『キャプテンスカーレット』の面白うんちく!リアル頭身の人形、不死身の秘密、豪華声優陣、「SIG」の意味まで徹底解説
『キャプテンスカーレット』の概要
『キャプテンスカーレット』(原題: Captain Scarlet and the Mysterons)は、1967年にイギリスのITCによって制作された特撮人形劇のテレビシリーズです。
『サンダーバード』の成功を受け、ジェリー・アンダーソンが次なるステップとして生み出した本作は、人形のリアルな造形と、シリアスでハードなストーリー展開が特徴です。
地球防衛組織「スペクトラム」と、火星から来た謎の存在「ミステロン」との絶望的な戦いを描き、日本でも1968年に放送され、そのダークな魅力とクールなメカデザインで人気を博しました。
『キャプテンスカーレット』の詳細うんちく
うんちく1: リアルな頭身に進化した「スーパーマリオネーション」
『サンダーバード』では、メカの操縦シーンを見やすくするために人形の頭部がデフォルメされていましたが、『キャプテンスカーレット』では技術がさらに進化。
人形のプロポーションが、デフォルメされた頭身から人間と同じリアルな8頭身に変更されました。
これにより、俳優が演じる実写ドラマのようなシリアスな雰囲気と、よりリアルなアクションシーンの撮影が可能になりました。
しかし、このリアル化により、人形の頭部に内蔵されていた「口を動かすための電磁石」の小型化が難しくなり、声優のセリフと口の動きを合わせる作業はさらに困難を極めたと言われています。
うんちく2: 主人公は「不死身」というハードな設定
本作の主人公、キャプテン・スカーレットは、第1話でいきなり敵であるミステロンに殺害され、複製(ミステロナイズ)されてしまいます。
ミステロンの手先としてスペクトラムを破壊しようとしますが、追跡戦闘車(SPV)での逃走中にロンドンの展望塔から転落。
この時の高所からの落下(と高圧電流)のショックにより、ミステロンの精神支配から奇跡的に解放され、人間の心を取り戻します。
しかし、ミステロンによる「複製(リペア)能力」だけは体に残ったため、彼は「不死身(indestructible)」の肉体を持つエージェントとして、人類のために戦うことになるのです。
「一度死んで敵に改造されたヒーロー」という設定は、日本の『仮面ライダー』にも通じる、非常にダークで革新的なものでした。
うんちく3: 敵は「声」と「二重の光の輪」のみ
本作の敵である「ミステロン」は、一切その姿を見せません。
彼らの存在は、ターゲットを映し出す「二重の光の輪」と、不気味に響き渡る犯行予告の「声」だけで表現されます。
毎回のオープニングで「ミステロンは、地球を征服するために、〇〇を破壊すると予告した…」と告げられるシークエンスは、視聴者に強烈なインパクトと恐怖を与えました。
うんちく4: “FAB”じゃない!「S.I.G.」の本当の意味
『サンダーバード』の国際救助隊が使う合言葉(コールサイン)「F.A.B.」は、”Fabulous”(素晴らしい)の略、あるいは特に意味のない造語でした。
しかし、『キャプテンスカーレット』のスペクトラムが使用する合言葉「S.I.G.」(エス・アイ・ジー)には、“Spectrum Is Green”(スペクトラムは緑=了解・異常なし)という明確な意味が設定されていました。
ちなみに、緊急事態発生時のコードは「S.I.R.」(エス・アイ・アール)で、これは “Spectrum Is Red”(スペクトラムは赤=緊急事態)の略でした。
うんちく5: 時代を先取りした女性戦闘機隊「エンゼル」
スペクトラムの主力迎撃戦闘機「エンゼル機(Angel Interceptor)」は、空中基地「クラウドベース」から発進します。
この強力な戦闘機部隊のパイロットは、「エンゼル・チーム」と呼ばれる全員女性の精鋭パイロットで構成されています。
リーダーの「コンチェルト・エンゼル」をはじめ、シンフォニー、メロディ、ラプソディ、ハーモニーと、全員が音楽に関連するコードネームで呼ばれていました。
1960年代の作品において、最前線で戦う戦闘機パイロットチームをすべて女性で構成するという設定は、非常に斬新で時代を先取りしていました。
うんちく6: 豪華すぎる「レジェンド声優」の競演
日本での放送時、そのシリアスな世界観を支えたのが、もはや「伝説」とも言える超豪華な吹き替え声優陣でした。
