PR

【徹底解説】『巴里のアメリカ人』 (An American in Paris) の評価は?ラスト17分の伝説的ダンスと名曲の秘密を総まとめ!

ミュージカル
この記事は約11分で読めます。

概要

ハリウッド・ミュージカル黄金期を象徴する、映画史に燦然と輝く最高傑作『巴里のアメリカ人』 (An American in Paris)。
本作は、天才作曲家ジョージ・ガーシュウィンの同名交響詩をモチーフに、1951年にMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)によって製作されたアメリカのミュージカル映画です。
監督を務めたのは、色彩の魔術師とも呼ばれ、後に『恋の手ほどき』なども手掛ける巨匠ヴィンセント・ミネリ。
そして主演と振付を担当したのは、ミュージカル映画界の王様にして類まれなる身体能力を持つスター、ジーン・ケリーです。
第二次世界大戦後の芸術の都パリを舞台に、アメリカ人の退役軍人である貧乏画家と、可憐なフランス人女性とのロマンチックな恋模様が、全編を彩るガーシュウィンの名曲とともに描かれます。
第24回アカデミー賞では、見事「作品賞」に輝いたほか、脚本賞、撮影賞(カラー)、ミュージカル映画音楽賞、美術賞(カラー)、衣裳デザイン賞(カラー)の計6部門を独占するという圧倒的な評価を受けました。
さらに、ジーン・ケリーの多大な功績に対してはアカデミー名誉賞も授与されています。
当時のハリウッドが持つ莫大な予算と最高の才能が結集した本作のハイライトは、何と言ってもセリフを一切排し、音楽とダンスだけで男女の愛と葛藤を描き切った「ラスト17分のバレエシーン」です。
フランスの印象派絵画をオマージュした絢爛豪華なセットのなかで繰り広げられるこのシークエンスは、映画表現の限界を打ち破った芸術作品として今なお語り継がれています。
本記事では、この不朽の名作『巴里のアメリカ人』のあらすじや奥深い見どころ、制作の裏側から、豪華キャストの魅力に至るまで、ネタバレを交えながら徹底的に深掘りして解説していきます。
ミュージカル映画を愛するすべての人に捧ぐ、魔法のような映像体験の秘密を解き明かしましょう。

予告編

詳細(徹底解説)

あらすじと世界観

物語の舞台は、第二次世界大戦終結から数年が経過したフランスの首都、パリ。
アメリカ人の退役軍人ジェリー・マリガンは、画家としての成功を夢見てパリに残り、モンマルトルの狭く古いアパートで貧乏暮らしをしていました。
彼の隣人であり親友のアダム・クックは、才能はあるものの万年金欠のピアニストで、二人は芸術談義に花を咲かせながらも日々のパン代に苦労する日々を送っています。
ある日、ジェリーはアメリカからやってきた裕福な女性ミロ・ロバーツに見初められ、彼女のパトロンとしての支援を受けることになります。
ミロはジェリーの絵の才能だけでなく、彼自身にも好意を寄せており、ジェリーも絵を売るために彼女との関係を断ち切れないでいました。
そんな折、ジェリーはキャバレーで香水売りをしている若く美しいフランス人女性、リーズ・ブーヴィエと出会い、一目で激しい恋に落ちます。
パリの街角やセーヌ河畔で逢瀬を重ね、二人は互いに深く惹かれ合っていきます。
しかし、リーズにはジェリーに言えない重大な秘密がありました。
実は彼女は、大戦中にナチスの迫害から自分を匿い、命を救ってくれた恩人である人気歌手、アンリ・ボレルと婚約していたのです。
しかも運命のいたずらか、アンリはジェリーの親友アダムの古くからの友人でもありました。
ジェリーはリーズへの愛とミロからの支援への義理の間で揺れ動き、リーズもまた、心から愛するジェリーと、命の恩人であり結婚を約束したアンリとの間で激しい罪悪感と葛藤に苛まれます。
芸術の都を舞台に、愛と恩義が複雑に絡み合う大人たちの四角関係が、ガーシュウィンの軽快でロマンチックな旋律に乗せて切なくも美しく紡がれていきます。

