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【徹底解説】映画『ジーリ』はなぜ「史上最低」なのか?あらすじから結末、ベニファー騒動とラジー賞の裏側まで総まとめ

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【徹底解説】映画『ジーリ』はなぜ「史上最低」なのか?あらすじから結末、ベニファー騒動とラジー賞の裏側まで総まとめ

概要:ハリウッド史に燦然と輝く(?)大コケ映画の金字塔

映画『ジーリ』(原題:Gigli)は、2003年に公開されたアメリカのロマンティック・コメディおよび犯罪映画です。
主演を務めたのは、当時実生活でも婚約し、「ベニファー」という愛称で呼ばれ世界中のタブロイド紙とメディアを毎日賑わせていたトップスター、ベン・アフレックとジェニファー・ロペスです。
監督および脚本を務めたのは、『ビバリーヒルズ・コップ』や『ミッドナイト・ラン』、そしてアル・パチーノにアカデミー賞をもたらした名作『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』などを手掛けてきたハリウッド屈指の名匠、マーティン・ブレストです。
物語は、ロサンゼルスの三流マフィアであるジーリが、ボスの命令で知的障害のある青年を誘拐する任務を命じられ、お目付け役として送り込まれた美しきレズビアンの殺し屋リッキーと共に奇妙な共同生活を送るうちに惹かれ合うというものです。
これだけの一流の才能と約5,400万ドル(一説には7,000万ドル以上)という巨額の製作費が投じられたにもかかわらず、本作は公開されるや否や批評家や観客から「歴史的な大惨事」として徹底的な酷評を浴びることになります。
アメリカ国内の興行収入はわずか約600万ドルにとどまり、スタジオに莫大な赤字をもたらしました。
その結果、その年の最低映画を決める第24回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)において、「最低作品賞」「最低監督賞」「最低主演男優賞」「最低主演女優賞」「最低脚本賞」「最低スクリーンカップル賞」の主要6部門を史上初めて独占するという不名誉な記録を打ち立てました。
さらに、2010年には「2000年代最低コメディ賞(この10年で最もひどいコメディ映画)」という特別賞まで授与され、名実ともに「ラジー賞の殿堂入り」を果たしています。
しかし、「どれほどひどいのか一度は見てみたい」という野次馬根性をくすぐる圧倒的な悪名高さから、現在でもある種のカルト的な知名度を誇っている不思議な作品でもあります。
本記事では、映画史に永遠に語り継がれるであろう伝説の大失敗作『ジーリ』のあらすじや、ツッコミどころ満載のシーン、豪華すぎるカメオ出演、そして名匠のキャリアを終わらせてしまった悲劇の裏側までを徹底的に深掘りして解説していきます。

