名探偵ブノワ・ブランが、今度は地中海の孤島で謎に挑みます。
『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』は、2019年の大ヒット作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』の続編で、Netflixが巨額で権利を獲得したことでも話題になった作品です。
「前作を見ていなくても楽しめる?」「海外ではどう評価された?」「タイトルの意味は?」といった疑問に、英語圏のインタビューや制作資料をもとにお答えします。
結末の考察は、記事後半のネタバレ専用セクションにまとめています。
- 作品の基本情報と、Netflixでの視聴方法
- ネタバレなしのあらすじと見どころ、日本ではあまり知られていない制作秘話
- キャスト・吹替声優の一覧と、主要キャストの経歴
- Rotten Tomatoes・IMDb・Metacriticのスコアと受賞歴、結末の考察
作品の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原題 | Glass Onion: A Knives Out Mystery |
| 邦題 | ナイブズ・アウト:グラス・オニオン |
| 制作国 | アメリカ |
| 公開・配信年 | 2022年(トロント国際映画祭9月10日、米国限定劇場公開11月23日、Netflix配信12月23日) |
| ジャンル | ミステリー、コメディ(フーダニット) |
| 監督 | ライアン・ジョンソン |
| 脚本 | ライアン・ジョンソン |
| 原作 | なし(オリジナル脚本。アカデミー賞では前作のキャラクターを使うため脚色賞扱い) |
| 制作会社・配信元 | T-Street/Netflix |
| 上映時間 | 139分 |
| 日本での視聴方法 | Netflixで独占配信(2026年10月時点) |
作品の概要
『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』は、監督・脚本のライアン・ジョンソン(Rian Johnson)が手がける「ブノワ・ブラン」シリーズの第2作です。
前作から続投するのは、探偵ブノワ・ブランを演じるダニエル・クレイグ(Daniel Craig)だけで、事件も登場人物もまったく新しくなっています。
そのため、前作を見ていなくても単独で楽しめる作りになっています。
制作の経緯は、ハリウッドでも異例のものでした。
前作は製作費約4,000万ドルに対して世界興行収入3億ドル超という大ヒットとなり、続編はいったん配給元のライオンズゲート(Lionsgate)で進められました。
ところが2021年3月、Netflixがアマゾンやアップルとの争奪戦に勝ち、続編2本の権利を約4億6,900万ドル(報道によって4億ドル超〜4億5,000万ドルと幅があります)で獲得しました。
ジョンソン監督は2020年、新型コロナウイルスによるロックダウンの最中に脚本を書いています。
「とにかくビーチでバカンスがしたかった」という本人の願望が、舞台をギリシャにした理由のひとつだそうです。
監督はこの作品を「バカンス・ミステリー」と呼び、アガサ・クリスティー原作の映画『地中海殺人事件』(Evil Under the Sun)、『ナイル殺人事件』(Death on the Nile)、そして脚本家による仕掛けの効いた1973年の映画『シーラ号の謎』(The Last of Sheila)から影響を受けたと語っています。
物語の中心にいるのは、テック業界の億万長者と、彼に取り巻く「友人」たちです。
SNS時代のインフルエンサー、政治家、科学者など、現代社会を皮肉ったキャラクター造形はコメディとしても秀逸です。
古典的な謎解きミステリーが好きな方はもちろん、豪華キャストの掛け合いや社会風刺を楽しみたい方、「頭を使いすぎずに、でもちゃんと驚きたい」という方におすすめです。
予告編・オープニング映像
あらすじと世界観(ネタバレなし)
物語は2020年5月、コロナ禍の初期から始まります。
コネチカット州知事のクレア、テック企業「アルファ」の科学者ライオネル、元スーパーモデルでファッションデザイナーのバーディ、男性の権利を訴える配信者のデュークのもとに、それぞれ巨大な木製のパズルボックスが届きます。
送り主は、アルファ社の創業者で大富豪のマイルズ・ブロンです。
いくつもの仕掛けを解いて箱を開けると、中にはギリシャにあるマイルズのプライベートアイランドへの招待状が入っていました。
しかも週末には、マイルズ自身が「被害者」となる殺人ミステリーゲームが開かれるというのです。
