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【徹底解説】スペースバンパイアの評価は?あらすじ・キャスト・結末考察

SF
この記事は約20分で読めます。

ハレー彗星の中に隠れていた巨大宇宙船、そこで眠っていた全裸の美女、そして生命力を吸い尽くされてミイラ化していくロンドンの人々。
1985年公開の『スペースバンパイア』は、一度観たら忘れられない強烈なイメージで、今もカルト映画として語り継がれている作品です。

監督は『悪魔のいけにえ』『ポルターガイスト』のトビー・フーパー、脚本は『エイリアン』のダン・オバノン。
これだけの顔ぶれと巨額の予算がありながら、公開当時は興行的に大失敗に終わりました。
なぜこの映画は失敗し、そしてなぜ40年たった今も愛されているのでしょうか。
英語圏のインタビューや資料をもとに、その裏側まで深く掘り下げます。

  • 『スペースバンパイア』のあらすじと独特の世界観(ネタバレなし)
  • キャノン・フィルムズの野望と、撮影現場の知られざる裏話
  • マチルダ・メイ、パトリック・スチュワートらキャストの経歴とエピソード
  • Rotten Tomatoes・IMDbなど海外の評価と、結末の考察
  1. 作品の基本情報
  2. 作品の概要
  3. 予告編
  4. あらすじと世界観(ネタバレなし)
  5. 見どころ
    1. ジョン・ダイクストラによる圧巻の特撮
    2. ミイラ化する犠牲者の特殊メイク
    3. マチルダ・メイの圧倒的な存在感
    4. ヘンリー・マンシーニの壮大な音楽
    5. 英国怪奇映画の伝統を受け継ぐ物語
  6. 制作秘話・トリビア
    1. タイトルは公開直前まで『スペース・バンパイア』だった
    2. 監督候補は別にいた
    3. 出演を断った意外な有名人
    4. 主演女優探しは難航した
    5. 撮影は大幅に遅れ、予算も膨らんだ
    6. 宇宙船のモデルはアーティチョーク
    7. パトリック・スチュワートの「初めてのキス」
    8. 音楽の差し替えと『ダイ・ハード2』
    9. 3つのバージョンが存在する
    10. 原作者コリン・ウィルソンは不満だった
  7. キャストとキャラクター紹介
    1. トム・カールセン大佐(演:スティーヴ・レイルズバック/吹替:松橋登)
    2. コリン・ケイン大佐(演:ピーター・ファース/吹替:山路和弘)
    3. ハンス・ファラダ博士(演:フランク・フィンレイ/吹替:勝部演之)
    4. 宇宙の女吸血鬼(演:マチルダ・メイ/吹替:日野由利加)
    5. アームストロング博士(演:パトリック・スチュワート/吹替:たかお鷹)
  8. 主要キャスト・スタッフの経歴と代表作
    1. 監督:トビー・フーパー(Tobe Hooper)
    2. スティーヴ・レイルズバック(Steve Railsback)
    3. マチルダ・メイ(Mathilda May)
    4. ピーター・ファース(Peter Firth)
    5. パトリック・スチュワート(Patrick Stewart)
    6. 脚本:ダン・オバノン(Dan O’Bannon)
  9. 結末と考察(ネタバレあり)
    1. 結末のあらすじ
    2. 考察:カールセンは敗れたのか、救ったのか
    3. 考察:吸血鬼伝説の「起源」という発想
    4. 考察:生命力と性のメタファー
  10. 海外の評価と反響
    1. 評価スコア(2026年11月時点)
    2. 受賞歴
    3. 批評家の評価
    4. 興行面での失敗とキャノンへの影響
    5. カルト映画としての再評価
    6. 日本での反響
  11. よくある質問(FAQ)
    1. 『スペースバンパイア』はどこで見られますか?
    2. 原作はありますか?
    3. 上映時間が資料によって違うのはなぜですか?
    4. 続編やリメイクはありますか?
    5. 子どもと一緒に観ても大丈夫ですか?
  12. まとめ
  13. 関連商品
  14. 参考リスト
    1. 共有:

