【決定版】ドラマ『超人ハルク』の泣ける傑作エピソード厳選!「怒り」よりも「哀しみ」が胸を打つ、珠玉の人間ドラマを徹底解説
ドラマ『超人ハルク』の概要
1977年から1982年にかけてアメリカで放送され、日本でも絶大な人気を博したテレビドラマ『超人ハルク』(原題:The Incredible Hulk)。
マーベル・コミックのヒーローを実写化した作品ですが、近年のCGを駆使したド派手なMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)版とは一線を画す、哀愁漂う「逃亡劇」としての側面が強い作品です。
主演は名優ビル・ビクスビー(デビッド・バナー役)と、伝説のボディビルダー、ルー・フェリグノ(ハルク役)。
変身してしまう恐怖と闘いながら、治療法を求めてアメリカ各地を放浪するデビッドの姿は、単なるヒーローアクションの枠を超え、孤独と人間の優しさを描いたヒューマンドラマの傑作として、今なお多くのファンの心に刻まれています。
「怒らせないでくれ(Don’t make me angry. You wouldn’t like me when I’m angry.)」という名台詞や、エンディングで流れるピアノ曲「The Lonely Man」の切ない旋律は、昭和世代の涙腺を刺激してやみません。
本記事では、全5シーズン・80話以上の中から、特に評価が高く、ファンならずとも必見の「神エピソード」を厳選して紹介。
なぜこのドラマが「史上最も泣けるアメコミ実写化」と呼ばれるのか、その魅力の深淵に迫ります。
ドラマ『超人ハルク』の詳細
ドラマ版『超人ハルク』の独自性と魅力
エピソード紹介に入る前に、本作の特殊な立ち位置を理解しておく必要があります。
原作コミックでは主人公の名は「ブルース・バナー」ですが、ドラマ版では「デビッド・バナー」に変更されています。
また、ハルクの誕生原因も放射能爆弾ではなく、デビッド自身が行った人体実験によるオーバードーズ(過剰摂取)とされるなど、リアリティを重視した設定が施されました。
物語の基本フォーマットは、逃亡中のデビッドがある町を訪れ、そこでトラブルに巻き込まれた人々を助け、最後にはハルクに変身して悪を倒すものの、正体がバレることを恐れて再び独り旅立つ……という『逃亡者』や日本の『水戸黄門』にも通じるロードムービー形式です。
この「一話完結の悲哀」こそが、本作の真骨頂です。
必見!心揺さぶる傑作エピソード選
1. パイロット版「超人ハルク(The Incredible Hulk)」
すべての始まりを描いた記念すべきエピソードです。
妻を自動車事故で亡くし、自分に妻を救う力がなかったことに絶望した科学者デビッド・バナーが、火事場の馬鹿力を引き出す研究に没頭し、悲劇的な変身能力を得てしまう過程が描かれます。
ルー・フェリグノ演じるハルクが初めて登場した時の衝撃、そして雨の中で少女と出会うシーンの美しさは、シリーズの方向性を決定づけました。
「モンスターフランケンシュタイン」的な悲劇の怪物としてのハルク像がここで確立されています。
2. シーズン2 第1話「サメの海・嵐の夜(Married)」
ファンの間で「シリーズ最高傑作」との呼び声が高い、涙なしでは見られないエピソードです。
治療法を求めてハワイへ渡ったデビッドは、精神科医のキャロライン(演:マリエット・ハートレイ)と出会います。
彼女は不治の病により余命わずかでしたが、二人は深く愛し合い、ついに結婚式を挙げます。
デビッドが安息の地を見つけ、変身の呪縛から解放されるかに見えた瞬間、あまりにも残酷な運命が二人を引き裂きます。
ハリケーンが迫る中での悲劇的な結末は、デビッド・バナーという男が背負った「孤独」の深さを決定的なものにしました。
キャロライン役のマリエット・ハートレイは、この演技でエミー賞を受賞しています。
3. シーズン4 第12・13話「ハルク・ライバル出現(The First)」
デビッド以前にハルクに変身していた男がいた、という衝撃の設定が登場する前後編です。
治療法の手がかりを掴んだデビッドは、30年前に同様の実験を行っていたデル・フライという男の存在を知ります。
しかし、フライはデビッドとは異なり、ハルクの力を悪用しようとする邪悪な心を持っていました。
「善のハルク(デビッド)」対「悪のハルク」という構図は、後の映画『インクレディブル・ハルク』(2008)のアボミネーション戦の原点とも言えます。
