概要
2017年にソニー・ピクチャーズ アニメーションによって制作された3Dコンピューターアニメーション映画『絵文字の国のジーン』(原題:The Emoji Movie)。
誰もが日常的に使っているスマートフォンの「絵文字」たちが、実はスマホの中で自我を持って暮らしているという斬新な設定で描かれたファンタジー・コメディ作品です。
監督・原案・脚本を務めたのは、『リロ&スティッチ2』などで知られるトニー・レオンディス。
世界中で興行収入2億1700万ドルを超える大ヒットを記録し、商業的には大成功を収めました。
しかし、その輝かしい興行成績とは裏腹に、あからさまな企業広告(プロダクトプレイスメント)の多用や、オリジナリティに欠けるストーリー展開が映画評論家から猛烈なバッシングを浴びたことでも有名です。
辛口批評サイト「Rotten Tomatoes」では一時的に驚異の「0%」を叩き出し、最低映画を決める「第38回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)」では、アニメーション映画として史上初となる最低作品賞を含む主要4部門を独占するという不名誉な伝説を残しました。
一方で、ここ日本では全く別の角度から本作がカルト的な注目を集めています。
それは、櫻井孝宏、杉田智和、子安武人、中田譲治、三木眞一郎といった、アニメ界の最前線で活躍する超大物声優たちが日本語吹き替えキャストとして集結している点です。
「なぜこの映画にこれほどの豪華声優陣を起用したのか?」とSNSでも大きな話題を呼びました。
この記事では、エンタメ情報サイト「tvtomovie.com」が『絵文字の国のジーン』のあらすじや見どころ、世界的酷評の理由、そして日本のファン必見の吹き替えキャストの魅力までを徹底的に深掘りして解説します。
一度観れば、あなたのスマホの中の絵文字たちが全く違って見えるかもしれません。
予告編
詳細(徹底解説)
あらすじと世界観
物語の舞台となるのは、高校生の少年アレックスのスマートフォンの中にある秘密の都市「テキストポリス」。
ここには多種多様な絵文字たちが住んでおり、スマートフォンの持ち主であるユーザーからメッセージアプリで「選択される」ことを夢見て、日々出番を待っています。
この世界における絶対のルールは、「割り当てられたたった一つの表情(役割)を常に保ち続けること」です。
しかし、本作の主人公であるジーンは、「ふーん(無関心)」という表情を割り当てられた絵文字でありながら、生まれつき感情が豊かで、様々な表情を作れてしまうという「不具合」を抱えていました。
ある日、ついにアレックスから初めて選択されるチャンスが巡ってきたジーンですが、緊張のあまりパニックに陥り、変な顔のまま送信されてしまいます。
この大失敗により、テキストポリスの独裁者である「スマイラー」からシステムのバグとして命を狙われることになったジーン。
彼は自分を「普通の絵文字」に修正してもらうべく、クラウド上のソースコードを目指して、仲間たちとともにスマホ内の様々なアプリを巡る壮大な冒険へと旅立ちます。
シーズン/章ごとの展開
本作の物語は、大きく3つの章に分けて楽しむことができます。
第1章は、テキストポリスの厳格なルールの提示と、主人公ジーンの失敗、そして逃亡の始まりです。
自分の個性が社会から受け入れられず、「不具合」として削除(デリート)の対象となってしまったジーンの悲哀と、かつては人気者だったお調子者の絵文字「ハイタッチ」との出会いが描かれます。
第2章は、ハッカー絵文字の「ジェイル・ブレイク」を仲間に加えた3人組による、スマートフォン内のアプリ巡りの旅です。
「Candy Crush(キャンディークラッシュ)」「Just Dance(ジャストダンス)」「Spotify(スポティファイ)」といった実在の有名アプリの世界を次々と渡り歩きながら、迫り来るアンチウイルスソフトの脅威から逃れるアクション・アドベンチャーが展開されます。
最終章となる第3章では、彼らのトラブルが原因でアレックスがスマホの初期化(全データ削除)を決意してしまい、テキストポリスが消滅の危機に瀕します。
ジーンは自分を修正するのか、それともありのままの自分を受け入れて世界を救うのか、自己肯定と多様性の尊重というテーマに直面するクライマックスへと突き進んでいきます。
特筆すべき見どころ