作品の基本情報

項目 内容
原題 Lifeforce
邦題 スペースバンパイア
制作国 イギリス(資料によってはイギリス・アメリカ合作)
公開年 1985年(アメリカ:6月21日/日本:8月10日)
ジャンル SFホラー
監督 トビー・フーパー
脚本 ダン・オバノン、ドン・ジャコビー
原作 コリン・ウィルソン『宇宙ヴァンパイアー(The Space Vampires)』(1976年)
製作 メナヘム・ゴーラン、ヨーラム・グローバス
音楽 ヘンリー・マンシーニ
制作会社・配給 キャノン・フィルムズ(米国配給:トライスター・ピクチャーズ/日本配給:日本ヘラルド映画)
上映時間 米国劇場公開版 約101分/インターナショナル版 約116分
日本での視聴方法 Amazonプライム・ビデオで配信(2026年11月時点)

作品の概要

『スペースバンパイア』は、宇宙から来た吸血鬼が人間の「生命力(ライフフォース)」を吸い取り、ロンドンを壊滅状態に追い込んでいくSFホラーです。
血ではなく生命エネルギーそのものを奪う吸血鬼という設定は、古典的な吸血鬼伝説を宇宙規模に拡大した、きわめて大胆なアイデアでした。

制作したのは、1980年代に低予算アクション映画で急成長したキャノン・フィルムズ(Cannon Films)です。
社長のメナヘム・ゴーラン(Menahem Golan)とヨーラム・グローバス(Yoram Globus)は、B級映画会社というイメージから脱却するため、大作路線に打って出ます。
その目玉として、『ポルターガイスト』をヒットさせたばかりのトビー・フーパーと3本の監督契約を結びました。
本作はその1本目で、当時のキャノンとしては最大となる2,500万ドルの予算が投じられています。

フーパーは、キャノンから2,500万ドルと自由な裁量、そしてコリン・ウィルソンの小説を渡されたと振り返っています。
原作は21世紀を舞台にしていましたが、フーパーは時代を現代に移し、1986年に地球へ接近するハレー彗星を物語に取り込みました。
彗星ブームのさなかに公開するという、タイミングを狙った企画でもあったのです。

ところが結果は、全米興行収入約1,160万ドルと、予算の半分にも届かない大失敗に終わりました。
批評家の評価も厳しいものでしたが、その後ビデオやテレビ放送を通じて再評価が進み、現在では1980年代を代表するカルトSFホラーの一本に数えられています。

おすすめしたいのは、ハマー・フィルム(英国の老舗ホラー映画会社)の怪奇映画や『エイリアン』のような宇宙ホラーが好きな方、そして80年代の手作り特撮の迫力を味わいたい方です。
なお、性的な描写と全裸のシーンが非常に多い作品なので、家族と一緒に観る際には注意が必要です。

予告編

あらすじと世界観(ネタバレなし)

ハレー彗星の調査に向かった英米合同の宇宙船チャーチル号は、彗星の中に隠れていた全長約150マイル(約240km)にも及ぶ巨大な宇宙船を発見します。
船長のトム・カールセン大佐と乗組員が内部を探索すると、そこには干からびたコウモリのような異星生物の死骸が無数に漂っていました。
さらに奥には、ガラスのようなカプセルに眠る人間そっくりの男女3体が安置されていたのです。

チャーチル号は3体を回収しますが、その後、地球との交信が途絶えてしまいます。
救助に向かったアメリカの宇宙船が見つけたのは、火災で焼け焦げた船内と乗組員の遺体、そして無傷のまま残されたカプセルだけでした。

カプセルはロンドンの欧州宇宙研究センターへ運ばれます。
しかし解剖を前に、女性の異星人が突然目を覚まし、警備員の生命力を一瞬で吸い取ってしまいます。
彼女は施設を抜け出してロンドンの街へと姿を消し、事態は国家を揺るがす非常事態へと発展していきます。

本作の大きな特徴は、物語の舞台が次々と移り変わっていくことです。
冒頭は『2001年宇宙の旅』を思わせる宇宙SF、中盤はイギリスの郊外や精神病院を舞台にした捜査サスペンス、そして終盤はロンドン全体がパニックに陥る終末スペクタクルへと変化します。
1本の映画の中でジャンルがまるごと入れ替わっていくような構成は、観る人によって「破綻している」とも「唯一無二」とも評される、本作ならではの持ち味です。

