【空の密室ホラー】『ミステリー・ゾーン』最高傑作「2万フィートの戦慄」解説!誰にも信じてもらえない「孤独」と「狂気」
第5シーズン第123話「2万フィートの戦慄」の概要
「飛行機の翼の上に、何かがいる!」
もし、高度2万フィート(約6,000メートル)を飛ぶ飛行機の窓の外に、エンジンを破壊しようとする怪物の姿が見えたら? そして、それを誰に伝えても信じてもらえなかったら?
1963年に放送された第123話「2万フィートの戦慄(原題:Nightmare at 20,000 Feet)」は、そんな悪夢のようなシチュエーションを描いたサスペンス・ホラーの傑作です。
主演は、後に『スタートレック』のカーク船長として世界的なスターとなるウィリアム・シャトナー。監督は『スーパーマン』や『リーサル・ウェポン』のリチャード・ドナー。脚本は『アイ・アム・レジェンド』のリチャード・マシスン。
まさに「レジェンドたちが集結した神回」であり、その心理描写の鋭さは現代のホラー映画さえも凌駕します。
「2万フィートの戦慄」の詳細解説
あらすじ:嵐の夜の悪夢
1. 神経衰弱の男、ボブ・ウィルソン
主人公のボブ・ウィルソン(ウィリアム・シャトナー)は、神経衰弱による入院生活を終え、妻と共に飛行機で帰路についていました。「飛行機に乗る」という行為自体が彼にとっては大きなストレスであり、彼は精神的に不安定な状態にありました。
外は激しい雷雨。ふと窓の外を見たボブは、信じがたい光景を目にします。飛行機の翼の上に、毛むくじゃらの「何か」がしがみついているのです。
2. 消える怪物、深まる孤立
その怪物(グレムリン)は、明らかにエンジンを破壊しようとしていました。ボブは慌てて妻や乗務員を呼びますが、彼らが窓の外を見ると、怪物は風のように姿を消してしまいます。
「きっと疲れているのよ」「睡眠薬を飲んで休んで」。
周囲は誰も彼の言葉を信じません。それどころか、彼が再び精神を病んで幻覚を見ているのだと哀れみます。しかし、ボブが一人で窓を見ると、怪物は確かにそこにいて、あざ笑うかのように彼を見つめ返すのです。
3. 究極の決断
「このままでは墜落する。誰にも信じてもらえないなら、自分一人で戦うしかない」
追い詰められたボブは、眠っている保安官の拳銃を奪い取ります。そして、機内の非常口を開け、暴風雨吹き荒れる翼の上の怪物に向けて引き金を引くのです。
機内は大パニックとなり、ボブは拘束されます。彼は「狂人」としてストレッチャーで運び出されますが、ラストシーンでカメラが映し出したのは、怪物によって無残にめくれ上がった「エンジンの残骸」でした。
なぜ「神回」なのか?3つの見どころ
① ウィリアム・シャトナーの「汗」の演技
このエピソードの緊張感を支えているのは、シャトナーの鬼気迫る演技です。
誰も信じてくれない焦燥感、墜落への恐怖、そして「自分は狂っているのか?」という自己不信。冷や汗を流し、目を血走らせて窓にしがみつく彼の姿は、視聴者に「狂気と正気の境界線」をリアルに体感させます。
② 見えない恐怖「グレムリン」
本作に登場する怪物「グレムリン」は、第二次世界大戦中のパイロットたちの間で語られた「機械に悪さをする妖精」の伝説が元になっています。
オリジナルの着ぐるみは、現代の目で見ると少しユーモラス(テディベア風)にも見えますが、リチャード・ドナー監督の巧みな演出により、「窓の外」という安全圏の向こう側にいる不気味な存在として描かれています。
③ 完璧な脚本とカタルシス
脚本家のリチャード・マシスンは、原作となる短編小説も執筆しています。
「精神を病んでいた男」を主人公にすることで、「幻覚説」に説得力を持たせ、視聴者を最後までハラハラさせます。そして最後の最後で、「ボブは正しかった」と証明される物的証拠(壊れたエンジン)が映し出されるカタルシス。この構成の美しさは、ミステリードラマのお手本です。
リメイクとオマージュ
このエピソードの影響力は凄まじく、何度もリメイクされています。
- 映画版『トワイライト・ゾーン』(1983): ジョン・リスゴーが主演し、怪物のデザインがより凶悪で生物的なものに変更されました。
- 『ザ・シンプソンズ』: ハロウィーン回でバートがバスの窓からグレムリンを見るパロディとして有名です。
- 『トワイライト・ゾーン』(2019): アダム・スコット主演でリメイクされ、現代的なアレンジが加えられました。
「2万フィートの戦慄」の参考動画
「2万フィートの戦慄」のまとめ
「2万フィートの戦慄」は、単なるモンスターパニックではありません。
「真実を知っているのに、誰にも信じてもらえない」という、人間にとって最も根源的な恐怖(疎外感)を描いた心理ドラマです。
ボブは狂人扱いされて連行されましたが、彼は間違いなく飛行機を救った英雄でした。その皮肉と救いが入り混じったラストシーンは、私たちに深い安堵と、少しの寒気を与えてくれます。
飛行機に乗る時は、窓の外にご注意を……。
関連トピック
リチャード・マシスン:『アイ・アム・レジェンド』『激突!』などの原作者。「モダンホラーの父」とも呼ばれ、スティーヴン・キングに多大な影響を与えた。
リチャード・ドナー:本作の監督。『オーメン』『グーニーズ』など、後に大ヒット作を連発するヒットメーカー。
グレムリン:機械の不調を引き起こすとされる妖精。映画『グレムリン』(1984)の可愛いギズモとは異なり、本作では本来の伝承に近い「厄介者」として描かれる。
関連資料
短編集『2万フィートの戦慄』:リチャード・マシスンの原作小説が読める文庫本。心理描写は小説版の方がさらに濃密。
映画『トワイライト・ゾーン/超次元の体験』:第4話としてリメイク版が収録されている。ジョージ・ミラー監督によるスピーディーな演出が見もの。