予告編:スターの無駄遣いと迷走の予感をチェック

詳細(徹底解説):迷走するマフィアと、的外れなロマンスの行方

あらすじと世界観:誘拐犯と殺し屋の奇妙な疑似家族

物語の主人公であるラリー・ジーリ(ベン・アフレック)は、ロサンゼルスで活動する威勢はいいがどこか抜けているチンピラマフィアです。
ある日、彼はボスのルイスから、マフィアを厳しく追及している連邦検事の気を引く(脅迫する)ために、検事の弟であり知的障害を持つ青年ブライアン(ジャスティン・バーサ)を誘拐するという重大な任務を命じられます。
ジーリは精神病院からあっさりとブライアンを連れ出すことに成功し、自分のアパートの部屋に彼を監禁します。
しかし、ジーリの能力に強い不安を抱いたボスは、彼を監視し任務を確実に遂行させるための「助っ人」として、フリーランスの凄腕の殺し屋であるリッキー(ジェニファー・ロペス)をジーリの部屋へと派遣します。
突然現れた美しくミステリアスなリッキーに、ジーリは一目で心を奪われ、なんとか彼女を口説き落とそうとあの手この手でアプローチを試みます。
ところが、リッキーはヨガや東洋思想に傾倒する風変わりな女性であるだけでなく、「私は筋金入りのレズビアンよ」と宣言し、ジーリの誘いを冷酷に突っぱねます。
全く反りの合わない二人でしたが、純粋で無邪気なブライアンの世話をし、彼を海に連れ出したりハンバーガーを食べさせたりするうちに、3人の間には奇妙な「疑似家族」のような温かい絆が生まれ始めます。
そんな中、状況が急変し、焦ったボスから「ブライアンの親指を切り落として、検事に送りつけろ」という残酷極まりない命令が下されます。
マフィアとしての任務と、無垢なブライアンへの愛情との間で激しく葛藤するジーリとリッキー。
さらに、大物マフィアのボスであるスタークマン(アル・パチーノ)などが事態に介入してきことで、彼らは組織から追われる身となってしまいます。
最終的に、彼らはブライアンの親指を切り落とすふりをして組織を欺き、彼を無事に病院へと送り届けます。
そして、絶対に男性に興味がなかったはずのリッキーが、なぜかジーリの優しさと男気に心変わりして彼を深く愛するようになり、二人は車でロサンゼルスを後にして幸せな逃避行へと旅立っていくのでした。

特筆すべき見どころ:歴史に残る「七面鳥の時間」と、名優の独演会

本作を伝説たらしめている最大の要因は、ジェニファー・ロペスとベン・アフレックが繰り広げる、映画史に残る「寒すぎるロマンスのセリフ」の数々です。
特に、頑なに男を拒んでいたリッキーが突然ジーリをベッドに誘うシーンで放つ、「It’s turkey time. Gobble, gobble.(七面鳥の時間よ。ゴブル、ゴブル)」という迷台詞は、多くの批評家から「観ていて顔から火が出るほど恥ずかしい」と評され、現在でもアメリカのポップカルチャーにおける最悪のセリフの代名詞として揶揄されています。
二人の間には実生活で燃え上がるようなロマンスがあったはずですが、なぜかスクリーン上では驚くほどケミストリー(相性の良さ)が感じられず、ただただ気まずい空気が流れる点も本作の奇妙な魅力(?)です。
一方で、本作には映画ファンの度肝を抜くような大御所俳優のカメオ出演が用意されています。
映画の中盤、アパートを捜査しに来る謎の刑事スタンリー・ジャコベリス役としてクリストファー・ウォーケンが登場し、物語の本筋とは全く関係のない「パイの話」を数分間にわたって延々と語り続けるという狂気の独演会を披露します。
さらにクライマックスでは、アル・パチーノがマフィアの大ボスであるスタークマン役として登場し、怒り狂いながら哲学的な(しかし全く意味の通らない)長台詞を叫び続けるという怪演を見せつけます。
彼らの登場シーンは映画全体からは完全に浮き上がっていますが、名優たちの圧倒的なオーラと「なぜこの映画に出演してしまったのか」という戸惑いが画面から滲み出ており、ある意味で最高に見応えのあるシーンとなっています。