もう一つの重要な設定が、吸血鬼に生命力を吸われた犠牲者が、約2時間後には自らも他人の生命力を求めて襲いかかる存在になってしまうことです。
この「感染」によって被害は爆発的に広がり、ゾンビ映画のような展開へとつながっていきます。

見どころ

ジョン・ダイクストラによる圧巻の特撮

視覚効果を担当したのは、『スター・ウォーズ』でアカデミー賞を受賞したジョン・ダイクストラ(John Dykstra)です。
冒頭の巨大宇宙船の内部、聖堂のような空間に浮かぶカプセル、終盤にロンドン上空へ立ち上る青白いエネルギーの柱など、CG以前の手作り特撮ならではの重量感があります。
本作の特殊効果は、1986年のシッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀特殊効果賞に輝きました。

ミイラ化する犠牲者の特殊メイク

生命力を吸われた人間が一瞬で干からびていく描写は、本作最大のトラウマシーンと言えるでしょう。
メイクアップ効果を担当したのはニック・メイリー(Nick Maley)で、俳優の全身型を取って精巧なダミーを製作しました。
干からびた死体がうめき声をあげて再び動き出す場面は、今観てもかなりの衝撃があります。

マチルダ・メイの圧倒的な存在感

宇宙吸血鬼の女性を演じたのは、当時ほぼ無名だったフランスのマチルダ・メイです。
セリフはわずかで、劇中のほとんどを全裸で過ごす役どころですが、バレエで鍛えた身のこなしによって、人間離れした妖しさを表現しています。
彼女はこの1本で、一躍国際的なセックスシンボルとなりました。

ヘンリー・マンシーニの壮大な音楽

『ピンク・パンサー』『ティファニーで朝食を』で知られるヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini)が、ロンドン交響楽団とともに重厚なスコアを書き上げています。
軽妙なイメージの強いマンシーニとしては異色の、勇ましく壮大なメインテーマは、日本でも今なおテレビ番組のBGMなどで耳にする機会があります。

英国怪奇映画の伝統を受け継ぐ物語

宇宙人の存在が人類の古い伝説の起源だった、という発想は、英国の名作SFホラー『火星人地球大襲撃(Quatermass and the Pit)』からの影響がたびたび指摘されています。
フーパー自身も、本作を「70ミリで撮るハマー映画」にしたかったと語っています。
宇宙SFと英国ゴシックホラーが融合した独特の空気感は、ハリウッド製SFにはない魅力です。

制作秘話・トリビア

タイトルは公開直前まで『スペース・バンパイア』だった

本作は原作どおり『The Space Vampires』のタイトルで制作が進められていました。
しかしキャノンは、このタイトルでは自社の低予算B級映画のように見えてしまうと考え、公開直前に『Lifeforce』へ変更します。
フーパーは後年、ジャンル映画のファンに向けた作品なのだから『Space Vampires』のままにすべきだった、そうすれば観客の受け止め方も違っていたはずだと振り返っています。
日本ではむしろ原作に近い『スペースバンパイア』の邦題で公開されたのが興味深いところです。

監督候補は別にいた

この企画は、もともと『狼よさらば』のマイケル・ウィナー(Michael Winner)監督に打診されていました。
一方のフーパーは、キャノンと契約を結ぶために、予定していたゾンビ映画『バタリアン(The Return of the Living Dead)』の監督を降板しています。
その結果、『バタリアン』は脚本家のダン・オバノン自身が監督することになりました。
本作の脚本を書いたオバノンが、同じ1985年に監督デビューを果たしたという、不思議なめぐり合わせです。

出演を断った意外な有名人

ロック歌手のビリー・アイドル(Billy Idol)は、1984年にフーパーから吸血鬼役のオファーを受けたものの、ツアーと重なったため断ったと語っています。
また、名優ジョン・ギールグッド(John Gielgud)も出演を打診されましたが、ギャラが減額されたことで辞退したといわれています。

主演女優探しは難航した

宇宙吸血鬼の役は全編ほぼ全裸という条件だったため、イギリスやアメリカで数百人がオーディションを受けたものの、引き受けられる女優がなかなか見つかりませんでした。
最終的に選ばれたのが、パリ国立高等音楽・舞踊学校でバレエを学んだマチルダ・メイです。
撮影当時18歳だった彼女にとって、裸での撮影は大きな負担を伴うものでした。