マイルズは、自分を支える仲間たちを「ディスラプター(破壊者)」と呼んでいます。
ところが出発の朝、港には招待した覚えのない人物の姿がありました。
世界的名探偵ブノワ・ブランです。
さらに、マイルズと裁判で争い、会社を追われた元共同創業者のアンディ・ブランドまで現れ、一行の間には不穏な空気が流れます。
島の中心には、巨大なガラスのドーム「グラス・オニオン」がそびえています。
名探偵が参加した時点で「ゲーム」はあっという間に破綻してしまいますが、やがて本物の死者が出て、事件は笑いごとではなくなっていきます。
マイルズの島、アルファ社の新燃料「クリア(Klear)」、仲間たちがマイルズに逆らえない理由など、さまざまな要素が後半に向けてつながっていきます。
見どころ
オープニングを飾る「パズルボックス」と分割画面の演出
冒頭、キャラクター全員がパズルボックスを解きながら電話でやり取りする場面は、本作の名シーンのひとつです。
ジョンソン監督は米映画サイトRogerEbert.comのインタビューで、ここが作中で最も緻密に絵コンテを切った場面だと明かしています。
俳優たちは別々に撮影されたため、先に撮った役者のテイクを選び、次の役者はそれをイヤホンで聞きながら演技を重ねたそうです。
監督の言葉を借りれば、まさに「レイヤーケーキ」のような作り方でした。
名探偵ブノワ・ブランの、さらに自由になったキャラクター
前作では「南部なまりの気取った探偵」という印象が強かったブランですが、今作ではコロナ禍で事件がなく、浴槽でゲームをして時間をつぶす人間くさい姿から登場します。
派手なリゾートファッションや大げさな比喩表現など、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドとはまったく違う顔を楽しそうに演じているのが伝わってきます。
クレイグはこの役で、ゴールデングローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされました。
物語を折り返す、大胆な構成
本作の最大の特徴は、中盤で物語が「巻き戻る」ような構成にあります。
前半で見ていた場面が、後半では違う意味を持って見えてくるため、2回目の視聴でも新しい発見があります。
ジョンソン監督は「ミステリーはクロスワードパズルではなく、ジェットコースターであるべきだ」と繰り返し語っており、観客に推理させるより、驚きと感情の起伏で引っ張ることを重視しています。
アガサ・クリスティー映画を意識した壮大な音楽
音楽は監督のいとこで、長年のパートナーである作曲家ネイサン・ジョンソン(Nathan Johnson)が担当しています。
監督によると、1978年の映画『ナイル殺人事件』でニーノ・ロータが手がけた音楽を参考にし、「大きく、広がりがあって、ロマンチックで豊か」な音楽を目指したそうです。
弦楽器で鋭く刻む室内楽的だった前作とは対照的で、ギリシャの青い海によく合うスコアになっています。
スコアはロンドンの名門アビー・ロード・スタジオで録音されました。
エドワード・ノートンが演じる「憎めない成金」
テック業界の億万長者マイルズ・ブロンは、自分を天才だと信じている男です。
意味不明な造語を連発し、高価な美術品を見せびらかす姿は、現実のIT長者たちを思わせる痛烈な風刺になっています。
エドワード・ノートンは、この「どこか滑稽な権力者」を絶妙なバランスで演じています。
制作秘話・トリビア
タイトルはビートルズの曲から
タイトルの「グラス・オニオン」は、ビートルズの1968年の楽曲「Glass Onion」から取られています。
ジョンソン監督は、ブランが大げさな比喩として使えるものを探していて、「すべてが最初から丸見え」というテーマから「ガラス」を思いついたそうです。
そこでiPhoneの音楽ライブラリを「glass」で検索したところ、大のビートルズファンである監督の画面に最初に出てきたのがこの曲だった、というエピソードを明かしています。
「島」は実は島ではなかった
撮影は2021年6月28日にギリシャで始まり、スペツェス島周辺で行われました。
マイルズの邸宅として使われたのは、ペロポネソス半島ポルト・ヘリにある高級リゾート「アマンゾー(Amanzoe)」のヴィラ20です。
美術監督のリック・ハインリクス(Rick Heinrichs)は、米旅行誌のインタビューで「実際は島ではなく半島の真ん中だったので、島に見せるには視覚効果が必要だった」と語っています。
撮影は7月30日からセルビアのベオグラードに移り、9月13日にクランクアップしました。
ガラスのドームは本物の玉ねぎから生まれた
