【徹底解説】映画『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)のあらすじと名曲の秘密!永遠に色褪せないミュージカル映画の金字塔を総まとめ
概要
1965年に公開された映画『サウンド・オブ・ミュージック』(原題: The Sound of Music)は、ミュージカル映画というジャンルの枠を軽々と飛び越え、世界中で最も愛されている映画史に残る永遠の金字塔です。
メガホンを取ったのは、『ウエスト・サイド物語』でミュージカル映画の歴史を変えた名匠ロバート・ワイズ監督。
そして、ブロードウェイの黄金コンビであるリチャード・ロジャース(作曲)とオスカー・ハマースタイン2世(作詞)が手掛けた、奇跡のように美しい楽曲の数々が全編を彩っています。
主人公の家庭教師マリアを演じたのは、前年の『メリー・ポピンズ』で映画デビューにしてアカデミー賞主演女優賞に輝いた、世紀の歌姫ジュリー・アンドリュース。
対する厳格なトラップ大佐を演じたのは、シェイクスピア舞台で鳴らしたイギリスの誇る名優クリストファー・プラマーです。
本作は、1938年のオーストリアを舞台に、音楽の力で家族の絆を取り戻していくトラップ一家の実話をベースにした感動的なストーリーと、迫り来るナチス・ドイツの脅威という重厚な歴史的背景が見事に融合しています。
第38回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、音響賞、編集賞、編曲賞の5部門を独占するという輝かしい大成功を収めました。
さらに、当時『風と共に去りぬ』が保持していた歴代興行収入の記録を約四半世紀ぶりに塗り替えるという、前代未聞の社会現象を巻き起こしました。
「ドレミの歌」や「私のお気に入り」「エーデルワイス」など、誰もが一度は耳にしたことのある名曲たちが、アルプスの大自然の中で響き渡る本作は、世代を超えて受け継がれるべき至高のエンターテインメント作品です。
オープニング
詳細(徹底解説)
あらすじと世界観:アルプスの大自然と迫り来る戦争の影
物語の舞台は、第二次世界大戦の足音が間近に迫る1938年のオーストリア、ザルツブルクです。
歌うことが大好きで、お転婆な修道女見習いのマリアは、修道院長からある命令を受けます。
それは、妻を亡くして以来、心を閉ざして子供たちを軍隊のように厳しく管理している退役海軍将校、ゲオルク・フォン・トラップ大佐の邸宅に、7人の子供たちの家庭教師として住み込みで働くことでした。
最初は反発していた子供たちでしたが、雷雨の夜にマリアが歌う「私のお気に入り」や、ザルツブルクの美しい街並みを背景に歌い踊る「ドレミの歌」を通じて、彼らの心は次第にマリアへと開かれていきます。
本作の世界観の素晴らしさは、オーストリアの息を呑むほど美しいアルプスの自然美と、そこに覆い被さってくるファシズム(ナチス・ドイツ)の暗い影という強烈なコントラストにあります。
最初は笛の音で子供たちを呼びつけ、家の中から音楽を排除していた大佐も、マリアと子供たちが歌う「サウンド・オブ・ミュージック」のハーモニーを聴いてついに涙を流し、冷たく閉ざされていた心を溶かしていきます。
歌という無形の魔法が、バラバラになりかけていた家族を再び一つに結びつけ、やがて来る過酷な運命に立ち向かうための最大の武器となっていくプロセスが、極めて丁寧に、そして劇的に描かれています。
章ごとの展開:愛の芽生えと祖国への誇り
映画の前半は、マリアがいかにして子供たちの信頼を勝ち取り、音楽の喜びを教え込んでいくかという、非常に明るく希望に満ちたトーンで進行します。
大佐が婚約者の男爵夫人エルザを連れて帰宅した際、子供たちがマリアから教わった歌で歓迎するシーンは、大佐が忘れていた父親としての愛情を取り戻す最大のターニングポイントとなります。
その後、大佐とマリアは邸宅で開かれた舞踏会でのオーストリア民謡(レントラー)のダンスを通じて、互いの内に芽生えた決定的な愛の感情に気づいてしまいます。
自らの恋心に戸惑い、一度は修道院へと逃げ帰ってしまうマリアでしたが、修道院長が力強く歌い上げる「すべての山に登れ」という名曲に背中を押され、自らの運命から逃げずにトラップ家へと戻る決意を固めます。