ラスト17分の奇跡!圧巻のバレエシーンと美術表現

本作を映画史における不滅の傑作たらしめている最大の要因は、物語のクライマックスに用意された「約17分間に及ぶセリフなしのバレエシーン」です。
このシークエンスは、ジェリーがリーズを失った深い悲しみと絶望の中で見る「白昼夢」として描かれます。
制作費のおよそ半分(当時の金額で約50万ドル)をこの17分のために注ぎ込んだと言われるほど、MGMが総力を挙げて作り上げた伝説的な場面です。
ヴィンセント・ミネリ監督と美術監督のプレストン・エイムズは、ジェリーの夢のなかのパリを表現するため、フランスを代表する6人の印象派・ポスト印象派の巨匠たちの画風を完全再現した巨大セットを組み上げました。
ラウル・デュフィの軽やかな線と色彩で描かれたコンコルド広場に始まり、ピエール=オーギュスト・ルノワールの花市、モーリス・ユトリロの静かなモンマルトルの裏路地、アンリ・ルソーのプリミティブな動物園、フィンセント・ファン・ゴッホの力強いタッチのオペラ座広場、そしてアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの退廃的なムーラン・ルージュの世界。
ジーン・ケリーとレスリー・キャロンは、それぞれの絵画の世界観に合わせた衣装を身に纏い、ガーシュウィンの交響詩『パリのアメリカ人』の変幻自在なメロディに乗せて、出会い、情熱的に愛し合い、そして別れゆく男女の運命を肉体言語のみで表現し尽くします。
映画というメディアが到達し得る最高の「総合芸術」の形が、この17分間に凝縮されているのです。

音楽:ジョージ・ガーシュウィンの名曲たち

本作は、1937年に若くしてこの世を去ったアメリカの天才作曲家、ジョージ・ガーシュウィンへの壮大なオマージュでもあります。
クラシックとジャズを融合させた彼特有の洗練された都会的なメロディが、映画全編にわたって魔法のような効果をもたらしています。
冒頭でジェリーが子どもたちと踊りながら歌う「アイ・ガット・リズム (I Got Rhythm)」の弾けるような楽しさ。
ジェリーとリーズがセーヌ河畔で愛を語り合いながら踊る「我が恋はここに (Our Love Is Here to Stay)」のロマンチックな陶酔感。
そして、アンリが華やかなステージで披露する「天国への階段 (I’ll Build a Stairway to Paradise)」の豪華絢爛さ。
これら数々の名曲を作詞したのは、ジョージの兄であるアイラ・ガーシュウィンであり、兄弟の遺した偉大なアメリカン・ソングブックが本作の背骨となっています。
さらに特筆すべきは、ピアニストのアダムを演じたオスカー・レヴァントの存在です。
彼は実際にガーシュウィンと生前親交が深かった本物の名ピアニストであり、劇中で彼が妄想のなかでオーケストラの全楽器と指揮者を一人でこなしながら「協奏曲ヘ調 (Concerto in F)」を演奏するコミカルなシーンは、映画ファンのみならずクラシック音楽ファンにとってもたまらない見どころとなっています。

