーマは、スパイ音楽の傑作として名高い。

