『スキャナーズ』(原題: Scanners)は、1981年に公開されたカナダのSFホラー映画です。

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YouTubeで「スキャナーズ」

スキャナーズ とは?(概要)

『スキャナーズ』(原題: Scanners)は、1981年に公開されたカナダのSFホラー映画です。
監督・脚本は、「ボディ・ホラー」というジャンルを確立した巨匠デヴィッド・クローネンバーグが務めました。
この作品は、クローネンバーグ監督の名を世界的に知らしめた初期の代表作の一つとして、カルト的な人気を誇っています。
物語の核心となるのは、「スキャナー」と呼ばれる特殊な能力を持つ人々です。
彼らは強力なテレパシー能力を持ち、他人の心を読み取るだけでなく、相手の神経系に干渉し、肉体的な苦痛を与えたり、時にはコントロールしたりすることさえ可能です。
ごく稀に、その力は相手の身体を内部から破壊するほどの強大なものとなります。
本作は、この恐るべき力を持って生まれたスキャナーたちの存在が社会に知られ始めた近未来(公開当時の)を舞台に、能力を悪用しようとする者と、それを阻止しようとする者たちの壮絶な戦いを描いています。
特に、映画史に残る衝撃的な特殊メイク(SFX)を使用したシーンは、後世の多くのクリエイターに影響を与えました。
超能力というSF的な題材を扱いながらも、人間の内面的な恐怖や、テクノロジーと肉体の融合・暴走といったクローネンバーグ監督特有の哲学的なテーマが色濃く反映された、単なるホラー映画に留まらない深みを持つ作品です。

YouTubeで観る「スキャナーズ」予告編

本作はその衝撃的な内容から、公式のオープニングタイトル単体よりも、作品全体の雰囲気を伝える予告編(トレーラー)がYouTubeで多く視聴されています。
特に有名な頭部破裂シーンを含む、当時の緊迫感を伝える予告編をご紹介します。
(※ホラーおよびショッキングな描写を含みますので、視聴にはご注意ください。)

「スキャナーズ」の詳細

物語は、ホームレス同然の生活を送る一人の男、キャメロン・ベイルが、その秘められたスキャン能力を無意識に使ってしまったことから始まります。
彼は「コンセック」と呼ばれる巨大軍事企業の保安責任者ポール・ルース博士によって捕らえられます。
ルース博士はベイル自身が強力な「スキャナー」であること、そしてコンセック社がスキャナーの保護と研究を行っていることを告げます。
ルース博士の目的は、スキャナーを社会の脅威としてではなく、有益な存在として組織化することでした。
しかし、その計画の前に最大の障害が立ちはだかります。
それは、ダリル・レボックという名の、異常なまでに強力で邪悪なスキャナーでした。
レボックは自らの能力を信奉するスキャナーたちを集めて地下組織を結成し、コンセック社に属するスキャナーたちを次々と暗殺していたのです。
ルース博士は、ベイルにレボックの組織へ潜入し、その野望を阻止するよう命じます。
自らの出生の秘密も知らぬまま、ベイルは同じ能力を持つ者たちの戦いの渦中へと身を投じていきます。
彼は潜入の過程で、キム・オブレストという女性スキャナーと出会い、共に行動することになります。
やがてベイルとレボックの間には、彼らの能力の源流に関わる、驚くべき宿命が隠されていたことが明らかになります。
映画のクライマックスで繰り広げられる、ベイルとレボックによるスキャン能力を駆使した壮絶なサイキック・バトルは、CGの存在しない時代における特殊効果の頂点として、今なお語り草となっています。

「スキャナーズ」のキャストと代表作

  • キャメロン・ベイル: スティーヴン・ラック (Stephen Lack)
    • 運命に翻弄される主人公のスキャナーを演じました。
      本作が彼の最も有名な出演作となっています。
    • 代表作: 『デッド・リング』(クレジットなし)、『エクストリーム・リミット』
  • ダリル・レボック: マイケル・アイアンサイド (Michael Ironside)
    • 圧倒的なカリスマと狂気を備えた、悪のカリスマスキャナーを怪演しました。
      この役で強烈な印象を残し、以降ハリウッドで名悪役として地位を確立します。
    • 代表作: 『トップガン』(ジェスター役)、『トータル・リコール』(リクター役)、『スターシップ・トゥルーパーズ』
  • ポール・ルース博士: パトリック・マクグーハン (Patrick McGoohan)
    • ベイルを導くコンセック社の博士。
      冷徹さと人間味を併せ持つ複雑な人物を演じました。
    • 代表作: 『プリズナーNo.6』(テレビシリーズ主演)、『ブレイブハート』(エドワード1世役)、『アルカトラズからの脱出』
  • キム・オブレスト: ジェニファー・オニール (Jennifer O’Neill)
    • ベイルと行動を共にする女性スキャナー。
    • 代表作: 『おもいでの夏(サマー・オブ・42)』(ドロシー役)、『殺意の香り』

「スキャナーズ」の評価と影響

『スキャナーズ』は、デヴィッド・クローネンバーグ監督にとって商業的な大成功を収めた作品となりました。
特に、本作で特殊メイクを担当したディック・スミスの技術は、映画界に革命をもたらしました。
映画の序盤、レボックがコンセック社のスキャナーの頭部をスキャン能力で破裂させるシーンは、あまりにもリアルで衝撃的であり、ホラー映画史における最も有名なシーンの一つとして知られています。
この「頭部破裂」の特殊効果は、後の多くの映画や(特に日本の)サブカルチャーに多大な影響を与え、数々のパロディやオマージュを生み出しました。
作品のテーマ性においても、クローネンバーグ監督が追求する「突然変異による新しい身体(ニュー・フレッシュ)」や、「既存の社会秩序と、そこから逸脱する異分子との対立」といったモチーフが明確に打ち出されています。
超能力(テレパシー)という目に見えない力を、血管が浮き出し、肉体が痙攣し、最終的には物理的に破壊するという、極めて生々しい「肉体(ボディ)」の問題として描いた点が、本作の革新性でした。
批評家からは、その過激なゴア描写(残虐描写)に対する賛否両論はあったものの、その独創的な世界観と緊迫感あふれるストーリーテリングは高く評価されました。
本作の成功により、クローネンバーグは『ヴィデオドローム』や『ザ・フライ』といった、彼のキャリアを代表する傑作群を監督する足がかりを掴みました。
また、『スキャナーズ』はカルト映画として確固たる地位を築き、後に『スキャナーズ2』、『スキャナーズ3』といった続編や、『スキャナー・コップ』などのスピンオフ作品も製作されました(これらにクローネンバーグは関与していません)。

「スキャナーズ」関連商品

公開から40年以上が経過した現在も、その人気は衰えず、様々なメディアで楽しむことができます。

  • Blu-ray: 『スキャナーズ 4Kレストア版』
    • 近年、高画質化されたバージョンが発売されており、当時の特殊メイクのディテールを鮮明に確認することができます。
  • DVD: 『スキャナーズ』
    • 廉価版やコレクターズ・エディションなど、様々な形態でリリースされています。
  • サウンドトラック: 『Scanners (Original Motion Picture Soundtrack)』
    • 音楽は、後にクローネンバーグ作品の常連となり、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作でアカデミー賞を受賞するハワード・ショアが担当しています。
      彼の初期の不協和音を多用した電子音楽は、映画の不穏な雰囲気を完璧に高めています。
  • デジタル配信: 各種動画配信サービス(VOD)にて、レンタルまたは購入の対象となっている場合があります。
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