撮影は大幅に遅れ、予算も膨らんだ

撮影は1984年2月2日にイギリスで始まり、17週間の予定が5週間も延びました。
男性吸血鬼役のビル・マリン(Bill Malin)によると、重要なシーンの中には結局撮影されなかったものもあり、スタジオの資金が尽きて撮影が一時中断したこともあったそうです。

宇宙船のモデルはアーティチョーク

巨大な異星の宇宙船は、野菜のアーティチョークを参考にデザインされました。
また、終盤に登場する崩壊したロンドンのミニチュアは、イギリス南部ドーセット州にあった閉園済みのミニチュアテーマパーク「タクトニア(Tucktonia)」の模型を流用したものと伝えられています。
セント・ポール大聖堂から立ち上るエネルギーの柱は、黒いベルベットを背景に撮影した再帰反射素材を前面投影し、葉巻の煙を加えて作られました。

パトリック・スチュワートの「初めてのキス」

後に『新スタートレック』のピカード艦長役で世界的スターとなるパトリック・スチュワートは、本作で精神病院の院長アームストロング博士を演じています。
劇中、宇宙吸血鬼に体を乗っ取られたアームストロング博士が、主人公カールセンと口づけを交わす場面があります。
Blu-rayの特典映像によれば、これがスチュワートにとって映像作品での初めてのキスシーンで、相手は主演のスティーヴ・レイルズバックでした。

音楽の差し替えと『ダイ・ハード2』

当初、音楽はジェームズ・ホーナー(James Horner)に依頼される予定でした。
最終的にはマンシーニが担当しましたが、アメリカ公開版では一部の曲がマイケル・ケイメン(Michael Kamen)らによる追加曲に差し替えられています。
このケイメンの追加曲の一部は、後に『ダイ・ハード2』で流用されたといわれています。

3つのバージョンが存在する

フーパーが最初に編集したバージョンは128分ありました。
その後、インターナショナル版として116分に短縮され、さらにアメリカ配給を担当したトライスターが、宇宙船チャーチル号のシーンを中心に大幅にカットした101分の劇場公開版を作っています。
現在のBlu-rayでは、劇場公開版とインターナショナル版の両方を観られるものが主流です。

原作者コリン・ウィルソンは不満だった

原作者のコリン・ウィルソン(Colin Wilson)は、映画の出来に満足していませんでした。
友人で作家のジョン・ファウルズ(John Fowles)に「あなたの『魔術師』の映画化よりもひどい映画ができあがった」という趣旨のはがきを送ったという逸話が残っています。
ただし、少なくとも全裸のシーンだけはたっぷりあったと、皮肉まじりに語ってもいます。

キャストとキャラクター紹介

トム・カールセン大佐(演:スティーヴ・レイルズバック/吹替:松橋登)

宇宙船チャーチル号の船長で、異星の宇宙船を発見した張本人です。
宇宙で女吸血鬼と遭遇して以来、彼女と精神的につながってしまい、その魅力と恐怖の間で揺れ動きます。
罪悪感と執着を抱えながら事件の核心へ迫っていく、物語のキーパーソンです。
テレビ朝日の旧吹替版では津嘉山正種さんが声を担当しました。

コリン・ケイン大佐(演:ピーター・ファース/吹替:山路和弘)

イギリス陸軍の特殊空挺部隊SAS(Special Air Service)に所属する将校で、事件の捜査を指揮します。
冷静沈着で皮肉の効いた言動が魅力の、典型的な英国紳士タイプのヒーローです。
カールセンとともに吸血鬼を追い、壊滅寸前のロンドンで最後まで戦い抜きます。

ハンス・ファラダ博士(演:フランク・フィンレイ/吹替:勝部演之)

欧州宇宙研究センターの科学者で、異星人の正体解明に取り組みます。
生命力を吸われた犠牲者の変化を科学的に観察し、吸血鬼たちの能力や弱点を探っていく、物語の解説役でもあります。
理性的な学者でありながら、未知の存在への好奇心に突き動かされる人物です。

宇宙の女吸血鬼(演:マチルダ・メイ/吹替:日野由利加)

