概要
1984年に公開され、世界中の映画ファンに計り知れない衝撃を与えたSFアクション映画の歴史的傑作にして金字塔『ターミネーター』。
本作は、後に『タイタニック』や『アバター』といった超大作で幾度も映画史の興行収入記録を塗り替えることになる巨匠ジェームズ・キャメロン監督の実質的な出世作です。
未来の世界で反乱を起こした人工知能「スカイネット」が、人類抵抗軍のリーダーとなる人物の誕生を未然に防ぐため、過去の時代へ冷酷無比な暗殺サイボーグを送り込むという、当時としては極めて斬新で絶望的なタイムトラベルの設定を見事に描き出しました。
主演を務めたアーノルド・シュワルツェネッガーは、無表情で標的をどこまでも執拗に追い続ける殺人機械「T-800」を完璧に演じ切り、本作の大ヒットによって一躍ハリウッドを代表するトップアクションスターの座へと登り詰めました。
また、彼から命を狙われる平凡なウェイトレスのサラ・コナーと、未来から彼女を守るためにタイムスリップしてきた孤独な戦士カイル・リースとの間に芽生える、切なくも美しいロマンスも見逃せない重要な要素となっています。
総制作費わずか640万ドルという低予算のB級映画としてスタートした本作ですが、キャメロン監督の卓越したアイデアと特撮技術、そして息を呑むような緊迫感に満ちた演出により、公開されるやいなや世界中で社会現象を巻き起こしました。
「I’ll be back(また戻ってくる)」という映画史に残る有名な名台詞を生み出し、現在に至るまで続く巨大なフランチャイズの礎を築いた第1作目は、単なるアクション映画の枠を超えて、SFホラーとしても極めて高い評価を獲得しています。
本記事では、公開から数十年が経過した現在でも全く色褪せることなく、世界中の映画ファンに語り継がれている本作の魅力を、あらすじやタイムパラドックスの妙、撮影現場の裏話からキャスト陣の経歴に至るまで、多角的な視点から限界まで徹底的に深掘りして解説していきます。
オープニング
詳細(徹底解説)
あらすじと世界観
物語の舞台は、1984年のアメリカ・ロサンゼルスです。
ある夜、稲妻とともに未来から二人の男が全裸の姿で現代へとタイムスリップしてきます。
一人は、2029年の未来で人類を絶滅の危機に追いやっている人工知能「スカイネット」が送り込んだ、人間と全く同じ生体組織で金属骨格を覆った無敵の暗殺サイボーグ「ターミネーター(T-800)」でした。
彼の目的は、将来スカイネットを打ち倒す人類抵抗軍の偉大なリーダー、ジョン・コナーを産むことになる女性「サラ・コナー」を抹殺することです。
もう一人は、その計画を阻止しサラの命を守るため、ジョンの右腕として未来から志願してやってきた人類抵抗軍の兵士、カイル・リースでした。
ターミネーターは電話帳の「サラ・コナー」という名前の女性を順番に冷酷に殺害していき、ついに本物のサラをディスコ「テクノワール」で追い詰めます。
間一髪のところでカイルに命を救われたサラは、自分が未来の救世主の母親になるという信じがたい事実を告げられ、パニックに陥りながらも、無敵の殺人機械からの終わりのない逃亡劇を繰り広げることになります。
本作の世界観は、夜のロサンゼルスの冷たく無機質なアスファルトや、ネオンの光が反射する路地裏の風景など、「テック・ノワール」と呼ばれる暗く退廃的な雰囲気に包まれているのが最大の特徴です。
警察署すら単身で壊滅させるターミネーターの圧倒的な暴力と、核戦争によって荒廃した2029年の未来のビジョンが交錯し、観る者に息つく暇もない絶望感を与え続けます。
シーズン/章ごとの展開
本作の大成功により、『ターミネーター』は映画史に残る長大なSFフランチャイズへと見事な成長を遂げました。
1991年に公開された続編『ターミネーター2(T2)』では、前作の悪役であったシュワルツェネッガーが主人公の守護者として登場するという画期的なプロットを採用し、映画史上初となる本格的なCG技術(液体金属のT-1000)を導入して世界的な特大ヒットを記録しました。
この『T2』によって、シリーズは前作のSFスリラー路線から、誰もが楽しめるハリウッドの超大作エンターテインメントへとジャンルを大きく転換させることになります。
その後も、女性ターミネーターが登場する『ターミネーター3』(2003年)や、未来の戦争そのものを描いた『ターミネーター4(サルベーション)』(2009年)、時間軸をリブートした『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015年)などが次々と制作されました。