後半に入ると、オーストリアがナチス・ドイツに併合され、物語は一気に緊迫したポリティカル・サスペンスの様相を呈してきます。
ナチスへの忠誠を拒否し、誇り高きオーストリア人としての信念を貫こうとする大佐は、一家全員でザルツブルク音楽祭のステージに立ち、そこで最後の歌を披露した後にスイスへと亡命する命がけの脱出劇を図ります。
修道院のシスターたちがナチスの追っ手の車の部品を抜き取り、「罪を告白します」と微笑む痛快なシーンを経て、アルプスの山々を越えて自由へと歩み出すラストシーンは、映画史に残る完璧なカタルシスをもたらしてくれます。
特筆すべき見どころ:「エーデルワイス」に込められた真のメッセージ
本作を語る上で欠かせないのが、ロジャース&ハマースタインが残した奇跡のような楽曲群と、それらが持つ圧倒的なドラマ性です。
中でも特筆すべき見どころは、トラップ大佐がギターを弾きながら歌い上げる「エーデルワイス」のシークエンスです。
この曲は、あまりにも自然で美しいメロディを持つため、本物のオーストリア民謡だと勘違いしている人も多いですが、実は本作のために作られた完全なオリジナル曲です。
音楽祭のステージで大佐がこの曲を歌う場面は、単なる子守唄や愛唱歌の枠を超え、ナチスに飲み込まれて消えゆく祖国オーストリアへの痛切な愛と哀しみを表現する、壮絶なレジスタンスの歌へと昇華されています。
喉を詰まらせて歌えなくなった大佐をマリアと子供たちが助け、やがて客席のオーストリア市民たちがナチスの監視下にもかかわらず立ち上がり、全員で大合唱となる展開は、何度観ても鳥肌が立つほどの感動を呼び起こします。
また、映画の冒頭、アルプスの大草原をヘリコプターが空撮で捉え、その中心でマリアが両手を広げてタイトル曲を歌い上げるオープニングシーンも、映画のスケール感と彼女の自由な魂を瞬時に観客に伝える、映像表現の極致と言える名演出です。
制作秘話・トリビア:クリストファー・プラマーの反抗と史実との違い
これほどまでに世界中から愛される本作ですが、製作の裏側には数々の苦労や興味深いトリビアが隠されています。
トラップ大佐役のクリストファー・プラマーは、当初この作品の脚本を「甘ったるくて感傷的すぎる」と毛嫌いしており、周囲には本作のことを『サウンド・オブ・ミューカス(粘液)』と皮肉を込めて呼んでいたというのは非常に有名な逸話です。
しかし、現場でのジュリー・アンドリュースの圧倒的な才能とプロフェッショナリズムに触れるうちに考えを改め、大佐というキャラクターに単なる堅物ではない、深い知性と色気をもたらすために台詞の変更などを提案し、結果として映画の深みを大いに増すことになりました。
また、有名なオープニングの空撮シーンでは、カメラを積んだヘリコプターのプロペラが起こす強烈なダウンウォッシュによって、ジュリー・アンドリュースはテイクのたびに草原に吹き飛ばされて泥だらけになりながら撮影を完遂したという壮絶な裏話があります。
さらに、史実との違いも興味深いポイントです。
映画では劇的にアルプスの山を徒歩で越えてスイスへと逃れますが、実際のトラップ一家はすぐ裏山を越えたわけではなく、実際には列車の切符を買って堂々とイタリアへと出国し、そこからアメリカへと渡っています。
映画的なカタルシスを優先したダイナミックな脚色が、この作品を永遠のエンターテインメントに押し上げた要因の一つなのです。
キャストとキャラクター紹介
マリア:ジュリー・アンドリュース
- ノンベルク修道院の修道女見習いであり、トラップ一家の運命を変える太陽のようなヒロイン。
何事にも真っ直ぐで、権威を恐れず子供たちに寄り添う彼女の姿は、ジュリー・アンドリュースのクリスタル・ボイスと相まって、観る者の心を浄化するような魅力を放っています。
彼女の飾らない笑顔と圧倒的な歌唱力こそが、本作最大の魔法です。
ゲオルク・フォン・トラップ大佐:クリストファー・プラマー
- 第一次世界大戦の英雄であり、7人の子供の父親。
妻の死の悲しみから音楽を封印し、冷酷な軍隊式教育を行っていましたが、マリアとの出会いで本来の愛情深い父親、そして愛国心に満ちた魅力的な男性へと劇的な変化を遂げます。
プラマーの気品ある佇まいと、苦悩を秘めた瞳が素晴らしい説得力を持っています。
男爵夫人(エルザ・シュレーダー):エレノア・パーカー