カプセルで眠っていた3体の異星人のうちの女性で、クレジット上の役名は「スペース・ガール(Space Girl)」です。
相手の心の中にある理想の女性像を映し出して誘惑し、生命力を吸い取ります。
さらに、他人の肉体へ乗り移る能力も持ち、捜査陣を翻弄し続けます。

アームストロング博士(演:パトリック・スチュワート/吹替:たかお鷹)

イングランド北部ヨークシャーにある精神病院の院長です。
登場時間は長くありませんが、物語の流れを大きく変える重要な場面を担っています。
ピカード艦長以前のスチュワートの、鬼気迫る演技が見られる貴重な役です。

主要キャスト・スタッフの経歴と代表作

監督:トビー・フーパー(Tobe Hooper)

1943年、アメリカ・テキサス州生まれの映画監督です。
1974年、超低予算で撮った『悪魔のいけにえ』が世界的な大ヒットとなり、ホラー映画の歴史を塗り替えました。
その後もテレビ映画『死霊伝説(Salem’s Lot)』、『ファンハウス/惨劇の館』、スティーヴン・スピルバーグ製作の『ポルターガイスト』を手がけています。

ただ、『ポルターガイスト』については「実際に演出したのはスピルバーグだったのでは」という噂がつきまとい、フーパーは自らの実力を示す必要に迫られていました。
本作は、その名誉挽回を懸けた大作でもあったのです。
キャノンとの契約では、本作に続いて『スペースインベーダー(Invaders from Mars)』『悪魔のいけにえ2』を監督しましたが、いずれも予算は縮小されていきました。
フーパーは2017年に74歳で亡くなっています。

スティーヴ・レイルズバック(Steve Railsback)

1945年、アメリカ・テキサス州生まれの俳優です。
1976年のテレビ映画『ヘルター・スケルター』で、カルト指導者チャールズ・マンソンを演じて強烈な印象を残しました。
1980年の『スタントマン』でも主演を務めています。

本作の後、レイルズバックには殺人鬼の役ばかりが舞い込むようになったそうです。
役柄が固定されることを恐れた彼は、それらをすべて断り、1年以上仕事をしなかった時期があったと、Blu-rayの特典インタビューで振り返っています。

マチルダ・メイ(Mathilda May)

1965年、フランス・パリ生まれの女優です。
父は劇作家、母はスウェーデン出身のバレエ指導者という芸術一家に育ち、8歳からバレエを学んで16歳でパリの名門校のダンス部門で一等賞を受賞しました。
本作で国際的に注目された後は、主にフランス映画界で活躍しています。

代表作には、クロード・シャブロル監督の『ふくろうの叫び』(1987年)や、ブルース・ウィリス主演のハリウッド映画『ジャッカル』(1997年)などがあります。
近年は舞台の脚本・演出も手がけ、セリフを使わず動きと音楽だけで物語を描く舞台作品で高い評価を得ています。

ピーター・ファース(Peter Firth)

1953年、イギリス生まれの俳優です。
1977年の映画『エクウス』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、若手実力派として注目を集めました。
後年はイギリスの人気スパイドラマ『MI-5 英国機密諜報部(Spooks)』で、全シーズンに出演した諜報部の上司ハリー・ピアース役で広く知られています。

パトリック・スチュワート(Patrick Stewart)

1940年、イギリス生まれの俳優です。
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで長く舞台俳優として活躍した後、1987年から『新スタートレック』のジャン=リュック・ピカード艦長を演じて世界的スターとなりました。
映画『X-MEN』シリーズのプロフェッサーX役でも知られ、本作は彼のハリウッドブレイク前の貴重な出演作として、海外のファンの間でたびたび話題にのぼります。

脚本:ダン・オバノン(Dan O’Bannon)

『エイリアン』(1979年)の脚本で知られる脚本家です。
本作と同じ1985年には『バタリアン』で監督デビューも果たしました。
共同脚本のドン・ジャコビー(Don Jakoby)とは、『ブルーサンダー』や『スペースインベーダー』でもコンビを組んでいます。

結末と考察(ネタバレあり)