邸宅の上にそびえるガラスのドームは、後から視覚効果で合成されたもので、内部はベオグラードのスタジオに建てられたセットです。
ハインリクスはデザインに行き詰まったとき、本物の玉ねぎを切ってその層の重なりを研究したそうです。
曲面ガラスは高価なうえ建築的に見えないため、平らなガラス板を組み合わせる設計にしました。
まず英国で合板を使って形を作り、それをガラス会社に送って正確に切り出してもらい、ベオグラードのスタジオで組み立てたといいます。
ハインリクスは、このドームを「マイルズの肥大した自意識、つまり大きな頭」のイメージだと説明しています。
美術品は「マイルズがググって集めた」設定
邸宅には、ピカソ、クリムト、ドガ、ホックニー、バスキア、モンドリアン、そしてダ・ヴィンチの『モナ・リザ』などの名画(の複製)が飾られています。
美術品を担当したスタッフは米アートメディアのArtnetに対し、「マイルズが『クールなアーティスト』とネットで検索して集めたような作品」を意識したと話しています。
ロスコの作品が上下逆さまに飾られているのも、マイルズの「わかったふり」を表す小ネタです。
名優たちの最後の出演作に
本作には多くのカメオ出演者が登場しますが、なかでも大きな話題になったのが『ジェシカおばさんの事件簿』のアンジェラ・ランズベリー(Angela Lansbury)と、ブロードウェイの作曲家スティーヴン・ソンドハイム(Stephen Sondheim)です。
二人とも公開前に亡くなっており、本作は二人に捧げられています。
ジョンソン監督はゴールデングローブ賞の公式サイトの取材で、ランズベリーについて「これが最後の役でなければよかったけれど、出てもらえて本当にうれしい」と語っています。
ほかにもイーサン・ホーク、ヨーヨー・マ、セリーナ・ウィリアムズ、カリーム・アブドゥル=ジャバーらが顔を見せます。
撮影中は毎週「人狼ゲーム」
ジョンソン監督は撮影期間中、キャストのために「マフィア」(日本でいう人狼ゲームに近い推理ゲーム)の会を定期的に開いていたそうです。
ジャネール・モネイも、インタビューでこのゲーム会の思い出を語っています。
カットされた幻のシーン
監督のオーディオコメンタリーによると、時間の都合でいくつかの場面がカットされました。
そのひとつが、バーディが図書館で子どもたちに絵本を読み聞かせ、その不適切さでまた炎上しかける場面です。
キャストとキャラクター紹介
ブノワ・ブラン(演:ダニエル・クレイグ/吹替:藤真秀)
南部なまりで話す、世界一の名探偵です。
コロナ禍で事件がなく、退屈しきっていたところに謎のパズルボックスが届きます。
大げさな比喩と回りくどい話しぶりの裏で、鋭い観察眼を光らせています。
吹替の藤真秀さんは、『007』シリーズに続いてクレイグの声を担当しています。
マイルズ・ブロン(演:エドワード・ノートン/吹替:宮本充)
テック企業「アルファ」の創業者で、億万長者です。
自分を「ディスラプター(破壊者)」と称し、仲間たちを自分の島に招いて殺人ミステリーゲームを開きます。
カリスマ性と浅はかさが同居する、本作の風刺の中心となる人物です。
アンディ・ブランド(演:ジャネール・モネイ/吹替:佐古真弓)
マイルズとともにアルファ社を立ち上げた元共同創業者です。
裁判で敗れて会社を追われ、仲間たちとも疎遠になっていましたが、なぜか島に姿を現します。
口数が少なく、何を考えているのかわからない存在感が、一行の空気を張り詰めさせます。
クレア・デベラ(演:キャスリン・ハーン/吹替:藤本喜久子)
コネチカット州の知事で、上院選への出馬を控えています。
政治家としての立場とマイルズへの借りの間で、常に神経をとがらせている人物です。
ライオネル・トゥーサン(演:レスリー・オドム・Jr/吹替:福田賢二)
アルファ社の主任科学者です。
マイルズの無茶な計画に科学者として疑問を抱きながらも、彼の命令に従ってきました。
良心と立場の板挟みに苦しむ姿が印象的です。
バーディ・ジェイ(演:ケイト・ハドソン/吹替:園崎未恵)
元スーパーモデルで、現在はファッションデザイナーです。
SNSでの失言で何度も炎上しているのに、まったく懲りない天然キャラクターです。
コメディ担当として、作品の笑いを大きく引っ張っています。
ペグ(演:ジェシカ・ヘンウィック/吹替:田村睦心)
バーディの苦労性のアシスタントです。
バーディの暴走を止めようと必死で、スマホを取り上げるのが日課になっています。
デューク・コーディ(演:デイヴ・バウティスタ/吹替:楠大典)
男性の権利を訴える人気配信者で、銃を手放さないマッチョな男です。
マイルズとの「つながり」をきっかけに、自分の影響力をもっと広げたいと考えています。