自分と同じ苦しみを持つはずの理解者が、最大の敵になってしまう絶望感が描かれています。
4. シーズン4 第1・2話「謎の巨大隕石(Prometheus)」
変身の途中で状態が固定されてしまうという、特殊な状況を描いたサスペンスフルなエピソード。
隕石の調査中に事故に遭ったデビッドは、ハルクに変身しようとしますが、隕石の特殊な放射線の影響で「半分人間、半分ハルク」の中途半端な状態で変身が止まってしまいます。
知能はハルク(幼児並み)だが、力は完全ではないという危機的状況の中、軍隊に包囲されるスリルは圧巻。
ルー・フェリグノの演技力が光る一作であり、特殊メイクの技術的な挑戦も見どころです。
5. シーズン1 第11話「死の実験室(Earthquakes Happen)」
デビッドの正体を執拗に追う新聞記者ジャック・マクギーとの関係性が深く描かれるエピソード。
原子力発電所の欠陥を暴こうとして捕まったデビッドが、偶然居合わせたマクギーと共に地下に閉じ込められてしまいます。
普段は敵対する二人ですが、生き残るために一時的に協力し合う姿は胸を熱くします。
マクギーはハルクをモンスターとして追っていますが、デビッド・バナーという人間に対しては(死んだと思っているため)ある種の敬意を持っているという、複雑なライバル関係が垣間見える名編です。
「ロンリー・マン」が象徴するもの
ドラマのエンディングでは、常にデビッドがヒッチハイクをし、寂しげなピアノ曲「The Lonely Man Theme」をバックに去っていくシーンで終わります。
彼は決して定住できず、愛する人と共に生きることも許されません。
しかし、その背中は「それでも生き続ける」という人間の尊厳を語っています。
ビル・ビクスビーの哀愁漂う表情演技は、言葉以上にデビッドの苦悩を雄弁に物語っており、派手なアクションがなくとも視聴者を惹きつける最大の要因となっていました。
ドラマ『超人ハルク』の参考動画
ドラマ『超人ハルク』のまとめ
ドラマ版『超人ハルク』は、アメコミ作品でありながら、その本質は極めて上質な「人間ドラマ」です。
CGのない時代、緑色のドーランを塗った生身の人間が演じたハルクには、作り物ではない「肉体の説得力」と、言葉を話さないからこその「純粋な悲しみ」が宿っていました。
ビル・ビクスビーは私生活でも悲劇(息子の死や自身の病)に見舞われましたが、その人生経験がデビッド・バナーという役柄に深みを与えていたのかもしれません。
現在、Disney+などでMCU作品としてのハルクしか知らない世代にこそ、この「元祖」を見ていただきたい。
そこには、スーパーパワーを持つことの代償と、それでも失われない人間愛が描かれています。
ハンカチを用意して、孤独な男の旅路を見届けてください。
関連トピック
ビル・ビクスビー(デビッド・バナー役の名優)
知的な演技と哀愁を帯びた表情でデビッドを演じきった名優。本作の監督も務めている。
ルー・フェリグノ(ハルクを演じたボディビル界のレジェンド)
アーノルド・シュワルツェネッガーのライバルとしても知られる、圧倒的な筋肉美を持つボディビルダー。
ジャック・マクギー(執念の新聞記者)
デビッドが生きていることを知らず、ハルクを殺人犯として追い続ける記者。物語のサスペンスを生む重要人物。
シー・ハルク(ドラマ版のスピンオフ映画にも登場)
ハルクの女性版。ドラマシリーズ終了後のテレビ映画『超人ハルクの死』などで共演している。
The Lonely Man Theme(ジョー・ハーネル作曲の名曲)
エンディングで流れるピアノ曲。ドラマの代名詞とも言える、美しくも悲しい旋律。
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)
現在のアベンジャーズを中心とした映画シリーズ。マーク・ラファロ演じるハルクとの違いを楽しむのも一興。
関連資料
『超人ハルク』コンプリートDVD-BOX
全シーズンとTVムービーを網羅した映像ソフト。ファン必携のアイテム。
『超人ハルク オリジナル・サウンドトラック』
「The Lonely Man Theme」を含む劇伴音楽を収録。
『アメリカン・コミック映画の歴史』(書籍)
アメコミ実写化の変遷における本作の重要性が語られている。
ルー・フェリグノ自伝
ハルク役の裏話や、自身の難聴との戦いについて綴った一冊。
マーベル・アンソロジー(コミック邦訳版)
オリジナルのハルクの物語を読むことで、ドラマ版のアレンジの妙を知ることができる。