⚠️ここから先はネタバレを含みます

結末のあらすじ

ロンドンでは、生き残っていた男性吸血鬼2体が人々を次々と襲い、市街は戒厳令が敷かれる大混乱に陥ります。
吸血鬼たちが集めた生命力は女吸血鬼へと集められ、彼女はそれをセント・ポール大聖堂から光の柱として、地球の上空で待機する巨大宇宙船へ送り続けていました。

カールセンは、吸血鬼の弱点が「心臓の少し下」にあり、鉛と鉄でできた刃で貫けば倒せることを知ります。
大聖堂で女吸血鬼と再会したカールセンは、彼女と抱き合ったまま自らの体ごと刃を突き刺します。
2人はエネルギーの柱を昇って宇宙船へと消え、宇宙船は再びハレー彗星の中へ戻っていきます。
その光景を、地上からケイン大佐が見送るところで物語は終わります。

考察:カールセンは敗れたのか、救ったのか

劇中では、カールセンが宇宙で女吸血鬼と出会った時点で、2人はすでに一体の存在になっていたことが示唆されます。
彼が最後に選んだ行動は、地球を救うための自己犠牲であると同時に、抗いがたい欲望に身を委ねる行為でもありました。
英雄的な勝利とも、魅入られた男の破滅とも読める、あいまいな結末です。

考察:吸血鬼伝説の「起源」という発想

本作では、地球に古くから伝わる吸血鬼伝説が、太古に地球を訪れた異星の存在の記憶だったと語られます。
彗星が周期的に地球へ近づくたびに、人類は吸血鬼の脅威にさらされてきたのかもしれません。
宇宙船が再び彗星へ戻っていくラストは、この悪夢が約76年後に繰り返される可能性を暗示しているとも受け取れます。

考察:生命力と性のメタファー

生命力を吸い取る行為が、常に抱擁や口づけとして描かれる点も見逃せません。
原作者ウィルソンは、人間の意識や生命力の問題を探求した思想家として知られる人物です。
映画版はその哲学的な部分をかなり省略していますが、欲望によって生命を奪われるという構図には、性と死を結びつける古典的な吸血鬼像が色濃く残っています。

海外の評価と反響

評価スコア(2026年11月時点)

  • Rotten Tomatoes:Tomatometer(批評家スコア)58%(33件)/Popcornmeter(観客スコア)46%
  • IMDb:6.2/10
  • Metacritic:Metascore(批評家スコア)50/100(12件)

受賞歴

1986年のシッチェス・カタロニア国際映画祭で、ジョン・ダイクストラの特殊効果が最優秀特殊効果賞を受賞しました。

批評家の評価

公開当時、アメリカの批評家の評価は総じて厳しいものでした。
ニューヨーク・タイムズのジャネット・マスリン(Janet Maslin)は、本作を「hysterical vampire porn(ヒステリックな吸血鬼ポルノ)」と酷評しています。
一方で、映画評論家のジーン・シスケル(Gene Siskel)は4つ星中3つ星をつけ、後ろめたいけれど楽しめる映画として評価しました。
レナード・マルティン(Leonard Maltin)も、まったくむちゃくちゃだが目が離せないという趣旨の評価を下しています。

評価が大きく割れたことを象徴するのが、1985年末の英国映画誌「サイト・アンド・サウンド(Sight and Sound)」の批評家投票です。
本作は、ある批評家の年間ベスト10に選ばれた一方で、別の批評家からは年間ワーストに挙げられました。

褒められた点として多く挙がるのは、ダイクストラの特撮、ニック・メイリーの特殊メイク、マンシーニの音楽、そして予測不能なほどスケールが膨らんでいく物語の勢いです。
批判されたのは、まとまりを欠いた脚本、過剰なヌード描写、そして唐突に感じられる展開でした。
フーパー自身も後年、映像の見栄えは素晴らしかったが、脚本が欠けていたと認めています。

興行面での失敗とキャノンへの影響

本作はアメリカで公開初週4位にとどまり、同じ週に公開されたロン・ハワード監督の『コクーン』に大きく水をあけられました。
同じハリウッドの夏に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ランボー/怒りの脱出』が控えていたことも、不利に働いたといわれています。
本作とフーパーの続く2作品の不振は、キャノン・フィルムズの経営悪化の一因になったとたびたび指摘されています。