ウィスキー(演:マデリン・クライン/吹替:熊谷海麗)
デュークの若い恋人で、彼の配信にも出演しています。
ただの「添え物」に見えて、実は自分なりの野心を持っている人物です。
主要キャスト・スタッフの経歴と代表作
ダニエル・クレイグ(Daniel Craig)
1968年、イギリス・チェスター生まれの俳優です。
2006年の『007/カジノ・ロワイヤル』から2021年の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで、6代目ジェームズ・ボンドを5作品で演じました。
ボンドを卒業した後の当たり役がブノワ・ブランで、前作に続き本作でもゴールデングローブ賞の主演男優賞にノミネートされています。
ボンドの寡黙なイメージとは正反対の、饒舌でユーモラスな演技が高く評価されています。
エドワード・ノートン(Edward Norton)
『真実の行方』(1996年)でのデビューでいきなりアカデミー賞にノミネートされ、『アメリカン・ヒストリーX』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でもノミネートされた実力派です。
『ファイト・クラブ』で知られるように、二面性のある役を得意としています。
本作では、自信満々なのにどこか空っぽな億万長者を、コミカルに演じきりました。
ジャネール・モネイ(Janelle Monáe)
グラミー賞ノミネート歴を持つシンガーで、2016年の『ムーンライト』と『ドリーム』で本格的に俳優デビューしました。
米Gold Derbyのインタビューでは、『LOOPER/ルーパー』以来のジョンソン監督のファンで、「電話が来たら即オーケーと決めていた」と語っています。
脚本を読んで仕掛けを理解した瞬間に出演を決めたそうです。
本作では衣装デザイナーのジェニー・イーガン(Jenny Eagan)と協力し、セリフのない場面でも衣装で人物を語らせる工夫をしました。
その演技は高く評価され、ナショナル・ボード・オブ・レビューの助演女優賞を受賞しています。
ケイト・ハドソン(Kate Hudson)
『あの頃ペニー・レインと』(2000年)でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた俳優です。
ラブコメディのイメージが強い彼女ですが、本作では空気を読まない元モデル役で抜群のコメディセンスを見せ、海外の批評家からも「最も笑いを取った一人」として名前が挙がりました。
監督:ライアン・ジョンソン(Rian Johnson)
高校を舞台にしたネオ・ノワール『BRICK ブリック』(2005年)で長編デビューし、SF映画『LOOPER/ルーパー』、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を手がけました。
テレビドラマ『ブレイキング・バッド』の傑作回として名高い「オジマンディアス」の監督としても知られています。
近年は自ら企画したミステリードラマ『ポーカー・フェイス』も手がけ、現代ハリウッドを代表するミステリーの作り手となっています。
本作では、前作に続いてアカデミー賞脚本賞(今回は脚色賞)にノミネートされました。
結末と考察(ネタバレあり)
⚠️ここから先はネタバレを含みます
アンディはすでに死んでいた
物語の中盤、実は島に来た「アンディ」は、アンディの双子の妹ヘレンだったことが明かされます。
本物のアンディは島に招待される前に死亡しており、警察は自殺と判断していました。
アンディの死に疑問を抱いたヘレンが、ブランに調査を依頼し、ブランは届いたパズルボックスを再び組み直して「招待されたふり」をして島に乗り込んだのです。
前半でアンディが見せていた謎めいた態度の多くは、姉のふりをしながら真相を探るヘレンの緊張だったことがわかります。
犯人はマイルズ・ブロン
アンディは、アルファ社を創業したのは自分だと証明するナプキンのメモを持っていました。
それを知ったマイルズがアンディを殺害し、その事実に気づいて脅そうとしたデュークも、パイナップルアレルギーを利用して毒殺していました。
ブランは最後に、この事件の謎は「グラス・オニオン」のように何層にも見えて、実は中心まですべて透けていたと語ります。
天才のふりをしていたマイルズは、ただ単純で愚かな男だったのです。
モナ・リザが燃えるラストの意味
マイルズは証拠のナプキンを燃やしてしまい、仲間たちも保身のために証言を拒みます。
怒ったヘレンはマイルズのガラス作品を次々と叩き壊し、最後にアルファ社の危険な新燃料「クリア」を焚き火に投げ込みます。
爆発で邸宅は炎上し、ルーヴル美術館から借りていた『モナ・リザ』も焼けてしまいます。
