【グリーンホーネット うんちく】ブルース・リーはなぜ相棒だった?香港での主役交代と『ローン・レンジャー』との意外な関係
『グリーン・ホーネット』の概要
『グリーン・ホーネット』(原題: The Green Hornet)は、1966年から1967年にかけてアメリカで放送された、テレビドラマシリーズです。
表向きは新聞社「デイリー・センチネル」の若き社長ブリット・リードが、夜になると緑の仮面をつけた謎のヒーロー「グリーン・ホーネット」となり、法の手が及ばない悪と戦う物語です。
彼には武術の達人である運転手「カトー」という強力な相棒がいました。
日本では、このカトー役を演じたのが、後に伝説のアクションスターとなるブルース・リーであったことから、爆発的な人気を獲得しました。
わずか1シーズン(全26話)で打ち切りとなったものの、テレビ史に強烈なインパクトを残した本作の「うんちく」を徹底解説します。
『グリーン・ホーネット』の詳細うんちく
最大のうんちく:ブルース・リーのハリウッド本格デビュー
本作に関する最大の「うんちく」は、何と言っても「カトー」役にブルース・リーが抜擢されたことです。
当時、ブルース・リーはアメリカで独自の武術(ジークンドー)を指導していましたが、俳優としてはまだ無名に近い存在でした。
彼が武術大会で行ったデモンストレーションがプロデューサーの目に留まり、カトー役に大抜擢されました。
本作は、彼にとってハリウッド(アメリカのテレビ界)における本格的なデビュー作となりました。
カトーは単なる運転手や「相棒(サイドキック)」ではなく、グリーン・ホーネットが苦戦する場面で、その驚異的な格闘術によって敵を圧倒する「切り札」として描かれました。
彼の存在がなければ、本作が日本でこれほどの人気を得ることはなかったでしょう。
香港では『カトー』が主役だった
アメリカ本国での主役は、あくまでグリーン・ホーネット(演:ヴァン・ウィリアムズ)でした。
しかし、ブルース・リーの故郷である香港では、事情が全く異なりました。
本作は香港で『青蜂』(The Kato Show)というタイトルで放送され、編集もブルース・リーが主役になるように変更されました。
香港の視聴者は、ハリウッドのテレビ番組で白人ヒーローと対等、あるいはそれ以上に活躍する同胞の姿に熱狂しました。
この香港での大成功が、彼のその後の凱旋帰国と、映画『ドラゴン危機一発』での主演デビューへと繋がっていきます。
アクションが早すぎて「スロー再生」された?
ブルース・リーのアクションに関する有名な「うんちく」です。
彼の蹴りやヌンチャクのスピードは、当時のアメリカの撮影技術や視聴者の目には「早すぎる」と判断されました。
カメラが彼の動きを捉えきれなかったり、何が起こったか分からないと視聴者が混乱したりすることを恐れた制作陣は、ブルース・リーに対し「もっとゆっくり動いてくれ」と指示したと言われています。
また、彼のアクションシーンの一部は、意図的にスローモーションで再生されたという逸話も残っており、彼の身体能力がいかに人間離れしていたかを物語っています。
『怪鳥人間バットマン』との共演
『グリーン・ホーネット』と、当時絶大な人気を誇った『怪鳥人間バットマン』(アダム・ウェスト版)は、同じプロデューサー(ウィリアム・ドジャー)によって制作されていました。
そのため、両作品は同じ世界観を共有しており、クロスオーバー(ゲスト出演)が実現しました。
『バットマン』のシーズン2(第51話・第52話)に、グリーン・ホーネットとカトーがゴッサム・シティを訪れ、バットマン&ロビンと共演するエピソードが放送されました。
コメディタッチで明るい『バットマン』に対し、シリアスでハードボイルドな『グリーン・ホーネット』という、作風の違いが際立つユニークな共演となりました。
愛車「ブラック・ビューティー」号
バットマンにバットモービルがあるように、グリーン・ホーネットにも「ブラック・ビューティー」号というスーパーカーが存在します。
これは、1966年型のクライスラー・インペリアルをベースに、著名なカスタムビルダーであるディーン・ジェフリーズが改造を手掛けたハイテクマシンです。
緑色のヘッドライト、ミサイル、煙幕、そして「スキャナー」と呼ばれる小型の飛行偵察ドローンなど、当時の子供たちが夢中になるガジェットが満載でした。
超マニアックうんちく:『ローン・レンジャー』との親戚関係
『グリーン・ホーネット』は、もともと1930年代に始まったラジオドラマが原作です。
そして、同じくラジオドラマから生まれた伝説の西部劇ヒーローに『ローン・レンジャー』がいます。
実は、この二人のヒーローには血縁関係があるという「裏設定」が存在します。
グリーン・ホーネット(ブリット・リード)の父親は、『ローン・レンジャー』(ジョン・リード)の甥にあたります。
つまり、グリーン・ホーネットは、ローン・レンジャーの大甥(甥の息子)という、非常にマニアックな親戚関係が設定されているのです。
参考動画
まとめ
『グリーン・ホーネット』は、アメリカ本国では『バットマン』ほどのヒットには恵まれず、わずか1シーズンで終了しました。
しかし、そのシリアスな作風と、ブルース・リーという不世出のスターが放った本物の輝きは、短命に終わったことを忘れさせるほどの強烈なインパクトを残しました。
もし本作がなければ、私たちが知る「ブルース・リー」の伝説の始まりは、大きく変わっていたかもしれません。
今見ても色褪せない、カトーの電光石火のアクションは必見です。
関連トピック
ブルース・リー: カトー役を演じ、本作をきっかけに世界的なスターダムへの階段を駆け上がった伝説のアクションスター。
『怪鳥人間バットマン』 (1966年版): 同じプロデューサーが手掛け、クロスオーバー(ゲスト共演)を果たした作品。
ブラック・ビューティー: グリーン・ホーネットの愛車。バットモービルと並び称される60年代のスーパーカー。
『ローン・レンジャー』: ラジオドラマ時代からのヒーロー。グリーン・ホーネットとは親戚関係にあるという設定が存在します。
映画『グリーン・ホーネット』 (2011年): セス・ローゲン製作・主演、ジェイ・チョウがカトー役を演じたリメイク映画版。
関連資料
グリーン・ホーネット TVシリーズ [Blu-ray/DVD]: 全26話を収録したボックスセット。ブルース・リーの若き日の勇姿を高画質で確認できます。
ブラック・ビューティー [ミニカー/プラモデル]: Corgi(コーギー)社製のダイキャストモデルや、プラモデルメーカー各社から発売された模型は、当時大人気となりました。
ブルース・リー関連書籍: 彼の伝記や写真集には、キャリアの転機となった『グリーン・ホーネット』時代の貴重な資料が多数掲載されています。