制作秘話・トリビア:ベニファー騒動と、名匠のキャリアの終焉

本作がこれほどまでの大失敗を招いてしまった最大の理由は、当時の「ベニファー(ベンとジェニファー)」を取り巻く、異常なまでのメディアの過熱報道にありました。
実生活での二人の熱愛、豪華な婚約指輪、そして派手なゴシップが毎日のようにタブロイド紙やテレビを賑わせていたため、観客は映画を観る前からすでに彼らの関係に完全に「食傷気味」となっていました。
「もう彼らのイチャイチャは見たくない」という世間の冷めた空気が、そのまま映画への猛烈なバッシングへと直結してしまったのです。
さらに悲劇的だったのは、この世間の空気に焦った映画スタジオ(レボリューション・スタジオ)が、監督であるマーティン・ブレストから最終編集権を強引に奪い取ってしまったことです。
ブレスト監督のオリジナル脚本は、ジーリが最後にマフィアに殺されるというダークでシリアスな犯罪ドラマを意図していたと言われています。
しかし、スタジオ側は「ベニファーの人気にあやかり、明るいロマンティック・コメディにしなければ売れない」と判断し、物語の結末を含めて大幅な再編集と追加撮影を強行しました。
その結果、シリアスな犯罪要素と、ふざけたラブコメ要素が完全に水と油のように分離し、誰が観ても辻褄が合わない散漫なフランケンシュタインのような映画が完成してしまったのです。
この作品の歴史的な大惨敗に深く傷ついたマーティン・ブレスト監督は、本作を最後にハリウッドから完全に姿を消し、以降一本も映画を撮っていません。
映画史に残る傑作を数多く生み出してきた名匠のキャリアを、タブロイド紙のゴシップとスタジオの横槍が終わらせてしまったという事実は、ハリウッドの残酷さを象徴する非常に悲しいエピソードです。

キャストとキャラクター紹介:大コケ映画に集った哀しきスターたち

ラリー・ジーリ:ベン・アフレック / 吹替:堀内賢雄など

ロサンゼルスの三流マフィアで、口ばかり達者ですが肝心なところで詰めが甘い男です。
凄腕の殺し屋を気取っていますが、実際には人を殺したこともなく、根は心優しい青年です。
リッキーに一目惚れし、彼女がレズビアンであると知ってもあの手この手で口説き落とそうと奮闘します。
当時のベン・アフレックの「自信満々だがどこか空回りしている」というパブリックイメージがそのまま反映されたようなキャラクターであり、彼が放つ寒いジョークの数々は観る者を凍りつかせます。

リッキー:ジェニファー・ロペス / 吹替:田中敦子など

ジーリの監視役として組織から送り込まれた、フリーの凄腕の女性殺し屋です。
ヨガのポーズで瞑想し、東洋思想を語るなど、殺し屋らしからぬスピリチュアルな一面を持ち、さらにはレズビアンであることを公言しています。
しかし、映画の後半で「完璧な男性器官を持つ男なら愛せる」という、ジェンダーやセクシュアリティの観点から現在では激しい批判を浴びるであろう無理のある理屈で、あっさりとジーリに心変わりしてしまいます。
ジェニファー・ロペスの圧倒的な美貌とスタイルの良さだけが、彼女のキャラクターの唯一の説得力となっています。

ブライアン:ジャスティン・バーサ / 吹替:浪川大輔など

連邦検事の弟であり、ジーリに誘拐される知的障害を持つ青年です。
テレビ番組の『ベイウォッチ』に異常な執着を持っており、ドラマのテーマ曲を歌ったり、女性の胸に過剰に反応したりする描写が続きます。
彼の存在がジーリとリッキーの心を結びつける重要な役割を果たしますが、その描かれ方が非常にステレオタイプであり、一部から批判の対象となりました。
後に映画『ハングオーバー!』シリーズのダグ役でブレイクするジャスティン・バーサの、初々しい(そして体を張った)演技が見られます。

スタークマン:アル・パチーノ / 吹替:野沢那智など

ロサンゼルスを裏で牛耳る大物マフィアのボスです。
映画のクライマックスに突如として登場し、自分の命令に背いたジーリたちに向かって、狂気と威厳に満ちた(しかし意味のよく分からない)長台詞をまくし立てます。
ブレスト監督の『セント・オブ・ウーマン』でオスカーを獲得した恩返しとしてのカメオ出演だったと思われますが、彼の圧倒的な演技力をもってしても、この映画の破綻した脚本を救うことはできませんでした。

スタンリー・ジャコベリス刑事:クリストファー・ウォーケン / 吹替:有本欽隆など

誘拐事件の捜査でジーリのアパートを訪れる不気味な刑事です。
突然、エイリアンや宇宙、そして「パイ」についての支離滅裂な持論を展開し、ジーリたち(と観客)を完全にポカンとさせます。
クリストファー・ウォーケン特有の奇妙な間合いとアクセントが炸裂する、映画本編から完全に独立したショートコントのような迷シーンです。