制作秘話・トリビア

本作の制作陣がどれほど完璧主義であったかを示す有名なエピソードがあります。
実はこの映画、タイトルに「パリ」と入っていながら、ロケ撮影はほとんど行われておらず、背景の大部分はハリウッドにあるMGMスタジオの広大な敷地内に建てられたセットで撮影されました。
これは、当時のパリがまだ第二次世界大戦の戦禍から完全に復興しておらず、映画のトーンに合うような華やかで理想化された「夢のパリ」を実際の街角で撮影することが困難だったためです。
ヴィンセント・ミネリ監督は、本物のパリよりも「パリらしいパリ」をスタジオ内に創り上げることに心血を注ぎました。
また、ヒロインのリーズ役に抜擢されたレスリー・キャロンは、当時フランスのバレエ団で踊っていたまだ19歳の新人ダンサーでした。
ジーン・ケリーが彼女の才能に惚れ込み、ハリウッドへ呼び寄せて本作で映画デビューを飾らせたのです。
彼女は撮影当初、栄養失調による貧血に悩まされており、長時間の過酷なダンスシーンの撮影では何度も倒れそうになりながらも、持ち前の根性と表現力でジェリーのミューズを見事に演じ切りました。
キャロンの初々しくも生命力にあふれたダンスは、洗練されたケリーの動きと奇跡的な化学反応を起こしています。

キャストとキャラクター紹介

  • ジェリー・マリガン:ジーン・ケリー(吹替:宮本充 など)
    パリに居残ったアメリカ人の退役軍人であり、陽気で情熱的な画家。
    自身の才能に自信を持ちながらも、なかなか絵が売れずに苦労していますが、持ち前の明るさでパリの生活を楽しんでいます。
    ジーン・ケリー特有の、力強い肉体美とアスリートのようなダイナミックなタップダンス、そして親しみやすい笑顔が、ジェリーというキャラクターに圧倒的な生命力を吹き込んでいます。
    「アイ・ガット・リズム」での子どもたちとのタップダンスから、ラストの極限のバレエまで、彼の完璧な肉体表現に目を奪われます。
  • リーズ・ブーヴィエ:レスリー・キャロン(吹替:土井美加 など)
    パリのキャバレーで働く、若く可憐なフランス人女性。
    戦争孤児となり、命の恩人であるアンリとの結婚を義務だと感じていますが、ジェリーとの出会いによって本当の恋を知り、激しく苦悩します。
    レスリー・キャロンは本作が映画初出演でしたが、バレエ仕込みのしなやかで優雅な身のこなしと、小悪魔的なキュートさで世界中の観客を魅了しました。
  • アダム・クック:オスカー・レヴァント(吹替:石丸博也 など)
    ジェリーの親友であり、同じアパートに住む皮肉屋のピアニスト。
    長年パリでくすぶっており、コーヒーを飲む金にも困る生活を送りながら、友人の恋の悩みを聞き役として受け止めます。
    オスカー・レヴァント本人の類まれなるピアノテクニックと、少し気難しげでありながらもユーモラスな演技が、作品に絶妙なスパイスを与えています。
  • アンリ・ボレル:ジョルジュ・ゲタリ(吹替:小川真司 など)
    パリで人気の高いミュージックホールのスター歌手であり、リーズの婚約者。
    大戦中、危険を冒してリーズをナチスから匿い、彼女を心から愛し大切に守り続けてきた誠実で紳士的な大人の男性です。
    ジョルジュ・ゲタリの甘く豊かな歌声は、「天国への階段」の豪華なショーシーンで存分に堪能でき、彼が単なる恋敵ではない「もう一人の素晴らしい男」であることを証明しています。
  • ミロ・ロバーツ:ニナ・フォック(吹替:藤田淑子 など)
    裕福で洗練されたアメリカ人の未亡人で、ジェリーの才能を見出しパトロンとなる女性。
    ジェリーを愛し、彼を経済的に支援して個展を開かせようと奔走しますが、彼の心がリーズに向いていることに薄々気付き傷つきます。
    単なる嫌なスポンサーではなく、大人の女性としてのプライドと孤独を見事に演じており、物語に深みを与えています。

