【ラットパトロール うんちく】主役はジープ?『コンバット!』との違いと「砂漠のネズミ」たちの撮影秘話
『ラットパトロール』の概要
『ラットパトロール』(原題: The Rat Patrol)は、1966年から1968年にかけてアメリカで放送された、第二次世界大戦の北アフリカ戦線を舞台にした戦争アクションドラマです。
「砂漠のネズミ」の名の通り、神出鬼没の連合軍特殊部隊(米兵3名、英兵1名)が、機関銃を搭載したジープ2台を駆ってドイツアフリカ軍団を翻弄する活躍を描きました。
日本では『コンバット!』に続く人気の戦争ドラマとなり、特にそのスピーディーなジープのアクションとプラモデルで、当時の子供たちの心を鷲掴みにしました。
全2シーズン(全58話)と短命ながらも、強烈な印象を残した本作の「うんちく」を紹介します。
『ラットパトロール』の詳細うんちく
北アフリカ戦線、しかし撮影は「スペイン」
本作の舞台はエジプトやリビアといった北アフリカの砂漠地帯ですが、実際のロケ地はアメリカではありませんでした。
シーズン1の撮影は、主にスペイン南部のアルメリア地方にある砂漠で行われました。
この地は、当時『荒野の用心棒』などの「マカロニ・ウエスタン」の撮影地として有名だった場所です。
乾いた大地と荒涼とした岩山は、北アフリカの雰囲気を出すのに最適でした。
しかし、シーズン2からは制作費の都合でアメリカ国内(アリゾナ州やカリフォルニア州)での撮影に戻ったと言われています。
主役は「ジープ」とタミヤのプラモデル
『コンバット!』が歩兵の視点でヨーロッパの湿った戦場を描いたのに対し、『ラットパトロール』は砂漠を高速で駆け抜ける「機動戦」が魅力でした。
その主役とも言えるのが、ブローニングM2重機関銃を後部に搭載した2台のジープです。
砂丘をジャンプし、ドイツ軍のハーフトラックを巧みな操縦で撃破するシーンは、本作の最大の見せ場でした。
この人気を受け、日本ではタミヤ(田宮模型)が『ラットパトロール』仕様のジープのプラモデルを発売し、爆発的なヒットを記録。
ドラマを見た子供たちがこぞってプラモデルを作り、「ラットパトロールごっこ」に興じたのは有名な話です。
トロイ軍曹のトレードマーク「スローチハット」
主人公サム・トロイ軍曹(演:クリストファー・ジョージ)のトレードマークといえば、片方のつばが折れたオーストラリア軍風のブーニーハット(スローチハット)です。
アメリカ兵である彼がなぜあの帽子を被っているのかは謎ですが、彼のタフでワイルドなリーダー像を強烈に印象付けました。
ちなみに、トロイ軍曹を演じたクリストファー・ジョージは、撮影中のジープの横転事故で負傷し、これが後に彼の健康に影響を与え、1983年に早世する一因になったとも言われています。
悲劇の俳優ニック・アダムス
部隊のムードメーカーであり、小柄ながらも勇敢なヒッチコック二等兵を演じたのは、ニック・アダムスです。
彼は『理由なき反抗』でジェームズ・ディーンと共演し、日本の怪獣映画『フランケンシュタイン対地底怪獣』や『怪獣大戦争』にも出演したことで知られる親日家のスターでした。
しかし、彼は『ラットパトロール』が終了する直前の1968年2月、薬物の過剰摂取により36歳の若さで謎の死を遂げました。
番組の早期終了と彼の死を結びつける説もありますが、真相は定かではありません。
敵役ディートリッヒ大尉のその後
本作では、敵であるドイツ軍のハンス・ディートリッヒ大尉が、単なる悪役ではなく、トロイ軍曹の好敵手としてリスペクトを持って描かれました。
この知的なドイツ軍将校を演じたのは、ドイツ出身の俳優ハンス・グデガストです。
彼は本作終了後、アメリカでより活動しやすくするために「エリック・ブレーデン」と改名。
後にアメリカの国民的昼ドラマ『ザ・ヤング・アンド・ザ・レストレス』で40年以上にわたり主役を務め、エミー賞も受賞する大スターへと変貌を遂げました。
参考動画
まとめ
『ラットパトロール』は、第二次世界大戦という重いテーマを扱いながらも、ジープが砂漠を疾走する派手なアクションと、4人の隊員の軽快なチームワークで、勧善懲悪の「西部劇」のようなエンターテイメント性を確立しました。
『コンバット!』のような重厚な人間ドラマとは一味違う、30分番組というテンポの良さも魅力でした。
ベトナム戦争の泥沼化により、アメリカ国内で戦争ドラマの人気が低下したことなどから、わずか2シーズンで終了しましたが、その鮮烈なジープのアクションとテーマ曲は、今も多くのファンの記憶に焼き付いています。
関連トピック
『コンバット!』: 本作と人気を二分した戦争ドラマの金字塔。ヨーロッパ戦線を舞台にした歩兵のドラマであり、本作とは対照的な魅力があります。
クリストファー・ジョージ: 主人公トロイ軍曹を演じた俳優。そのワイルドな魅力で人気を博しました。
ニック・アダムス: ヒッチコック二等兵を演じた俳優。日本映画にも出演しましたが、本作終了直前に悲劇的な死を遂げました。
タミヤ (田宮模型): 本作のジープのプラモデルを発売し、当時の模型ブームを牽引しました。
エリック・ブレーデン(ハンス・グデガスト): ディートリッヒ大尉を演じ、後にアメリカのドラマ界で大成功を収めた俳優。
関連資料
ラットパトロール シーズンI & II [DVD-BOX]: 全58話を収録したコンプリートボックス。砂漠を疾走するジープの勇姿を再び楽しめます。
タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.219 アメリカ陸軍 ジープ・ウイリスMB: 『ラットパトロール』ブームの火付け役となったプラモデルの後継・現行モデル。
『マカロニ・ウエスタン』関連書籍: 本作のロケ地となったスペイン・アルメリアの砂漠が、どのように他の映画で使われたかを知ることができます。