【逃亡者 うんちく】最終回視聴率は72%!リチャード・キンブルのモデルとジェラード警部の執念を徹底解説
『逃亡者』の概要
『逃亡者』(原題: The Fugitive)は、1963年から1967年にかけてアメリカで放送された伝説的なテレビドラマです。
妻殺しの濡れ衣を着せられ、死刑判決を受けた医師リチャード・キンブル(演:デヴィッド・ジャンセン)が、護送中の事故に乗じて脱走。
彼が目撃した真犯人である「片腕の男」を探し出すため、そして自らの無実を証明するために、全米を放浪する逃亡劇を描いています。
一方、彼を執拗に追う冷徹なジェラード警部との緊迫した駆け引きが、4シーズン(全120話)にわたって視聴者を釘付けにしました。
日本でも大ヒットし、後の多くのドラマや映画に多大な影響を与えた本作には、数多くの興味深い「うんちく」が隠されています。
『逃亡者』の詳細うんちく
最大のうんちく:最終回は「テレビ史上最高」の視聴率を記録
『逃亡者』のうんちくとして最も有名なのが、最終回(第120話「裁きの日」)が叩き出した驚異的な視聴率です。
1967年8月29日に放送されたこの最終回は、アメリカのテレビ史上、歴史的な数字を記録しました。
その視聴率は72%(毎分平均視聴率)、占有率(放送時間内にテレビをつけていた世帯のうち、この番組を見ていた割合)は78%という、信じられないほどの数字でした。
これは、1980年に放送された『ダラス』(「誰がJ.R.を撃ったか?」の犯人判明回)に破られるまで、実に13年間、アメリカのテレビ番組(フィクション部門)における史上最高視聴率の記録として君臨し続けました。
日本でもこの最終回が放送された時間帯は、「街から人が消えた」と言われるほどの社会現象となり、日本での視聴率も31.8%(後編)という高い数字を記録しました。
キンブルのモデルは「実在の医師」だった
リチャード・キンブルの物語は、完全なフィクションではありません。
その着想源となったのは、1954年にアメリカで実際に起きた「サム・シェパード事件」です。
オハイオ州の医師であったサム・シェパードの妻が自宅で惨殺され、サムは容疑者として逮捕されました。
彼は一貫して「毛むくじゃらの男(bushy-haired man)」が真犯人だと無実を主張しましたが、裁判では有罪判決を受けます。
しかし、長期にわたる法廷闘争と再審の末、1966年になってついに逆転無罪を勝ち取りました。
医師であること、妻殺しの容疑、そして謎の侵入者を主張する点など、ドラマの設定はこの実在の事件から強いインスピレーションを受けています。
キンブルの「職業」が逃亡の鍵
キンブルは単なる逃亡者ではなく、「有能な小児科医」でした。
彼は名前を変え、各地の安宿や農場で日雇い労働をしながら逃亡を続けます。
しかし、彼は医師としての良心を捨てることができません。
逃亡先で病気や怪我で苦しむ人々に出会うと、自らの身元が割れる危険を冒してまで、医療行為を行ってしまうエピソードが数多く描かれます。
その誠実な人柄と医師としての腕前によって、彼を信じ、匿ってくれる協力者が現れることが、彼が4年間も捕まらずに逃亡を続けられた大きな要因でした。
しかし皮肉なことに、その「善行」がジェラード警部に新たな手がかりを与えてしまうことも少なくありませんでした。
執拗な追跡者「ジェラード警部」の人物像
キンブルを追い詰めるフィリップ・ジェラード警部(演:バリー・モース)は、単なる悪役ではありません。
彼はキンブル個人に憎しみを抱いているわけではなく、「法と正義」の執行者として、逃亡した死刑囚を逮捕するという職務に異常なまでの執念を燃やす、冷徹で有能なプロフェッショナルです。
彼はキンブルが有罪であると固く信じており、その信念が彼の原動力となっています。
ドラマはキンブルの視点だけでなく、ジェラード警部の視点からも描かれることがあり、二人の知力と体力の限りを尽くした「追う者」と「追われる者」の対決が、物語の最大の魅力となっています。
「片腕の男」を探すという明確なゴール
本作が他の逃亡劇と一線を画したのは、キンブルの逃亡が「当てもない逃避」ではなかった点です。
彼には「片腕の男(The One-Armed Man)」(演:ビル・ラッチ)という、明確に探すべき真犯人がいました。
キンブルは妻の殺害現場から逃げ去るこの男を目撃しており、彼を見つけ出すことだけが、自らの無実を証明する唯一の道でした。
全120話を通じて、この「片腕の男」の探索が縦軸となり、視聴者の興味を引きつけ続けました。
参考動画
まとめ
『逃亡者』は、1960年代に制作されたとは思えないほどの緊迫感と、重厚な人間ドラマを兼ね備えた不朽の名作です。
無実の罪を背負った男の孤独な戦いと、彼を追う執念の捜査官という対立構造は、その後のエンターテイメント作品の「原型」の一つとなりました。
最終回でアメリカ国民の4分の3近くがテレビの前に集結したという事実は、この物語がいかに人々の心を掴んで離さなかったかを雄弁に物語っています。
1993年にハリソン・フォード主演で大ヒットした映画版も素晴らしい作品ですが、デヴィッド・ジャンセン演じるオリジナル版キンブルの、陰と苦悩に満ちた4年間の逃亡の軌跡は、今見ても色褪せない魅力に満ちています。
関連トピック
映画版『逃亡者』(1993年): ハリソン・フォードがキンブル役、トミー・リー・ジョーンズがジェラード(映画版ではサミュエル・ジェラード連邦保安官)役を演じ、世界的に大ヒットしました。トミー・リー・ジョーンズは本作でアカデミー助演男優賞を受賞しています。
サム・シェパード事件: ドラマのモデルとなった実在の殺人事件。この事件自体も多くのドキュメンタリーや書籍で取り上げられています。
デヴィッド・ジャンセン: リチャード・キンブル役を演じ、一躍国際的スターとなった俳優。その憂いを帯びた表情は、キンブルの孤独なイメージと完璧に合致していました。
バリー・モース: ジェラード警部を演じた俳優。彼の知的で冷徹な演技が、ドラマの緊張感を極限まで高めました。
関連資料
『逃亡者』コンプリートDVD-BOX: オリジナルテレビシリーズ全120話を収録したボックスセット。キンブルの4年間にわたる全記録を追体験できます。
映画『逃亡者』(1993年) [Blu-ray/DVD]: ハリソン・フォードとトミー・リー・ジョーンズが共演した劇場版。テレビ版とは異なる、スリリングなアクション大作として楽しめます。
映画『追跡者』(1998年) [Blu-ray/DVD]: 映画版のスピンオフ作品。トミー・リー・ジョーンズ演じるジェラード連邦保安官を主人公に据えた作品です。