さらに2019年には、キャメロン監督が製作に復帰し、『T2』の直接的な続編としてリンダ・ハミルトンがサラ・コナー役に復帰した『ターミネーター:ニュー・フェイト(ダーク・フェイト)』が公開されるなど、時代を超えて語り継がれています。
時代や監督が変わるごとに物語のタイムラインは複雑に分岐していますが、すべての原点であり、最も純粋な恐怖とサスペンスを描き切った第1作目の評価は、シリーズの中でも常に特別な位置を占め続けています。
特筆すべき見どころ
本作を不朽の名作たらしめている最大の要因は、CG技術が存在しなかった時代に、特殊メイクの巨匠スタン・ウィンストンが生み出した驚異的なプラクティカル・エフェクト(実写特撮)の数々です。
特に、映画の終盤で炎の中から金属の骨格(エンドスケルトン)を剥き出しにして立ち上がり、ストップモーション・アニメーション特有の不気味なコマ送りで迫り来るターミネーターの姿は、観客にトラウマ級の恐怖を植え付けました。
また、シュワルツェネッガーが自らの損傷した眼球をメスでえぐり出し、赤い人工の目が現れるシーンの生々しさは、低予算だからこそ生まれた創意工夫の結晶と言えます。
ストーリー面においては、未来から来たカイル・リースが、自分が守るべきサラ・コナーと愛し合い、結果的に未来の救世主ジョンの父親になるという、完璧に計算された「タイムパラドックス」の伏線回収が非常に見事です。
宿命と自由意志の間で揺れ動きながらも、ただのウェイトレスから自立した強い戦士へと覚醒していくサラの成長ドラマは、その後の映画界における「戦うヒロイン」の絶対的なロールモデルとなりました。
ブラッド・フィーデルが手掛けた、金属を叩くような無機質で重厚なシンセサイザーのメインテーマも、機械の冷徹さと人類の悲壮な決意を見事に表現しており、映画音楽史に残る名曲として愛されています。
制作秘話・トリビア
本作が誕生したきっかけは、ジェームズ・キャメロン監督が別の映画の撮影でイタリアのローマに滞在していた際、高熱にうなされて見た「炎の中から銀色の金属骨格を持った殺人鬼が這い出してくる」という悪夢だったとされています。
キャメロンはこの強烈なイメージをもとに脚本を書き上げましたが、無名の監督であったため資金集めは難航を極めました。
キャスティングにおいても数々の逸話が残されており、当初ターミネーター役にはO.J.シンプソンやランス・ヘンリクセンが候補に挙がっており、シュワルツェネッガーはカイル・リース役としてオーディションに呼ばれていました。
しかし、ランチミーティングでキャメロン監督と意気投合したシュワルツェネッガーがターミネーターの動かし方について熱く語ったことで、監督は彼こそが完璧な殺人機械であると確信し、配役が急遽変更されたのです。
また、映画史に残る名台詞「I’ll be back」について、シュワルツェネッガーは当初「I will be back」の方が機械らしくて良いと主張して監督と口論になりましたが、最終的には監督の指示に従い、結果として世界で最も有名な映画の台詞の一つとなりました。
キャストとキャラクター紹介
- ターミネーター(T-800):アーノルド・シュワルツェネッガー/玄田哲章など
スカイネットによって2029年の未来から1984年のロサンゼルスへと送り込まれた、サイボーグ暗殺兵器です。
人間の皮膚や組織で覆われているため外見は人間と全く区別がつきませんが、その内側には超合金の骨格が隠されており、一切の感情や痛みを持たず、プログラムされた標的を抹殺するまで絶対に止まることはありません。
圧倒的な怪力とあらゆる銃器を完璧に使いこなす戦闘能力を持ち、警察署を単身で襲撃して数十人の警官を皆殺しにするシーンは、映画史に残る最も恐ろしい暴力描写の一つです。 - サラ・コナー:リンダ・ハミルトン/戸田恵子など
ロサンゼルスのレストランでウェイトレスとして働く、ごく普通の平凡で少し頼りない若い女性です。
突然、未来から来た無敵の殺人機械に命を狙われるという不条理な恐怖に直面しますが、カイルと共に逃亡する過酷な経験を通じて、自らの内に秘められた驚異的な生存本能と母性を開花させていきます。
物語の結末で、未来の息子ジョンに向けて音声テープを吹き込みながら、嵐の荒野へと車を走らせる彼女の逞しい横顔は、後の戦士としての覚醒を力強く予感させます。 - カイル・リース:マイケル・ビーン/石丸博也など