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キャプテン・スカーレット: 中田浩二(『電撃スパイ作戦』のクレイグ役など)
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キャプテン・ブルー: 羽佐間道夫(『電撃スパイ作戦』のリチャード役、ロッキーのスタローン役など)
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グリーン少尉: 野沢那智(アラン・ドロン、アル・パチーノ役など)
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マゼンタ大尉: 広川太一郎(『巨人の惑星』のバートン機長役、トニー・カーティス役など)
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ホワイト大佐: 真木恭介
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ブラック大尉: 加藤精三(『巨人の星』の星一徹役など)
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コンチェルト・エンゼル: 来宮良子(『スケバン刑事』のナレーションなど)
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ミステロンの声: 大木民夫
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ナレーター: 城達也(『ジェットストリーム』の初代パーソナリティ)
『電撃スパイ作戦』や『巨人の惑星』と共通する声優も多く、当時のITC作品がいかに声優陣に力を入れていたかがわかります。
うんちく7: シリアスすぎて1シーズンで終了
リアルな人形とハードなストーリーで高いクオリティを誇った『キャプテンスカーレット』ですが、『サンダーバード』のような明朗快活な「人命救助」とは異なり、「見えない敵による暗殺の阻止」というダークで難解なテーマが中心でした。
そのため、メインターゲットである子供たちからの支持が『サンダーバード』ほどは得られず、視聴率は伸び悩んだと言われています。
結果として、全32話(1シーズン)で制作は終了。ジェリー・アンダーソンは、次作『謎の円盤UFO』で、よりターゲットの年齢層を上げた実写SFドラマへと移行していくことになります。
参考動画
まとめ
『キャプテンスカーレット』は、ジェリー・アンダーソンが「人形劇」という枠組みの中で、リアリズムとシリアスなSFドラマを追求した野心作です。
「不死身のヒーロー」「姿なき敵」「女性だけの戦闘機隊」といった設定は、後の多くの作品に影響を与えました。
城達也のナレーションとレジェンド声優陣による名吹き替えは、日本版の価値を決定づけるものであり、わずか1シーズンの放送でありながら、今なお多くのファンに愛され続けるカルト的な傑作となっています。
関連トピック
ジェリー・アンダーソン (Gerry Anderson): 本作の製作総指揮。『サンダーバード』の成功を受け、本作を制作。この後、実写特撮『謎の円盤UFO』『スペース1999』へと移行します。
スーパーマリオネーション (Supermarionation): 本作で、人形の頭身がリアルな比率へと進化した、ジェリー・アンダーソン作品独自の特撮技術。
謎の円盤UFO: 『キャプテンスカーレット』の次に制作された実写SFドラマ。本作のシリアス路線をさらに発展させました。
スペクトラム追跡戦闘車 (SPV): 主人公たちが乗る強力な特殊車両。後ろ向きに運転席があるという独特のデザインと、その重量感ある特撮で高い人気を誇ります。
関連資料
『キャプテンスカーレット』コンプリートBOX (Blu-ray/DVD): 全32話を収録。日本版の貴重な吹き替え音声も楽しむことができます。
スペクトラム メカ・プラモデル: 追跡戦闘車(SPV)やエンゼル機などは、今なお根強い人気があり、国内外のメーカーからプラモデルが発売されています。
『新キャプテンスカーレット』: 2005年にジェリー・アンダーソンが制作したフルCGリメイク版。設定やストーリーはオリジナルと異なります。