【密室の恐怖】『電撃スパイ作戦』屈指のサスペンス回「地下金庫脱出 (Get Me Out of Here!)」を完全解説!刻むタイムリミットとテレパシーの絆
エピソード「Get Me Out of Here!」の概要
派手なアクションや国際的な陰謀を描くことが多い『電撃スパイ作戦(The Champions)』の中で、あえて「閉鎖空間」というワンシチュエーションに絞り、極限の緊張感を描いた異色の名作エピソードがあります。それが第16話(日本放送順などにより異なる場合あり)「地下金庫脱出(原題:Get Me Out of Here!)」です。
主人公の紅一点・シャロンが、脱出不可能な巨大地下金庫に閉じ込められ、酸素が尽きるまでの数時間をどう生き延びるか。そして、外にいるクレイグとリチャードは、強固な扉をどう突破するのか。
本記事では、3人の「テレパシー」による絆が最も感動的に描かれたと言われるこのエピソードのあらすじ、見どころ、そして撮影の裏話について徹底解説します。
「地下金庫脱出」の詳細と見どころ
エピソードのあらすじ:罠に落ちたシャロン
物語は、シャロンがある警察署(または政府施設)の新型地下金庫の視察、および重要人物への尋問のために施設を訪れるところから始まります。しかし、内部に潜り込んでいた犯罪組織の策略により、彼女は意識を失った女性医師と共に、最新鋭のセキュリティを誇る巨大金庫の中に閉じ込められてしまいます。
この金庫は、核攻撃にも耐えうるとされるほど堅牢で、外部からの爆破は不可能。さらに悪いことに、換気システムが遮断され、内部の酸素は刻一刻と減っていきます。犯人たちは逃亡し、金庫を開ける暗号を知る者は誰もいないという絶望的な状況が完成します。
最強の「盾」vs ネメシスの「矛」
連絡が途絶えたシャロンを救うため、クレイグとリチャードが現場に急行します。しかし、彼らが誇る「怪力」をもってしても、数トンの厚みを持つ鋼鉄の扉はびくともしません。「超聴覚」で内部の様子を探ろうとしますが、防音仕様の壁がそれを阻みます。
いつもの物理的なパワープレイが通用しない状況下で、彼らは知恵とチームワークを駆使した救出作戦を強いられます。爆薬の専門家を呼ぶか、ドリルで穴を開けるか、あるいは犯人を捕まえてコードを吐かせるか。一分一秒を争うタイムサスペンスが展開されます。
テレパシーが繋ぐ「命のライン」
このエピソードの最大の見どころは、やはり「テレパシー」の描写です。
酸素欠乏により意識が朦朧とし、パニックになりかけるシャロン。暗闇と静寂の恐怖に押しつぶされそうな彼女の脳内に、クレイグとリチャードの声が響きます。
「諦めるな、シャロン」「呼吸を浅くしろ」「僕たちが必ず助ける」
壁越しには声が届かなくても、テレパシーによる励ましだけは届くのです。医師でもあるシャロンは、自らの身体機能をコントロールし、酸素消費を抑えながら、もう一人の生存者の手当ても行います。
普段はクールな3人が、精神の深い部分で繋がり、互いを信頼し合っていることが痛いほど伝わる名シーンの連続です。
アレクサンドラ・バステドウの熱演
シャロンを演じたアレクサンドラ・バステドウにとって、この回は役者としての真価が問われるエピソードでした。
劇中の大半、彼女は狭く暗いセットの中で一人芝居(あるいは意識のない共演者との芝居)を強いられます。美貌のエージェントが、汗と恐怖にまみれ、次第に衰弱していく様子を鬼気迫る演技で表現しました。
彼女の苦悶の表情と、外で必死に作業する男性陣の対比が、視聴者のハラハラ感を極限まで高めます。
クライマックスの救出劇
最終的に、彼らは強引な手段(ニトロなどの爆発物や特殊な重機、あるいは犯人の確保によるコード入手など、複数の要素が絡む)で扉を開けることに成功します。
厚い扉が開き、酸欠で倒れ込むシャロンをクレイグが抱き上げるラストシーンは、多くのファンが胸を撫で下ろした瞬間でした。派手な銃撃戦こそありませんが、「仲間を絶対に死なせない」というネメシスの信念が最も強く表れたエピソードとして、シリーズ屈指の人気を誇ります。
参考動画
まとめ
「地下金庫脱出」は、SF設定(超能力)を「戦闘」ではなく「救助」と「精神的な支え」に使った点で、非常に『電撃スパイ作戦』らしいエピソードです。
もし彼らがただの人間なら、シャロンは孤独の中で絶望していたでしょう。しかし、テレパシーがあったからこそ、希望を捨てずに戦うことができました。
派手な特撮やガジェットがなくても、脚本と演技、そして設定の妙があれば、これほど面白いドラマが作れるという証明でもあります。シャロン推しのファンはもちろん、サスペンス好きにはたまらない一作です。
関連トピック
ボトル・エピソード (Bottle Episode): 予算節約などの理由で、限られたセットと少人数のキャストだけで制作されるエピソードのこと。本作のように密室劇になることが多く、脚本の質が問われる。
アレクサンドラ・バステドウ: 知的で美しいシャロン役を演じ、日本でもブロマイドが売れるほどの人気を博した女優。
広川太一郎&小原乃梨子: 吹き替え版でクレイグとシャロンを演じた声優。この回における緊迫した掛け合いは、吹き替え史に残る名演。
閉所恐怖症: 狭い場所に閉じ込められることへの恐怖。スリラー映画やドラマで頻繁に使われる心理的なギミック。
関連資料
DVD『電撃スパイ作戦 コレクターズBOX』: 全30話を収録。画質リマスター版も存在する。
書籍『ITC SFドラマの世界』: 『サンダーバード』から『電撃スパイ作戦』まで、ITC作品のメカニックやストーリーを解説したムック本。
ファンサイト「The Champions Fan Page」: 海外の熱心なファンによるエピソードガイドやロケ地情報(英語)。