未来の人類抵抗軍に所属する歴戦の兵士であり、リーダーであるジョン・コナーの命令でサラを守るために1984年にタイムスリップしてきました。
幼い頃から機械との絶望的な戦争しか知らないため、身体中には激しい戦闘による無数の傷跡があり、常に神経を尖らせて周囲を警戒しています。
ジョンから渡された一枚の色褪せたポスターのサラの写真を見て密かに彼女に恋焦がれており、時空を超えてその愛を伝える彼の純真な姿は、本作の重苦しい物語に深い感動とロマンティシズムを与えています。
キャストの代表作品と経歴
アーノルド・シュワルツェネッガー
オーストリア出身で、ボディビルの世界大会で数々のタイトルを獲得した後にハリウッド映画界へと進出しました。
本作での圧倒的な存在感によってアクションスターとしての地位を不動のものとし、その後も『プレデター』『コマンドー』『トータル・リコール』など、数え切れないほどのブロックバスター映画で主演を務めました。
後年には政治家へと転身し、カリフォルニア州知事を二期務めるなど、アメリカン・ドリームを文字通り体現した世界的なスーパースターです。
リンダ・ハミルトン
本作でのサラ・コナー役で一躍世界的な知名度を獲得し、続く『ターミネーター2』では過酷な筋力トレーニングで完璧に鍛え上げられた肉体を披露し、「戦う強い母親」の象徴として映画史にその名を深く刻み込みました。
その後もパニック映画の大作『ダンテズ・ピーク』などに出演し、タフで自立した女性キャラクターを演じさせたら右に出る者はいない確固たる評価を確立しています。
マイケル・ビーン
本作でカイル・リースを熱演し、傷ついた孤独な戦士の悲哀を見事に表現して多くの映画ファンの心を掴みました。
その後もジェームズ・キャメロン監督からの信頼が厚く、『エイリアン2』での頼れるヒックス伍長役や、『アビス』での精神に異常を来す海軍特殊部隊のコフィ大尉役など、キャメロン作品に欠かせない名バイプレイヤーとして強烈な印象を残しています。
まとめ(社会的評価と影響)
映画『ターミネーター』は、公開当時その低予算を感じさせない革新的な特撮と卓越した脚本が高く評価され、アメリカ国内で初登場から2週連続で興行収入1位を獲得する大サプライズとなりました。
世界最大の辛口批評家サイトとして知られるRotten Tomatoesにおいても、公開から数十年が経過した現在でも驚異的な100%のパーフェクトスコアを維持し続けており、時代を超えて「SFアクション映画の完璧な教科書」としての評価を確固たるものにしています。
さらに、文化的・歴史的・美学的に極めて重要な意味を持つ作品として、2008年にはアメリカ議会図書館によってアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存作品として登録されるという名誉ある快挙を成し遂げました。
「AIの暴走による人類の危機」という本作が提示したダークなテーマは、テクノロジーが急速に発達した現代社会においてますます現実味を帯びており、その予見性の高さには驚かされるばかりです。
逃げ場のない恐怖を描いたB級ホラーの精神と、時間旅行の壮大なSFロマンが見事に融合した本作は、後世の無数の映画やビデオゲーム、アニメーション作品に多大なるインスピレーションを与え続けている、映画史に燦然と輝く永遠のマスターピースです。
作品関連商品
本作の緻密で冷たい世界観を自宅で最高の画質と音質で堪能するためには、色鮮やかに修復された『ターミネーター:日本語吹替完全版 4K Ultra HD+ブルーレイ』がコレクターの間で必須のアイテムとなっています。
また、米国の有名フィギュアメーカーであるNECA社からは、警察署襲撃時のサングラスとレザージャケット姿のT-800や、エンドスケルトンの精密なアクションフィギュアが多数発売されており、その恐ろしい造形美から現在でも圧倒的な人気を誇っています。
さらに、ブラッド・フィーデルが手掛けた、金属の打撃音とシンセサイザーが絡み合う不穏な劇伴を完全収録した『ターミネーター オリジナル・サウンドトラック(リマスター版)』のCDやアナログレコードも発売されており、部屋を暗くして聴くだけでスカイネットの恐怖をいつでも追体験できる素晴らしい名盤となっています。
SF映画の歴史を学ぶ上で絶対に避けては通れない本作の関連書籍やメイキング本も多数出版されており、映像とテキストの両面からキャメロン監督の若き日の狂気と才能を味わい尽くすことが可能です。