世界的な名画を焼失させた責任がマイルズにかかることで、彼の権力は一瞬で崩れ、仲間たちはようやくマイルズに不利な証言をすることに同意します。
この結末は、冒頭で姉のパズルボックスをハンマーで叩き割った「アンディ(ヘレン)」の行動と重なっています。
複雑に見える仕掛けも、壊してしまえば中身は単純だというテーマが、最初から最後まで一貫しているのです。
ジョンソン監督は米TheWrapのインタビューで、マイルズの真相について「見た目どおりのことが起きている。彼らは権力を保つためにそれをやっているだけだ」と語り、ここ数年のアメリカ社会から着想を得たことを示唆しています。
一方で、Filmarksなど日本のレビューでは「最後に暴れて解決するのはミステリーとしてどうなのか」という意見も見られ、評価が分かれるポイントになっています。
ブランの私生活とカメオ出演
冒頭で、ブランがコロナ禍に同居しているパートナー、フィリップとして登場するのはヒュー・グラント(Hugh Grant)です。
ジョンソン監督はロンドン映画祭の会見で、ブランがクィアであることを明言しています。
また、デュークの母親を演じたジャッキー・ホフマン(Jackie Hoffman)がパズルを次々と解いてしまう場面も、「頭の良さそうに見える仕掛けは実は誰にでも解ける」というテーマを先取りした伏線になっています。
海外の評価と反響
評価スコア(2026年10月時点)
- Rotten Tomatoes:Tomatometer(批評家スコア)91%、Popcornmeter(観客スコア)92%
- IMDb:7.1/10
- Metacritic:Metascore 81(「universal acclaim=絶賛」の評価帯)
公開当初のRotten Tomatoesの批評家スコアは94%前後でしたが、レビュー数が増えるにつれて91%に落ち着いています。
前作(批評家97%・観客92%)と比べると、批評家の評価はわずかに下がり、観客の評価はほぼ同水準です。
主な受賞・ノミネート歴
- 第95回アカデミー賞:脚色賞ノミネート(ライアン・ジョンソン)
- 第80回ゴールデングローブ賞:作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、主演男優賞(ダニエル・クレイグ)ノミネート
- 第28回クリティクス・チョイス・アワード:コメディ映画賞、アンサンブル演技賞を受賞
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:2022年のトップ10作品に選出、助演女優賞(ジャネール・モネイ)
- トロント国際映画祭:観客賞の第2次点(セカンド・ランナーアップ)
批評家の評価のポイント
海外の批評家は、ジョンソン監督の脚本と演出、豪華キャストのアンサンブル、そして音楽を高く評価しました。
特に、億万長者やインフルエンサーを皮肉る現代的な風刺と、中盤で物語をひっくり返す構成が「前作を超えた」とする声も多く見られました。
一方で、「コロナ禍の設定が古く感じる」「同じギャグが繰り返されすぎる」「前作ほどの緻密さはない」といった指摘もあり、米Rolling Stone誌は前作と比べて少し新鮮味が薄れたという趣旨の評価をしています。
同時期に公開された映画『ザ・メニュー』とともに、「富裕層を風刺するエンタメ」の代表作として語られることも多い作品です。
Netflixでの大反響
本作は2022年11月23日から1週間だけ、全米約600館で限定公開されました。
これは当時、Netflix作品として史上最大規模の劇場公開で、推定1,300万〜1,500万ドルを稼いだと報じられています(Netflixは公式な数字を公表していません)。
配信開始後は、最初の10日間で世界で2億950万時間以上視聴される大ヒットとなりました。
後の作品への影響
本作の成功を受けて、シリーズ第3作『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』(Wake Up Dead Man: A Knives Out Mystery)が制作され、2025年11月26日に劇場公開、12月12日にNetflixで配信されました。
一方で、本作の劇場公開がわずか1週間だったことには、主演のクレイグ自身が「もっと長く劇場で上映してほしい」とNetflixに訴えるなど、配信と劇場公開のあり方をめぐる議論も呼びました。
よくある質問(FAQ)
前作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』を見ていなくても楽しめますか?
