概要
映画『バトルシップ』は、2012年に公開されたアメリカのSFアクション映画です。
玩具メーカーであるハスブロ社の伝統的なボードゲーム「レイダー戦艦ゲーム(Battleship)」を原案とし、『キングダム/見えざる敵』や『ローン・サバイバー』で知られるピーター・バーグ監督がメガホンを取りました。
巨額の製作費を投じて描かれる本作は、地球に襲来した謎のエイリアン(侵略者)の母船と、日米の護衛艦、そして往年の退役戦艦が人類の存亡を懸けて激突する、文字通りの海戦超大作です。
公開当時はその破天荒な展開と、SFでありながらクラシカルな「戦艦の戦い」にこだわった熱い演出が大きな話題を呼びました。
特に日本国内においては、自衛隊の艦長が主要キャラクターとして活躍することや、クライマックスで繰り出される驚愕の戦法から、今なおカルト的な人気を誇る作品となっています。
予告編
詳細(徹底解説)
あらすじと世界観
物語は2005年、地球外の生命体探査計画「ビーコン計画」によって、地球から遥か彼方にある「惑星G」に向けて強力な電波信号を送信することから始まります。
それから7年後の2012年、ハワイ沖でアメリカ海軍が主催する多国籍合同海上演習「RIMPAC(リムパック)」が開催されていました。
主人公のアレックス・ホッパーは、才能はあるものの不真面目でトラブルばかり起こしている海軍将校です。
彼は演習中、ライバルである海上自衛隊のイージス艦「みょうこう」の艦長・ナガタ一等海佐と激しい衝突を起こしてしまいます。
そんな中、ハワイ沖の海上に突如として巨大な5つの飛行物体が落下します。
それは、地球からの電波信号に呼応してやってきたエイリアンの先遣隊でした。
エイリアンはハワイ諸島周辺に巨大なエネルギー障壁(ドーム状のバリア)を展開し、演習中の最新鋭イージス艦3隻を完全に孤立させてしまいます。
バリアの内部に取り残されたアメリカ海軍の「ジョン・ポール・ジョーンズ」「サンプソン」、そして自衛隊の「みょうこう」は、圧倒的な科学力を誇るエイリアンの移動要塞との戦闘を余儀なくされます。
未知の誘導兵器や恐るべき破壊力を持つ回転鋸型の兵器「シュレッダー」の前に、最新鋭艦は次々と大破・沈没していきます。
アレックスの兄であり、サンプソンの艦長だったストーン・ホッパーも戦死し、アレックスは生き残った唯一の先任将校として、急遽「ジョン・ポール・ジョーンズ」の指揮を執ることになります。
絶望的な状況の中、アレックスはかつての宿敵であるナガタと手を組み、エイリアンの弱点を見抜くための奇策へと打って出ます。
最後の戦法は「敵前大回頭(トーゴー・ターン)」なのか?
本作のクライマックスにおいて、多くのミリタリーファンや映画ファンを熱狂させたのが、記念艦として保存されていた退役戦艦「USS ミズーリ(BB-63)」を再起動させて挑む最終決戦です。
最新鋭のイージス艦をすべて失ったアレックスたちは、真珠湾に浮かぶ、第二次世界大戦で活躍した本物の「戦艦(バトルシップ)」であるミズーリに乗り込みます。
電子制御が一切通用しないアナログな塊であるミズーリは、エイリアンのハッキングや電磁妨害の影響を受けない、人類最後の希望となったのです。
そして、エイリアンの巨大母船との一騎打ちの局面で、アレックスが命じた伝説的な戦法が展開されます。
「敵前大回頭(トーゴー・ターン)」についてですが、厳密に言えば、劇中で行われたのは「全速前進からの急制動(錨を落としての超信地旋回のような急旋回)」であり、歴史上のトーゴー・ターンそのものとは少しニュアンスが異なります。
しかし、この戦法が「トーゴー・ターン」と呼ばれるのには非常に深い理由と共通点があります。
歴史における「トーゴー・ターン(丁字戦法)」とは、日露戦争の日本海海戦(1905年)において、連合艦隊司令長官・東郷平八郎がロシアのバルチック艦隊に対して行った大胆不敵な戦術です。
敵の進路を遮るように自軍の艦隊を横一列に並べるため、敵前で大きく舵を切る(回頭する)という、一歩間違えれば集中砲火を浴びて全滅しかねない極めて危険な賭けでした。
映画『バトルシップ』におけるミズーリの機動も、まさにこれと同等の精神を持った戦術でした。
アレックスは、エイリアン母船の強力な正面火線をかわしつつ、ミズーリの全主砲(40.6cm3連装砲)を一斉に敵に向けるため、左舷の錨(アンカー)を全速前進の状態で海に叩き落とさせます。
これにより、巨艦ミズーリは強烈なブレーキがかかると同時に、その場で車でいう「ドリフト」のような大旋回を敢行しました。
敵の目の前で艦体を大きく傾けながら回頭し、側面の全火力を一瞬にして叩き込むその姿は、東郷平八郎の「敵前大回頭」が持つ「圧倒的なリスクを背負い、一撃必殺の陣形を整える」というカタルシスと完全に一致しています。
だからこそ、日本の視聴者やミリタリーファンの間では、敬意と興奮を込めてこのシーンが「トーゴー・ターン」や「アンカー・ターン」として語り継がれているのです。
特筆すべき見どころ
本作の最大の魅力は、前半の「最新鋭イージス艦による津波ブイを使った盲目的な索敵戦」から、後半の「アナログ戦艦によるガチンコ殴り合い」へのシフトにあります。
