3バカ大将のうんちく決定版!ドタバタコメディの裏側と時代を超えた笑いの秘密
「3バカ大将」の概要
『3バカ大将』(原題: The Three Stooges)は、アメリカのボードヴィル(軽演劇)出身のコメディアンチーム、および彼らが主演した短編映画シリーズの日本でのタイトルです。
日本では1960年代のテレビ放送を通じて、その過激なドタバタ(スラップスティック)コメディで爆発的な人気を博しました。
「目突き」「頭突き」「パイ投げ」といった彼らの代名詞的なギャグは、後のコメディアンたちにも多大な影響を与えています。
この記事では、そんな『3バカ大将』の概要から、知られざる詳細なうんちくまでを掘り下げて解説します。
「3バカ大将」の詳細とトリビア
『3バカ大将』を深く知るための、いくつかの興味深い「うんちく」をご紹介します。
黄金期のメンバーと複雑な変遷
一般的に「3バカ大将」として最も知られている黄金期のメンバーは、モー (Moe Howard)、ラリー (Larry Fine)、そしてカーリー (Curly Howard) の3人です。
モーは「マッシュルームカット」でリーダー格、常に怒っていて二人をど突きます。
ラリーは「真ん中分けの縮れ毛」で、比較的常識人に見えながらも結局騒動に巻き込まれます。
カーリーは「スキンヘッド」で、奇声を発したり指を鳴らしたりする最も破天荒なキャラクターとして絶大な人気を博しました。
しかし、実は『3バカ大将』の歴史は長く、メンバーの入れ替わりが激しいことでも知られています。
初代の3人目は、モーとカーリーの実の兄であるシェンプ (Shemp Howard) でした。
人気絶頂だったカーリーが病気(脳卒中)で降板した後、シェンプがメンバーに復帰しました。
シェンプの死後は、ジョー・ベッサー (Joe Besser)、さらにカーリー・ジョー (Curly Joe DeRita) がメンバーに加わり、合計で6人の「Stooges(おバカさん)」が入れ替わり立ち替わり活躍したのです。
日本での大ヒットと「名吹き替え」
『3バカ大将』は、日本では1960年代にテレビ放送され、お茶の間の人気者となりました。
この人気には、彼らの吹き替えを担当した声優陣の功績が非常に大きいです。
モーを和久井節緒さん、ラリーを近石真介さん、カーリーを高松しげおさん(初期は藤田まことさんが担当したという説もあります)が演じました。
彼らの日本の視聴者に合わせた絶妙なアドリブや掛け合いが、人気に拍車をかけました。
「オゥ、オゥ、オゥ!」「ポク、ポク、ポク!(木魚の音)」といった独特のセリフや効果音は、実は吹き替え版オリジナルの演出であり、本国版にはない日本独自の文化でした。
過激なギャグの裏側にあるプロ意識
彼らのコメディは、非常に身体を張ったものでした。
目突きや頭突きは、実際には当たっているように見せる高度な技術(効果音のタイミングなど)が使われていましたが、撮影中の怪我は日常茶飯事だったと言われています。
特にリーダーのモーは、ギャグのタイミングや安全面に細心の注意を払う「完璧主義者」であったと伝えられています。
また、彼らの代名詞である「パイ投げ」で使用されたパイの数は数千個にものぼると言われ、彼らは単なるドタバタではなく、計算され尽くしたスラップスティックを芸術の域にまで高めました。
後世への絶大な影響
『3バカ大将』のギャグスタイルは、日本のお笑い界にも計り知れない影響を与えています。
特に、ザ・ドリフターズ、とりわけ志村けんさんや加藤茶さんのコントには、明らかに『3バカ大将』からの影響を見て取ることができます。
叩かれた時のオーバーなリアクション、効果音の使い方、予測不能な展開などは、まさに『3バカ大将』が確立した手法です。
志村けんさんが多用した、頭を叩かれた際の「アイーン」にも似た反応や、独特の効果音の使い方は、日本のコメディにおける『3バカ大将』の遺伝子と言えるでしょう。
2012年のリブート映画
彼らの人気がいかに根強いかは、2012年にリブート映画が製作されたことからも分かります。
『新・3バカ大将 ザ・ムービー』(原題: The Three Stooges)は、『ジム・キャリーはMr.ダマー』などで知られるファレリー兄弟監督によって製作されました。
この映画では、現代を舞台に、オリジナルメンバーの雰囲気やギャグを驚くほど忠実に再現した3人組が、相変わらずの騒動を巻き起こします。
参考動画
まとめ
『3バカ大将』は、単なる1960年代の懐かしいドタバタコメディではありません。
彼らが確立したスラップスティックの様式美、計算され尽くしたギャグのタイミング、そしてメンバー交代という困難を経ても続いたプロフェッショナルなコメディ魂は、国境と時代を超えて今もなお愛され続けています。
日本のお笑いのルーツを辿る上でも、彼らの存在は決して無視できません。
彼らのギャグを見て育った世代にとっては懐かしい思い出であり、初めて見る世代にとっては(色々な意味で)新鮮な驚きを与えてくれるでしょう。
今、あらためて彼らの純粋な「笑い」に触れてみてはいかがでしょうか。
関連トピック
ザ・ドリフターズ: 日本を代表するコメディグループです。『3バカ大将』から強い影響を受け、そのスタイルを日本のコントに取り入れたことで知られています。
スラップスティック・コメディ: 日本語で「ドタバタ喜劇」と訳されます。身体的な痛みや破壊を伴う大げさなアクションで笑いを取るコメディのジャンルで、『3バカ大将』はその代表格です。
ボードヴィル: 19世紀末から20世紀初頭のアメリカで流行した、歌、ダンス、コメディ、手品などが混在する舞台演芸(寄せ集め演劇)のことです。『3バカ大将』もここが出発点です。
ファレリー兄弟: 『ジム・キャリーはMr.ダマー』などで知られるコメディ映画監督兄弟です。2012年に『3バカ大将』のリブート映画を製作し、オリジナルへの深い敬愛を示しました。
関連資料
新・3バカ大将 ザ・ムービー (Blu-ray/DVD): 2012年に製作されたリブート映画です。オリジナルの雰囲気を現代に蘇らせた作品で、手軽に彼らの世界観に触れることができます。
The Three Stooges Collection (DVD-Box / 輸入盤): 彼らの黄金期であるコロンビア映画時代の短編映画シリーズを収録したボックスセットです。オリジナルのコメディを心ゆくまで堪能できます。
Moe Howard and the Three Stooges (書籍 / 洋書): リーダーであったモー・ハワードの自伝です。グループの内幕やコメディ哲学、歴史が語られており、ファン必読の一冊です。