カルト映画としての再評価

公開後、本作はビデオやテレビ放送を通じて少しずつファンを増やしていきました。
2013年にはアメリカのスクリーム・ファクトリー、イギリスのアロー・ビデオから特典満載のBlu-rayが発売され、さらに2022年と2025年には4K UHD版も登場しています。
アメリカの人気映画レビューYouTubeチャンネル「レッドレターメディア(Red Letter Media)」の企画でも取り上げられるなど、今では「愛すべき怪作」として定着しています。

2013年には、エンタメ制作会社リングリーダー・スタジオ(Ringleader Studios)がウィルソンの原作のドラマ化権を取得し、同じ『Lifeforce』のタイトルでテレビシリーズ化を企画していると報じられました。
ただし、その後シリーズが実現したという情報は確認できていません。

日本での反響

日本では、テレビ朝日の『日曜洋画劇場』で1987年から2005年までに計5回放送され、多くの人がテレビで本作に触れました。
解説の淀川長治さんが、作品の内容よりもマチルダ・メイの裸身について熱く語ったというエピソードは、日本の映画ファンの間で語り草になっています。
海外では「評価の割れる怪作」という位置づけが強い一方、日本ではテレビ放送の思い出とともに、懐かしい80年代SFホラーとして親しまれている印象です。

よくある質問(FAQ)

『スペースバンパイア』はどこで見られますか?

2026年11月時点では、Amazonプライム・ビデオで配信されています。
見放題かレンタルかは時期によって変わるため、視聴前に配信ページで確認してください。
ディスクでは、キングレコードから発売されたBlu-rayもあります。

原作はありますか?

イギリスの作家コリン・ウィルソンが1976年に発表した小説『宇宙ヴァンパイアー(The Space Vampires)』が原作です。
日本では新潮文庫から刊行され、映画公開に合わせて『スペース・バンパイア』と改題されました。
映画とは舞台設定や結末が大きく異なり、哲学的な要素が強い内容になっています。

上映時間が資料によって違うのはなぜですか?

本作には、約101分のアメリカ劇場公開版と、約116分のインターナショナル版が存在するためです。
アメリカ公開版は宇宙船内のシーンを中心に大幅にカットされています。
物語をじっくり味わいたい方には、インターナショナル版がおすすめです。

続編やリメイクはありますか?

映画の続編は制作されていません。
2013年に原作のテレビシリーズ化が報じられましたが、2026年11月時点で実現したという情報は確認できていません。

子どもと一緒に観ても大丈夫ですか?

全裸のシーンや性的な描写、ミイラ化する死体などのショッキングな映像が多く含まれています。
アメリカではR指定、イギリスでは18歳以上指定の作品なので、お子さんとの視聴には向いていません。

まとめ

『スペースバンパイア』は、トビー・フーパー、ダン・オバノン、ジョン・ダイクストラ、ヘンリー・マンシーニという一流の才能が集まりながら、興行的には大失敗に終わった、映画史上でもまれな作品です。
宇宙SF、捜査サスペンス、ゾンビパニック、ゴシックホラーが1本の中で次々と入れ替わる構成は、整った映画を求める人には破綻して見えるかもしれません。

しかし、その過剰さこそが本作の魅力です。
CGのない時代に手作りで生み出された特撮、忘れがたいマチルダ・メイの存在感、壮大なマンシーニの音楽、そしてピカード艦長になる前のパトリック・スチュワートの怪演。
どの要素を切り取っても、ほかの映画では味わえない体験が詰まっています。

80年代の特撮映画が好きな方、英国怪奇映画の雰囲気を愛する方、そして「失敗作」と呼ばれた映画の中に光るものを見つけるのが好きな方に、ぜひ一度観ていただきたい作品です。
かつて『日曜洋画劇場』で観たという方も、インターナショナル版で改めて観直すと、新たな発見があるはずです。

関連商品

  • Blu-ray『スペースバンパイア《最終盤》』(キングレコード、2018年11月14日発売、2枚組。インターナショナル版と劇場公開版を収録し、テレビ放映時の日本語吹替音声も収録)
  • Blu-ray『スペースバンパイア』通常版(キングレコード、2018年11月14日発売)
  • 小説『宇宙ヴァンパイアー』(コリン・ウィルソン著、新潮文庫。映画公開時に『スペース・バンパイア』と改題)

参考リスト

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