YouTubeで観る「テンセント版ドラマ『三体』」- 原作完全再現と評価される傑作SF
概要: テンセント版『三体』とは?
テンセント版ドラマ『三体』は、中国のSF作家・劉慈欣(リウ・ツーシン)による世界的大ベストセラー小説『三体』三部作の第一部を、驚異的な忠実度で映像化した実写ドラマシリーズです。
2023年に中国のテンセントビデオ(Tencent Video)で配信が開始され、その圧倒的なスケールと原作への深いリスペクトが、世界中の原作ファンから絶賛されました。
物語は2007年の中国から始まります。
ナノマテリアル研究者の汪淼(ワン・ミャオ)が、世界各地で相次ぐ科学者の謎の自殺事件の調査を依頼されたことをきっかけに、VRゲーム「三体」の世界へと足を踏み入れます。
それと並行し、1960年代の文化大革命時代に、一人の若き天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)が下した、人類の運命を揺るがす重大な決断が描かれます。
現代と過去、そしてVRゲームの世界が交錯しながら、地球文明が直面する未曾有の危機が徐々に明らかになっていく、壮大なSF群像劇です。
オープニング: 重厚な世界観を示すテーマ曲
詳細: 全30話で描く原作への徹底した忠実さ
テンセント版ドラマ『三体』は、全30話という長尺を活かし、原作小説第一部の詳細なプロットと複雑な科学理論を、極めて丁寧に映像化している点が最大の特徴です。
監督は楊磊(ヤン・レイ)が務め、脚本は田良良(ティエン・リャンリャン)と陳晨(チェン・チェン)が担当しました。
特に評価が高いのは、作中のキーとなるVRゲーム「三体」のシーンです。
原作で描かれた「三つの太陽を持つ不安定な世界」の文明が、滅亡と再生を繰り返す様子を、迫力あるVFXで忠実に再現しています。
「人力コンピューター」のシーンなど、難解でありながらも物語の核心を突くガジェットやアイデアを、視聴者に分かりやすく、かつ壮大に提示することに成功しました。
また、Netflix版が原作を大胆に再構成し、舞台や登場人物を国際色豊かにアレンジしたのに対し、テンセント版はあくまで原作の舞台である現代中国と、文化大革命期の中国を真正面から描き切っています。
このため、原作が持つ独特の空気感や、中国の歴史的背景が色濃く反映された作品となっています。
キャストと登場人物
主要キャスト
- 汪淼 (ワン・ミャオ): 張魯一 (チャン・ルーイー)
(ナノマテリアル研究者。一連の事件の謎を追う本作の主人公の一人) - 史強 (シー・チアン): 于和偉 (ユー・ホーウェイ)
(元テロ対策専門の刑事。粗野だが卓越した行動力で汪淼をサポートする) - 葉文潔 (イエ・ウェンジエ) – 老年期: 陳瑾 (チェン・ジン)
(天体物理学者。物語の鍵を握る重要人物) - 葉文潔 (イエ・ウェンジエ) – 青年期: 王子文 (ワン・ズーウェン)
(文化大革命時代に絶望を経験し、ある決断を下す) - 常偉思 (チャン・ウェイスー): 林永健 (リン・ヨンジエン)
(地球防衛司令部「作戦センター」の責任者。史強の上官) - 申玉菲 (シェン・ユーフェイ): 李小冉 (リー・シャオラン)
(科学者であり、VRゲーム「三体」への案内役) - 楊冬 (ヤン・ドン): 何杜娟 (ホー・ドゥジュエン)
(葉文潔の娘。理論物理学者で、物語の冒頭で謎の死を遂げる)
キャストの代表作品名
張魯一 (チャン・ルーイー / 汪淼役)
- 『容疑者Xの献身』(中国版) (石泓役)
- 『九州・天空城』 (機枢役)
- 『新世界』 (鉄林役)
于和偉 (ユー・ホーウェイ / 史強役)
- 『三国志 Three Kingdoms』 (劉備役)
- 『軍師連盟』 (曹操役)
- 『崖上のスパイ』 (周乙役)
陳瑾 (チェン・ジン / 葉文潔・老年期役)
- 『王妃の紋章』 (蒋氏役)
- 『唐山大地震』 (董桂蘭役)
- 『知否知否応是緑肥紅痩』 (平寧郡主役)
王子文 (ワン・ズーウェン / 葉文潔・青年期役)
- 『陰陽師: とこしえの夢』 (長平公主役)
- 『唐山大地震』 (シャオハー役)
- 『欢乐颂 (Ode to Joy)』 (曲筱绡役)
林永健 (リン・ヨンジエン / 常偉思役)
- 『王貴とアンナ』 (王貴役)
- 『喜耕田的故事』 (喜耕田役)
- 『黎明之前』 (譚忠恕役)
まとめ: 社会的評価と作品の影響
テンセント版『三体』は、配信開始直後から中国国内で爆発的な話題となり、原作ファンからは「原作から抜け出してきたような完璧な実写化」と最大級の賛辞を受けました。
難解な科学的描写を一切省略せず、むしろ真正面から映像化したその姿勢は、SF作品の映像化における一つの到達点として高く評価されています。
特に、ベテラン俳優の于和偉が演じる史強(シー・チアン)刑事は、「原作のイメージそのもの」として絶大な人気を獲得しました。
後に制作されたNetflix版『三体』が、物語をグローバル向けに再解釈したことで賛否両論を呼んだのに対し、テンセント版は「原作への忠実さ」という点で揺るぎない評価を確立しています。
この作品の成功は、中国の映像制作技術の向上と、複雑な物語を深く掘り下げる長編ドラマの可能性を世界に示しました。
原作未読の視聴者にとっては難解な部分も多いものの、劉慈欣が描いた壮大な宇宙観と思索の深さを体験するには、これ以上ない映像作品となっています。
作品関連商品
- 原作小説:
- 『三体』(早川書房 / 著: 劉慈欣, 翻訳: 大森望, 光吉さくら, ワン・チャイ)
- 『三体II 暗黒森林』
- 『三体III 死神永生』
- 映像ソフト:
- 「三体」Blu-ray BOX / DVD-BOX (日本版が発売中)
- その他:
- ドラマ『三体』公式ビジュアルブック (中国版)