本作の最大の見どころであり、同時に最大の議論を呼んだポイントが、実在する人気アプリがそのまま映画の舞台として登場する大胆な設定です。
例えば、キャンディークラッシュの世界ではキャラクターたちがパズルに巻き込まれて絶体絶命のピンチに陥り、Spotifyのアプリ内では音楽のストリーミングの波に乗って移動するなど、誰もが知るスマートフォンの機能が視覚的なアトラクションとして見事に映像化されています。
また、日本独自の楽しみ方として絶対に外せないのが、豪華すぎる日本語吹き替え版の存在です。
特に、パトリック・スチュワート(日本語吹替:子安武人)が演じる「うんちパパ」というキャラクターは、気品あふれる蝶ネクタイ姿のうんちという出落ち感満載の設定にもかかわらず、ベテラン声優が極めて真面目に、かつイケボでうんち絡みのダジャレを連発するという、シュール極まりないギャグシーンを提供してくれます。
本国でどれだけ酷評されようとも、日本の声優陣の熱演と振り切ったコミカルな演技を聴くだけで、一本のエンターテインメントとして十分に元が取れる仕上がりになっています。
制作秘話・トリビア
本作の制作にあたっては、ワーナー・ブラザースやパラマウント・ピクチャーズなど、ハリウッドの大手映画スタジオによる熾烈な入札競争(争奪戦)が繰り広げられたという嘘のような本当の逸話があります。
最終的にソニー・ピクチャーズ アニメーションが権利を獲得しましたが、公開されるや否や、「単なる巨大なアプリのCM映画」「ピクサーの『インサイド・ヘッド』やディズニーの『シュガー・ラッシュ』の表面的なパクリ」と批評家から総スカンを食らうことになりました。
その結果、第38回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)において、「最低作品賞」「最低監督賞」「最低脚本賞」「最低スクリーンコンボ賞」の4冠を達成。
長きにわたるラジー賞の歴史において、アニメーション作品が最低作品賞を受賞するのは史上初の出来事であり、ある意味で映画史に永遠にその名を刻む伝説の作品となってしまいました。
キャストとキャラクター紹介
- ジーン:T.J.ミラー / 櫻井孝宏
- 本作の主人公で、「ふーん(無関心)」顔の役割を与えられた絵文字です。
- 一つの表情しか作ってはいけない世界において、感情が豊かすぎるために周囲から浮いてしまい、自分を「普通」に直したいと願っています。
- 冒険を通して、多様な感情を持つ自分自身の「個性」こそが武器であることに気づき、成長していく姿が描かれます。
- ハイタッチ:ジェームズ・コーデン / 杉田智和
- 手のひらの形をした絵文字で、かつては頻繁に使われる人気者しか入れない「VIPラウンジ」の常連でした。
- 今ではすっかり使われなくなり、再び栄光を取り戻すためにジーンの冒険に便乗する、お調子者のムードメーカーです。
- 楽天的な性格ですが、時に核心を突く発言でジーンを助け、熱い友情を見せてくれます。
- ジェイル・ブレイク:アンナ・ファリス / 清水はる香
- 海賊版アプリが集まるスラム街に住む、凄腕のハッカー絵文字です。
- クールで独立心旺盛な性格ですが、実は彼女には誰も知らない「本当の姿(お姫様絵文字)」が隠されています。
- 女性は特定の役割しか与えられないという古いシステムに反発し、自由を求めてソースコードを目指す力強いキャラクターです。
- スマイラー:マーヤ・ルドルフ / 愛河里花子
- テキストポリスを牛耳るシステムの管理者であり、初代絵文字の生き残りです。
- 常に満面の笑みを浮かべていますが、その裏ではシステム維持のためなら一切の容赦をしない冷酷な独裁者として君臨しています。
- 不具合を起こしたジーンを削除するため、無数のアンチウイルスボットを差し向ける本作のメインヴィラン(悪役)です。
- うんちパパ:パトリック・スチュワート / 子安武人
- 見た目は完全に「うんち」ですが、蝶ネクタイを締め、英国紳士のような気品と威厳に満ちた振る舞いをするキャラクターです。
- 出番こそ多くありませんが、登場するたびに排泄物にちなんだ上品なダジャレを披露し、強烈なインパクトを残します。
キャストの代表作品と経歴
- 櫻井孝宏(ジーン役)
- 『ファイナルファンタジーVII』のクラウド・ストライフ役や、『鬼滅の刃』の冨岡義勇役など、クールで影のある美青年から熱血漢まで、幅広い役柄を演じ分ける日本を代表するトップ声優です。