キャストの代表作品と経歴

ジーン・ケリー

フレッド・アステアと並び称される、ハリウッド・ミュージカル映画を代表する大スターであり天才振付師です。
アステアがシルクハットと燕尾服で軽やかに踊る貴族的なスタイルであったのに対し、ケリーはTシャツやセーラー服など労働者階級の衣装を好み、バレエやアクロバットを取り入れた力強くダイナミックなダンススタイルで人気を博しました。
『錨を上げて』(1945年)で実写とアニメーション(トムとジェリー)を融合させたダンスを披露して話題を呼び、本作『巴里のアメリカ人』(1951年)で頂点を極めます。
翌1952年には、ミュージカル映画の最高傑作と名高い『雨に唄えば』で主演・共同監督を務め、映画史に永遠に名をとどめる伝説的存在となりました。

レスリー・キャロン

フランス・パリ出身の女優・ダンサー。
ローラン・プティ率いるシャンゼリゼ・バレエ団で活動していたところをジーン・ケリーに見出され、本作で鮮烈なハリウッドデビューを果たしました。
その後も『足ながおじさん』(1955年)でフレッド・アステアと共演し、新旧のミュージカルスターの相手役を見事に務め上げました。
ヴィンセント・ミネリ監督と再びタッグを組んだ名作『恋の手ほどき(Gigi)』(1958年)では、お転婆な少女から優雅な淑女へと変貌を遂げるヒロインを魅力たっぷりに演じ、作品はアカデミー賞9部門を独占する大ヒットを記録しました。

まとめ(社会的評価と影響)

『巴里のアメリカ人』は、単なる娯楽ミュージカルの枠を大きく超え、「映画表現がどこまで芸術の高みに到達できるか」を証明した歴史的記念碑として、現在も揺るぎない評価を獲得しています。
米アカデミー賞において、ミュージカル映画が作品賞を受賞することは非常に珍しく、本作の受賞はそれがいかに革新的で芸術的価値が高かったかを物語っています。
とくにラストの17分間のバレエシークエンスは、後の映画監督たちに計り知れない影響を与えました。
デイミアン・チャゼル監督の大ヒットミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(2016年)のエピローグ(もしも二人が結ばれていたら、という夢想のダンスシーン)は、本作のバレエシーンへの直接的で熱烈なオマージュであることは映画ファンの間でよく知られています。
言葉では表現しきれない人間の複雑な感情や情熱を、色彩、音楽、そして肉体の躍動によって完璧に表現した本作。
何度観ても新たな発見があり、心を弾ませてくれる「映画の魔法」が詰まった、永遠のマスターピースです。

作品関連商品

本作の夢のような世界観や音楽をさらに深く味わうために、以下の関連商品も強くおすすめいたします。

  • 『巴里のアメリカ人』 デジタルリマスター版 Blu-ray / DVD
    テクニカラーの鮮やかな色彩が完璧に修復されたデジタルリマスター版は必見です。
    印象派絵画を模した巨大セットの細部の描き込みや、衣装デザインの美しさ、ダンサーたちの汗と筋肉の躍動までがクリアな画質で蘇り、ラスト17分のバレエシーンの没入感が格段に向上します。
  • オリジナル・サウンドトラックCD『An American in Paris』
    ジョージ・ガーシュウィンの天才的な楽曲群を堪能できるサウンドトラックです。
    映画の興奮がそのまま蘇るオーケストラアレンジは、部屋の空気を一気に1950年代の華やかなパリへと変えてくれます。ジャズとクラシックが見事に融合した歴史的名盤です。
  • 劇団四季 ミュージカル『パリのアメリカ人』関連グッズ・CD
    2014年にパリのシャトレ座で世界初演され、後にブロードウェイでも大ヒットを記録した舞台版『パリのアメリカ人』。
    日本でも劇団四季が上演し、大きな話題を呼びました。
    映画版をベースにしながらも、より現代的で洗練された舞台美術や新たな振付が楽しめるため、舞台版のCDやパンフレットをチェックして映画版と比較するのも非常に興味深いです。
タイトルとURLをコピーしました