現代のハイテク戦争ではあり得ない、巨大な主砲の装薬を人間の手で担ぎ、アナログな照準器を覗き込んで発射する泥臭い描写が、かえって新鮮な興奮を生み出しています。
また、ミズーリを動かすために、かつてその艦に搭乗していた本物の「退役軍人(おじいちゃんたち)」が自発的に集まり、若い兵士たちと共に再び戦場へ赴くシーンは、映画史に残る屈指の激熱シークエンスです。
スティーヴ・ジャブロンスキーによる重厚で疾走感あふれるBGMや、伝説のロックバンド「AC/DC」の楽曲が流れる中、老兵と若者が一丸となって巨大な砲弾を装填する姿には、誰しもが胸を熱くすることでしょう。
制作秘話・トリビア
本作に登場する「USS ミズーリ」は、単なるCGではなく、実際に真珠湾に保存されている実物を使用して撮影が行われました。
撮影には実際の退役軍人の方々もエキストラとして参加しており、劇中の「老兵たちのリスペクト」は本物の熱量によって支えられています。
また、ピーター・バーグ監督はリアリティにこだわり、アメリカ海軍の全面協力を取り付けました。
劇中でアレックスたちに協力する義足の陸軍大尉ミック・カナルズを演じたグレゴリー・D・ガジソンは、実際のイラク戦争で両足を失った本物の退役軍人であり、彼の見せる迫真のアクションと佇まいは本作に深い人間ドラマの説得力を与えています。
キャストとキャラクター紹介
アレックス・ホッパー
演:テイラー・キッチュ/吹替:置鮎龍太郎
アメリカ海軍の将校で、のちに駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」の臨時艦長となります。元々は定職にも就かず、バーで一目惚れした女性のために不法侵入を犯すほどの問題児でしたが、兄の強制で海軍に入隊します。圧倒的な危機を前に、兄を失った悲しみを乗り越え、真の指揮官へと覚醒していく姿が描かれます。
ユウジ・ナガタ(永田 揚司)
演:浅野忠信/吹替:浅野忠信(本人)
海上自衛隊の護衛艦「みょうこう」の艦長(一等海佐)です。サッカーの試合や演習を通じてアレックスとは激しく対立していましたが、自艦を沈められた後はアレックスの艦に合流し、共に戦います。日本の伝統的な戦術や知識を活かし、エイリアンの探知方法を思いつくなど、事実上のダブル主人公として大活躍します。
ストーン・ホッパー
演:アレキサンダー・スカルスガルド/吹替:平川大輔
アレックスの兄であり、気鋭の駆逐艦「サンプソン」の艦長です。常に問題ばかり起こす弟を世話し、海軍へと導いた良き理解者でしたが、エイリアンの最初の容赦ない攻撃によって艦と共に運命を共にします。彼の死が、アレックスの心に火をつけることになります。
サマンサ・“サム”・シェーン
演:ブルックリン・デッカー/吹替:本名陽子
アレックスの恋人であり、理学療法士です。彼女の父親は、RIMPACの総指揮を執る海軍太平洋艦隊司令長官のシェーン提督(演:リーアム・ニーソン)であり、アレックスにとっては頭の上がらない存在です。ハワイの山頂にある電波施設がエイリアンに占拠された際、義足のミックと共に決死の抵抗を試みます。
レイクス
演:リアーナ/吹替:土屋アンナ
「ジョン・ポール・ジョーンズ」に勤務する勝気な女性兵曹です。武器の扱いに長けており、いかなる窮地にあっても怯むことなく、アレックスの指示に従って勇敢に砲座に立ち続けます。世界的ポップスターであるリアーナの映画初出演作としても大きな話題を呼びました。
キャストの代表作品と経歴
主人公を演じたテイラー・キッチュは、本作と同じ2012年に『ジョン・カーター』でも主演を務めた、当時のハリウッド期待の若手アクションスターです。
そして日本のファンにとって外せないのが、ナガタ艦長を演じた浅野忠信です。
彼は本作でハリウッド大作への本格進出を果たし、英語での堂々たる演技と、中盤以降の頼れる相棒としてのポジションを見事に演じきり、国内外で高い評価を受けました。
その後もマーベル映画『マイティ・ソー』シリーズのホーガン役など、国際派俳優としての地位を確固たるものにしています。
また、アレックスの兄を演じたアレキサンダー・スカルスガルドは、ドラマ『TRUE BLOOD』や映画『ターザン:REBORN』で主演を務める実力派であり、短い出演時間ながらも強烈な印象を残しました。
まとめ(社会的評価と影響)
公開当時の『バトルシップ』は、批評家からの評価(Rotten Tomatoesなど)においては、そのあまりにも大味でストレートなストーリー展開から厳しい声もありました。
しかし、映画ファンやミリタリーファンの間での評価は真逆であり、「これこそが男のロマンだ」「SF映画の皮をかぶった最高の熱血ミリタリー映画」として絶大な支持を獲得しています。
特に「ピンチに陥った若者を救うために、往年の名艦と老兵たちが立ち上がる」というプロットは、のちの様々なアクション映画やアニメ作品にも影響を与えました。
理屈抜きで楽しめ、アドレナリンが最高潮に達する爆音映画として、今なお多くの人々に愛され続ける不朽の娯楽作です。
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