- 本作では、常に様々な表情に翻弄され、パニックに陥りながらも一生懸命に自分の居場所を探すジーンの等身大な姿を見事に好演しています。
- 櫻井氏の端正な声と、コミカルで不器用な絵文字というギャップが、日本版ならではの大きな魅力となっています。
- 杉田智和(ハイタッチ役)
- 『銀魂』の坂田銀時役や、『涼宮ハルヒの憂鬱』のキョン役などで知られ、独特のテンポ感と抜群のギャグセンスに定評のある実力派声優です。
- 本作のハイタッチ役では、原語版の持つハイテンションなノリを完全に自分のものにし、随所に杉田氏特有のアドリブを思わせる軽妙なセリフ回しを炸裂させています。
- 櫻井孝宏氏との掛け合いは息がぴったりで、二人の名コンビぶりを楽しむためだけに本作を観る価値があると言っても過言ではありません。
- 子安武人(うんちパパ役)
- 『ジョジョの奇妙な冒険』のディオ・ブランドー役や、『進撃の巨人』のジーク・イェーガー役など、カリスマ性のある悪役や狂気的なキャラクターで圧倒的な存在感を放つレジェンド声優です。
- そんな彼が、まさかの「うんち」役に抜擢されたことは公開当時大きなニュースとなりました。
- 子安氏のあの深く響くセクシーな低音ボイスで、大真面目にうんちジョークを語るという異常なシュールさは、吹き替え版の伝説として語り継がれています。
まとめ(社会的評価と影響)
映画『絵文字の国のジーン』は、アニメーションの歴史において「最も評価が二分した(あるいは一方的に酷評された)」特異な作品として記録されています。
Rotten Tomatoesの批評家スコアは驚異の6%という目を疑うような低評価であり、「魂のない巨大企業のカタログ」「子どもたちへの悪影響」といった辛辣なレビューが飛び交いました。
ラジー賞での史上初となるアニメ作品の最低作品賞受賞は、この映画がいかに「批評家の怒り」を買ったかを象徴する出来事です。
その主な理由は、スマートフォンのアプリ文化を称賛するあまり、物語の展開がアプリの宣伝(プロダクトプレイスメント)に都合よく作られており、自己肯定感という本来のメッセージが商業主義に飲み込まれてしまっていると捉えられたためです。
しかし、大衆の反応は批評家の怒りとは異なり、全世界で2億ドル以上の興行収入を叩き出すという大ヒットを記録しました。
カラフルでポップな映像美、子どもたちに馴染みのある絵文字が動き回る楽しさ、そしてテンポの良いギャグは、ファミリー層の娯楽作品としてしっかりと需要を満たしていたのです。
さらに日本では、先述した櫻井孝宏や杉田智和をはじめとする「無駄に豪華すぎる(褒め言葉)」吹き替え声優陣の怪演により、B級映画やバカ映画を愛する層からカルト的な支持を集めました。
「クソ映画だと聞いて観たが、吹き替え版のパワーで普通に笑ってしまった」という好意的な意見もSNSで多数見受けられます。
芸術性や深みを求める批評家からは酷評されながらも、エンターテインメントとしての割り切り方や、声優陣の熱演によって独自の立ち位置を確立した本作は、ある意味で「愛すべきトンデモ映画」として、今後も長く語り継がれていくことでしょう。
作品関連商品
- 『絵文字の国のジーン』 ブルーレイ&DVDセット
- 映画本編を高画質で収録したディスクパッケージです。
- 日本語吹き替え版の音声はもちろん、特典映像としてメイキング映像や、監督・スタッフによる音声解説、さらにはボツになった未公開シーンなども収録されており、映画の裏側を知ることができます。
- The Emoji Movie (Original Motion Picture Soundtrack)
- パトリック・ドイルが音楽を手がけたオリジナル・サウンドトラックです。
- テキストポリスの賑やかな日常を表現したポップな電子音から、冒険を彩る壮大なオーケストラサウンドまで、映画の世界観を聴覚から楽しめる一枚になっています。
- 絵文字クッション&ぬいぐるみ
- 映画の公開に合わせて、ジーンやハイタッチ、うんちパパなどのキャラクターを模した公式のぬいぐるみやクッションが多数発売されました。
- もともとが世界共通の「絵文字」であるため、映画グッズでありながらインテリアやジョークグッズとしても使いやすく、特に「うんちパパ」のぬいぐるみはコアなファンからの人気を集めています。