はい、楽しめます。
続投するのは探偵ブノワ・ブランだけで、事件も登場人物もすべて新しくなっています。
ただし、前作を見ておくとブランのキャラクターの変化をより楽しめます。
どこで見られますか?
Netflixのオリジナル映画のため、Netflixで独占配信されています(2026年10月時点)。
日本語吹替版と字幕版の両方が用意されています。
タイトルの「グラス・オニオン」の意味は?
ビートルズの1968年の楽曲「Glass Onion」が由来です。
劇中では、マイルズの邸宅にあるガラスのドームの名前であり、「何層にも重なって見えるのに、実は中心まで透けて見えている」という事件の本質を表す比喩にもなっています。
続編はありますか?
あります。
シリーズ第3作『ナイブズ・アウト:ウェイク・アップ・デッドマン』が2025年12月12日からNetflixで配信されています。
教会を舞台にした、シリーズで最もダークな作品と位置づけられています。
実話や原作はありますか?
実話や小説の原作はなく、ライアン・ジョンソン監督のオリジナル脚本です。
ただし、アガサ・クリスティー作品をはじめとする古典ミステリー映画から多くの影響を受けています。
まとめ
『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』は、古典的な孤島ミステリーの形を借りながら、現代のお金持ちやインフルエンサーを痛快に風刺したエンターテインメント作品です。
ギリシャの美しい景色、豪華すぎるキャスト、そして中盤で物語を折り返す大胆な構成が、ミステリー好き以外の観客にも新鮮な驚きを与えてくれます。
海外では、Rotten Tomatoesの批評家スコア91%、Metacritic 81という高評価を獲得し、アカデミー賞脚色賞にもノミネートされました。
一方で、「謎解きの本格さ」より「爽快感と風刺」に重きを置いた作品なので、緻密な推理を期待すると物足りなさを感じる方もいるかもしれません。
ダニエル・クレイグのボンドとはまったく違う魅力を見たい方、休日に家族や友人とワイワイ楽しめる映画を探している方、そして一度見た後に「あの場面はそういう意味だったのか」と見返すのが好きな方には、ぜひおすすめしたい一本です。
見終わったら、続く第3作『ウェイク・アップ・デッドマン』で、ブランの次の事件もあわせて楽しんでみてください。
関連商品
- サウンドトラック『Glass Onion: A Knives Out Mystery (Soundtrack from the Netflix Film)』(ネイサン・ジョンソン作曲、Netflix Musicから2022年11月25日にデジタル配信、全27曲)
- サウンドトラック アナログ盤(2枚組LP、米Mondoから発売)
- 前作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』Blu-ray&DVD(2020年7月22日発売、日本語吹替収録、未公開シーンやメイキングなどの特典映像付き)
参考リスト
- Glass Onion: A Knives Out Mystery(Wikipedia英語版)
- List of accolades received by Glass Onion: A Knives Out Mystery(Wikipedia英語版)
- Glass Onion: A Knives Out Mystery(Rotten Tomatoes)
- Glass Onion (2022)(IMDb)
- Rian Johnson interview(RogerEbert.com)
- A ‘Glass Onion’ Spoiler Q&A With Rian Johnson(TheWrap)
- Janelle Monáe ‘Glass Onion’ interview(Gold Derby)
- Glass Onion: Netflix Trailer Teases New Whodunnit(TVLine)
- How ‘Knives Out 2’ Production Designer Built the ‘Glass Onion’(Variety/Yahoo)
- Glass Onion art collection production design(Artnet News)
- Designing ‘Glass Onion’ Artwork(Netflix Tudum)
- Nominee Profile 2023: Glass Onion(Golden Globes)
- The “Glass Onion” Theme Song Released(Dark Horizons)
- ‘Glass Onion’ Review(Rolling Stone)
- Glass Onion: Everything You Need To Know(Looper)
- Wake Up Dead Man teaser(BroadwayWorld)
- 『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』吹替キャスト発表(オリコンニュース)
- ブノワ・ブランはクィアとライアン・ジョンソン監督が明言(映画.com)
- 『ナイブズ・アウト』Blu-ray&DVD発売(リアルサウンド)