キャストの代表作品と経歴:どん底からの見事な復活劇

主演のベン・アフレックは、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー賞脚本賞を受賞し、若き天才として脚光を浴びました。
しかし、本作『ジーリ』や『デアデビル』『ペイチェック 消された記憶』など、2000年代初頭の彼は出演作が次々と酷評されるという深刻なキャリアの低迷期(暗黒期)に陥ってしまいます。
それでも彼は諦めることなく、自ら監督業に進出することで活路を見出し、2012年の監督・主演作『アルゴ』で見事アカデミー賞作品賞を受賞するという、ハリウッド史に残る劇的な大復活を遂げました。
ヒロインのジェニファー・ロペスもまた、歌手として世界的成功を収める一方で、女優としては本作の失敗によりラジー賞の常連となってしまう時期がありました。
しかし、その後もパワフルに活動を続け、2019年の映画『ハスラーズ』での圧巻の演技により数々の映画賞にノミネートされ、真の実力派エンターテイナーであることを世界に証明しました。
なお、「ベニファー」の二人は本作の公開後に婚約を破棄し破局してしまいましたが、なんと約20年の時を経た2022年に奇跡の復縁を果たし、結婚に至りました(その後、再び離婚申請をするなど、彼らの人生そのものが映画のような波乱万丈さです)。

まとめ(社会的評価と影響):愛すべき(?)歴史的失敗作の教訓

映画『ジーリ』は、映画批評サイトRotten Tomatoesにおいて長らく一桁台の支持率をさまよっており、純粋な映画の評価として擁護することは非常に困難な作品です。
ラジー賞で主要6部門を独占したという事実は、この映画がどれほど当時の観客の期待を裏切り、怒りを買ったかの証明でもあります。
「製作費の掛け間違い」「メディアへの過剰露出によるタレントの消費」「スタジオによる監督への不当な介入」など、本作はハリウッドの映画製作における「やってはいけない失敗例」のすべてが詰まった教科書のような存在です。
しかし、映画というものは不思議なもので、あまりにもひどすぎると逆に一種のエンターテインメントへと昇華されることがあります。
現在では、友人たちとお酒を飲みながら、「七面鳥の時間よ」のセリフで爆笑し、アル・パチーノの無駄遣いにツッコミを入れるための「極上のZ級コメディ」として、一部の映画ファンから深く(そして歪んだ形で)愛され続けています。
名匠マーティン・ブレストのキャリアを終わらせてしまったという悲しい歴史的背景を踏まえつつも、90年代から00年代への転換期におけるハリウッドの狂騒を記録したカルト映画として、一度は観ておいて損はない(かもしれない)伝説の一本です。

作品関連商品:伝説の迷台詞をご自宅で確認

  • 『ジーリ』DVD / 配信:現在ではなかなかお目にかかれない希少なパッケージとなっています。ベン・アフレックとジェニファー・ロペスの若き日の姿と、全く噛み合っていない二人のロマンスを高画質で確認できる、映画ファン(あるいはラジー賞マニア)必携のアイテムです。
  • オリジナル・サウンドトラック(CD):ジョン・パウエルが作曲を手掛けた、ラテンの陽気なリズムと哀愁漂うギターの音色が美しいサウンドトラックです。映画本編の散漫な出来とは裏腹に、音楽単体としての評価は決して低くありません。
  • 映画『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』Blu-ray:マーティン・ブレスト監督とアル・パチーノがタッグを組んだ、映画史に輝く不朽の感動作です。この素晴らしい名作を作り上げた監督が、なぜ数年後に『ジーリ』という怪作を生み出してしまったのか。その深淵なる謎に思いを馳せるためにも、併せて鑑賞することを強く推奨します。
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