- 大佐の婚約者であり、ウィーンの裕福で洗練された未亡人。
マリアの若さと大佐との間の特別な空気に嫉妬し、一度はマリアを修道院へと追い返してしまいますが、最後は自らの負けを潔く認めて身を引く、誇り高い大人の女性として描かれています。
マックス・デトワイラー:リチャード・ヘイドン
- 大佐の友人の興行師であり、トラップ一家の子供たちの音楽的才能にいち早く目をつけます。
政治的な信念を持たず、ナチスにも巧みに取り入ろうとする風見鶏のような俗物ですが、物語の終盤では一家の亡命を命がけで手助けする心憎い活躍を見せます。
修道院長:ペギー・ウッド
- マリアの良き理解者であり、彼女を家庭教師として送り出した慈愛に満ちた人物。
迷い悩むマリアに対して「すべての山に登れ」と歌いかけ、彼女が自らの人生と真っ直ぐに向き合うよう背中を押す、精神的な支柱となるキャラクターです。
リーズル:シャーミアン・カー
- トラップ家の16歳の長女。
大人の女性への階段を上り始めた思春期の危うさを抱えており、郵便配達員の青年ロルフとの淡い初恋のデュエット「もうすぐ17才」は映画のハイライトの一つです。
しかし、ナチス党員となったロルフとの悲しい決別は、戦争が若者の純粋な愛を引き裂く残酷さを見事に象徴しています。
キャストの代表作品と経歴
主人公マリアを演じたジュリー・アンドリュースは、ブロードウェイの『マイ・フェア・レディ』で大成功を収めたものの、映画版ではオードリー・ヘプバーンに役を奪われるという挫折を味わいました。
しかし、ディズニー映画『メリー・ポピンズ』でアカデミー主演女優賞を獲得し、続く本作で映画史に永遠にその名を刻むという、最高のリベンジを果たしたミュージカル界の絶対的女王です。
トラップ大佐を演じたクリストファー・プラマーは、イギリス演劇界でシェイクスピア俳優として確固たる地位を築いていた重鎮であり、本作への出演を長く後悔していた時期もありました。
しかし晩年には「本当に素晴らしい映画だ」と和解し、2010年の映画『人生はビギナーズ』で史上最高齢でのアカデミー助演男優賞を受賞するなど、生涯現役を貫いた伝説の名優です。
まとめ(社会的評価と影響)
映画『サウンド・オブ・ミュージック』は、公開直後から空前の大ヒットとなり、それまでの映画興行記録を次々と塗り替えました。
その明るく前向きなメッセージと普遍的な家族愛は、ベトナム戦争の泥沼化に苦しんでいた当時のアメリカ社会において、人々の心を癒す絶大な力を持っていたとも言われています。
批判的な批評家からは「シロップのように甘すぎる」と揶揄されることもありましたが、長きにわたる上映実績と現在に至るまでの絶大な人気が、そうした批判を完全に跳ね返しています。
劇中で歌われる数々の名曲は、単なる挿入歌ではなく、キャラクターの感情を雄弁に語り、物語をダイナミックに推進させるための完璧なミュージカル言語として機能しています。
ナチスの独裁という重いテーマを扱いながらも、人間の自由と尊厳、そして平和への祈りを、歌声という最も美しく強い武器で表現し切ったロバート・ワイズ監督の手腕はまさに神業です。
時代が移り変わっても、アルプスの山々に響き渡るマリアの歌声は、新しい世代の観客の心に永遠に希望の光を灯し続けることでしょう。
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デジタルリマスターによって極限まで美しく蘇ったアルプスの雄大な風景や、マリアの衣装の鮮やかな色彩を余すところなく堪能するためには、高画質ディスクでの鑑賞が不可欠です。
ジュリー・アンドリュースやクリストファー・プラマーによる貴重な音声解説やメイキング映像もたっぷりと収録されています。 - オリジナル・サウンドトラック:リチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタイン2世作曲。
「ドレミの歌」をはじめとする映画音楽の歴史的至宝が詰まった、一家に一枚は置いておきたい奇跡のアルバムです。 - 原作本:マリア・フォン・トラップ著『サウンド・オブ・ミュージック』(トラップ一家物語)。
実在のマリア自身が綴った自伝であり、映画では描かれなかった一家の苦難の歴史や、アメリカへ渡った後の彼らの生活を知ることができる、非常に感動的な一冊です。
